10 / 11
灼熱のマッチ売り
炎の子
しおりを挟む雪が降り頻る街の中
アリス達は白い息を吐きながら走っていた
マッチ売りの世界に来てから、アリス達はマッチ売りの少女を探し回り情報を集めていた
「さっきの話本当なんだろうね、ファリルス」
先人を切って皆の前を飛び跳ねるインシェルが大きく声を張り言い放つ
「おそらく間違いないよ。つい先日から街の中でボヤ騒ぎが相次いでるらしい‼︎」
双子とファリルスが街の住民から仕入れた情報によると、先日から街で小さなボヤ騒ぎが相次いでいるらしい
幸いまだ大きな火事には至っていないらしいが、このまま物語の歪みが進めば最悪の事態も免れないだろう。
「だとしても…それが、マッチ売りの少女の…仕業とは、まだ決まってないんじゃ…」
皆の最後尾からノロノロと重い足取りで追いかけるアリスが息絶え絶えに前に向けて声を放つ
「まあ、確かにまだそうと決まった訳ではないけど、その側で女の子がマッチを売り歩いていたのを見たって人もいたのさ」
双子の頭の上からこちらを振り返り答えるファリルスの姿は、アリスにはもう霞んでほぼ見えていなかった
「アリス足遅いね~頑張って~‼︎」
「頑張って~‼︎」
無邪気な双子の声が遠くに聞こえる
「はぁ…はっ……」
石のように重くなった足は全く動かなくなり、一歩も動けなくなってしまった
膝に手を当て息を整える
「まずい…皆と離れちゃった」
顔を上げてももう皆の姿はなかった
「追いかけないと」
見ず知らずの場所で1人になるのはまずい
重い足をゆっくりと動かし歩き出す
雪に埋もれる足元に気を配りながら人の波を避けて行く
雪は次第に吹雪いてきている
正面から吹き付ける雪に次第に目も開けられなくなってくる頃
視界の端が僅かに明るんだ気がした
細めた目で明るい光の感じる方角へと向ける
そしてそこに広がる景色に、細めていた視界は一瞬で広がった
雪で白んだ景色に轟轟と燃え盛る炎が辺り一面を明るく照らしている
細い路地の先から見える燃え盛る建物の前に、少女が1人佇んでいる
アリスの足はまるでそこに固く縫い付けられたかのように動けなくなっていた
そして路地の先に佇む少女はゆっくりとアリスの方へと振り返る
まだ幼なげな顔が確とアリスの瞳を見据える
どこか悲しげに見える瞳は先ほどまでその瞳に映っていた炎同様に燃えるように紅い
「アリス‼︎」
自分の名前を呼ぶ声にハッと我にかえる
血相を変えてこちらにインシェル達が駆けてくる
「間に合わなかったか…」
合流した皆で燃え盛る炎に視線を送る
未だ轟轟と燃え盛る炎は先ほどよりも勢いを増している
「みんな、さっき女の子が…多分あの子がマッチ売りだと思う」
アリスは先ほどの少女の事を皆に話す
しかし建物の前にはもう少女はいない
「もう時間がないとにかく手分けして探そう、見つけた者は直ちにマッチ売りの動きを止めるんだ…これ以上物語をメチャクチャにはさせない」
インシェルが強く言い放ち
皆がそれに頷く
雪は吹雪へと変わっていた
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説

愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。

Red Assassin(完結)
まさきち
ファンタジー
自分の目的の為、アサシンとなった主人公。
活動を進めていく中で、少しずつ真実に近付いていく。
村に伝わる秘密の力を使い時を遡り、最後に辿り着く答えとは...
ごく普通の剣と魔法の物語。
平日:毎日18:30公開。
日曜日:10:30、18:30の1日2話公開。
※12/27の日曜日のみ18:30の1話だけ公開です。
年末年始
12/30~1/3:10:30、18:30の1日2話公開。
※2/11 18:30完結しました。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

「おまえを愛することはない!」と言ってやったのに、なぜ無視するんだ!
七辻ゆゆ
ファンタジー
俺を見ない、俺の言葉を聞かない、そして触れられない。すり抜ける……なぜだ?
俺はいったい、どうなっているんだ。
真実の愛を取り戻したいだけなのに。
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

ご安心を、2度とその手を求める事はありません
ポチ
恋愛
大好きな婚約者様。 ‘’愛してる‘’ その言葉私の宝物だった。例え貴方の気持ちが私から離れたとしても。お飾りの妻になるかもしれないとしても・・・
それでも、私は貴方を想っていたい。 独り過ごす刻もそれだけで幸せを感じられた。たった一つの希望
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる