モノの卦慙愧

「ここじゃないどこかに連れて行って欲しい」

  生まれながらに異能を持つひなは、齢9歳にして孤独な人生を強いられた。
 学校に行っても、形ばかりの養育者である祖父母も、ひなの事を気味悪がるばかり。
 そんな生活から逃げ出したかったひなは、家の近くにある神社で何度もそう願った。

 ある晩、その神社に一匹の神獣――麒麟が姿を現す。

 ひなは彼に願い乞い、現世から彼の住む幽世へと連れて行ってもらう。

「……ひな。君に新しい世界をあげよう」

 そんな彼女に何かを感じ取った麒麟は、ひなの願いを聞き入れる。

 麒麟の住む世界――幽世は、現世で亡くなった人間たちの魂の「最終審判」の場。現世での業の数や重さによって形の違うあやかしとして、現世で積み重ねた業の数を幽世で少しでも減らし、極楽の道へ進める可能性をもう一度自ら作るための世界。

 現世の人のように活気にあふれるその世界で、ひなは麒麟と共に生きる事を選ぶ。

 ひなを取り巻くあやかし達と、自らの力によって翻弄される日々を送りながら、やがて彼女は自らのルーツを知ることになる。
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