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第2話 転生②
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しばらく僕は声をあげて泣いた。泣き方すらも忘れていた。
涙の止め方も分からず、止まるまでには随分と時間を要した。
「――ッ すいません。泣いてしまって」
神様は、泣いている僕を笑って見守っていてくれた。
「構わないですよ。それが本来の人の反応ですから。むしろ、今までの守さんの方が異常だったんですから。ここで泣いて気が晴れるのならいくらでも泣いていいのです」
神様の言葉に救われたような気がした。泣いていて有耶無耶になったが、僕がこの場所に呼ばれた理由をまだ聞いていない。
「ありがとうございます。それで……僕はこれからどうなるのでしょうか?」
「あぁ、そうでしたね。守さん、貴方さえよければ、異世界へ転生してみませんか?」
異世界? 確か、高校の友達が「異世界ヒャッホー!!!」とか言ってたあれのことかな。最近ブームが来ているみたいで見てる人を高校でも多く見かけた。僕は買うお金なんてなかったけど。
「そう、それです」
「具体的にはどんな世界なんですか?」
「そうですね。一言で言うと、中世ヨーロッパの文明レベルで、剣と魔法の世界です。地球みたいに民主主義とかがあるわけではなく、主に世襲制の国々で成り立っています。人々は剣や魔法を扱い、人や魔物相手に戦います。更に、亜人と言われるような人種も存在しています。」
友達が言っていた世界と同じような世界、ということか。こうなるならもっと話を聞いておけばよかった...... 仕方がない、神様に聞くことにしよう。
「魔法というのは誰でも使えるようなものなのですか?」
「いえ、限られた才能を持った人にのみしか使えないようになっています。魔道具という魔物の心臓でもある魔石を用いた道具もあります。魔法が使えるかどうかはランダムです。ですが、魔法を使えるかどうかを知る手段があまりないため、平民の方で、魔法が使えるのに、知らないまま一生を終えることもあります。」
「そうなのですか。では、魔物というのはどのような存在なのでしょうか?」
「怪物のような認識で構いません。詳しくは、転生した後に調べてみると良いでしょう。簡単に情報は手に入るでしょうから」
「分かりました。では、亜人というのはどのような人のことを言うのでしょうか?」
「亜人というのは、ケモ耳が生えている、尻尾がある人など種族によって様々です。狼族に猫族などが存在しています。国や人によっては、亜人を人より下等な生き物と認識している国もありますが、人間と変わりません。人族より、足が速かったり、力が強かったりするだけです。身体能力では亜人の方が上です。人族は数と備わった知能を活用することによって国家を形成しました。貴方が転生する予定の国では、亜人蔑視はないと思いますので大丈夫だと思います」
ある程度の事は理解できたな。細かい部分は行ってみないことには分からないだろう。肌で感じなければ分からないと言う奴だ。地球とは違い、魔法があったり、亜人が存在しているのは興味深いことだと感じた。
しかし、中世ヨーロッパレベルで皆が戦う力を備えているということは、戦争が起こる可能性が高いということでもあり、生きていけるかが心配でもある。
「分かりました。ちなみにどのように転生するのかは教えていただけるのでしょうか?」
「生まれてすぐに転生すると、守さんの精神状態がおかしくなります。ですので、5歳からの転生となります。それまで生きた記憶は転生した時に調和がとれるように致しますので、貴方は前世と今世、両方の記憶を保持して転生することになります」
知識は力なりというし、別世界の記憶であったとしても、5歳で教育を受けた高校生レベルの知能を備えられているのはアドバンテージになるだろう。転生先がどうなるかは分からないが、無いよりかはましだ。
「そうなんですね。それならまだ安心ですね」
「前世の記憶を消去して転生することも可能ですが…… どうなさいますか?」
残す一択だろう。
「前世の記憶はしっかりと残しておきます。知識は何かと役に立つでしょうし、あんな人生でも僕が生きた証なので……」
「そうですか…… では、転生の手続きに入ります。貴方が転生する予定の家は、裕福な家庭かつ優しい家庭に設定してあります。また、貴方が生きやすいようなスキルと呼ばれる力も用意してあります。転生した後はそのスキルを説明するために一度貴方の夢に現れますので、ご了承ください。では良いですか?」
スキルというのが何かは多少友達から聞いたことがある。あるに越したことはない。
不安もあるが、楽しみもある。神様には感謝だな。
「はい。何から何までありがとうございました。神様のことは忘れません。ありがとうございました。」
「それでは転生させます。今度こそ貴方の人生に幸あれ――」
眩しい光が放たれ、僕は意識を失った。
「貴方にはひとつ嘘をついてしまった…… 貴方のお母さんは本当にダメな人間なのよ…… それこそ貴方が立派に育ったのが奇跡なほどにね......」
神様は1つ嘘をついてしまった。しかし、神様が嘘をついたのには理由があった……
涙の止め方も分からず、止まるまでには随分と時間を要した。
「――ッ すいません。泣いてしまって」
神様は、泣いている僕を笑って見守っていてくれた。
「構わないですよ。それが本来の人の反応ですから。むしろ、今までの守さんの方が異常だったんですから。ここで泣いて気が晴れるのならいくらでも泣いていいのです」
神様の言葉に救われたような気がした。泣いていて有耶無耶になったが、僕がこの場所に呼ばれた理由をまだ聞いていない。
「ありがとうございます。それで……僕はこれからどうなるのでしょうか?」
「あぁ、そうでしたね。守さん、貴方さえよければ、異世界へ転生してみませんか?」
異世界? 確か、高校の友達が「異世界ヒャッホー!!!」とか言ってたあれのことかな。最近ブームが来ているみたいで見てる人を高校でも多く見かけた。僕は買うお金なんてなかったけど。
「そう、それです」
「具体的にはどんな世界なんですか?」
「そうですね。一言で言うと、中世ヨーロッパの文明レベルで、剣と魔法の世界です。地球みたいに民主主義とかがあるわけではなく、主に世襲制の国々で成り立っています。人々は剣や魔法を扱い、人や魔物相手に戦います。更に、亜人と言われるような人種も存在しています。」
友達が言っていた世界と同じような世界、ということか。こうなるならもっと話を聞いておけばよかった...... 仕方がない、神様に聞くことにしよう。
「魔法というのは誰でも使えるようなものなのですか?」
「いえ、限られた才能を持った人にのみしか使えないようになっています。魔道具という魔物の心臓でもある魔石を用いた道具もあります。魔法が使えるかどうかはランダムです。ですが、魔法を使えるかどうかを知る手段があまりないため、平民の方で、魔法が使えるのに、知らないまま一生を終えることもあります。」
「そうなのですか。では、魔物というのはどのような存在なのでしょうか?」
「怪物のような認識で構いません。詳しくは、転生した後に調べてみると良いでしょう。簡単に情報は手に入るでしょうから」
「分かりました。では、亜人というのはどのような人のことを言うのでしょうか?」
「亜人というのは、ケモ耳が生えている、尻尾がある人など種族によって様々です。狼族に猫族などが存在しています。国や人によっては、亜人を人より下等な生き物と認識している国もありますが、人間と変わりません。人族より、足が速かったり、力が強かったりするだけです。身体能力では亜人の方が上です。人族は数と備わった知能を活用することによって国家を形成しました。貴方が転生する予定の国では、亜人蔑視はないと思いますので大丈夫だと思います」
ある程度の事は理解できたな。細かい部分は行ってみないことには分からないだろう。肌で感じなければ分からないと言う奴だ。地球とは違い、魔法があったり、亜人が存在しているのは興味深いことだと感じた。
しかし、中世ヨーロッパレベルで皆が戦う力を備えているということは、戦争が起こる可能性が高いということでもあり、生きていけるかが心配でもある。
「分かりました。ちなみにどのように転生するのかは教えていただけるのでしょうか?」
「生まれてすぐに転生すると、守さんの精神状態がおかしくなります。ですので、5歳からの転生となります。それまで生きた記憶は転生した時に調和がとれるように致しますので、貴方は前世と今世、両方の記憶を保持して転生することになります」
知識は力なりというし、別世界の記憶であったとしても、5歳で教育を受けた高校生レベルの知能を備えられているのはアドバンテージになるだろう。転生先がどうなるかは分からないが、無いよりかはましだ。
「そうなんですね。それならまだ安心ですね」
「前世の記憶を消去して転生することも可能ですが…… どうなさいますか?」
残す一択だろう。
「前世の記憶はしっかりと残しておきます。知識は何かと役に立つでしょうし、あんな人生でも僕が生きた証なので……」
「そうですか…… では、転生の手続きに入ります。貴方が転生する予定の家は、裕福な家庭かつ優しい家庭に設定してあります。また、貴方が生きやすいようなスキルと呼ばれる力も用意してあります。転生した後はそのスキルを説明するために一度貴方の夢に現れますので、ご了承ください。では良いですか?」
スキルというのが何かは多少友達から聞いたことがある。あるに越したことはない。
不安もあるが、楽しみもある。神様には感謝だな。
「はい。何から何までありがとうございました。神様のことは忘れません。ありがとうございました。」
「それでは転生させます。今度こそ貴方の人生に幸あれ――」
眩しい光が放たれ、僕は意識を失った。
「貴方にはひとつ嘘をついてしまった…… 貴方のお母さんは本当にダメな人間なのよ…… それこそ貴方が立派に育ったのが奇跡なほどにね......」
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