54 / 67
陸
観光.弐
しおりを挟む
私たちはそれからお城の天守閣に登り、高知市内を一望する。その後はまた帯屋町のアーケード街まで戻って来ると、少し涼しさが戻って来る。
直射日光の下には長時間はさすがにいられないわ……。
「幸之助のところへ行くんだったらさ、ここでカツオのタタキでも買って行けば? 柵で売ってるし、安いと思うよ。大きいし」
虎太郎が指さしたのは「ひろめ市場」と呼ばれる場所だった。
入り口はビニールカーテンで閉じられていて、中を覗き込むと色んな飲食店やお土産屋さんがコンパクトに沢山ひしめく場所。それにエアコンが効いてて涼しいから思わず中に入った。
「屋内施設なのに凄い数のお店ね。何店舗ぐらい入ってるのかしら……」
中はとても賑わっていて、イートインコーナーは座る場所を確保するのも大変なくらいだった。一種のアミューズメントパークみたいな感じ。
皆地元の人なんだろうか? まだお昼前だと言うのにもうお酒を飲んでる人が沢山いる。
そう言えば、高知の人達って酒豪が多いって言うわよね。土佐の人間は酒に強いのが当たり前って。そりゃこんな時間からお酒飲んでるんだもの、分からなくはない。
その時ふと、視界の端に映った店舗に気が付いてそちらを振り返った。そこにあった店舗の名前は「安兵衛」。まだ開店する前なのか、奥で店員さんが作業している姿が見える。
「安兵衛だ!」
私は思わずそう叫んでしまった。
安兵衛だよ、安兵衛! 高知の屋台でめちゃくちゃ有名なお店! 私、だいぶ前にここの餃子を東京では唯一目黒にしかない支店で食べた事がある。
小振りの餃子で、中身はぎっしり詰まっててジューシーでめちゃくちゃ美味しい揚げ餃子。幾つでも食べられるくらい美味しい。行く機会がなかなかなくてまだ一回しか食べた事ないけど、ここの味は忘れられずにいる。
そもそも安兵衛って深夜の屋台でしかやってなかったって聞いてたけど、ここにも入ってるんだ!
私が目を輝かせていると虎太郎は呆れたようにこちらを見ていて、やこはクスクスと笑っていた。
「加奈子、このままじゃマジで太ると思う。僕心配だよ……」
「別にいいじゃありませんか。人は見かけでは判断出来ないものですわ」
「そりゃそうだけど……」
開店と同時に注文する私の背後で、虎太郎は「そうだけど、そうじゃないんだよ」と一人肩を落としていたのに、私は全然気が付かなかった。
あれよあれよと市内観光をしている内にチェックインの時間が迫り、私たちは一度車に戻ると、ホテルに併設している駐車場へ移動して車を止めた。
部屋は本当は二部屋抑えたかったんだけど、いくらよさこい祭りが終わった後だとは言え、他の観光客も多いからツインで一部屋しか取れなかったんだ。まぁ、一泊しかしないし構わないんだけど。
「虎太郎。私お風呂に入って来るから、ちょっと席を外してくれる?」
「うん、分かった」
市内をうろうろしたことで汗びっしょりになり、夜桂浜に出掛ける前に一度汗を流しておきたかった。寮にいる時もいつもこんな感じで、虎太郎には入浴の時席を外してもらっているからここは平常運転。
軽く汗を流してから、傷みそうなもので冷蔵庫に入れられそうなものだけを押し込むと、私は一度ベッドにひっくり返った。
「はぁ~……」
長い溜息を吐くと、どっと疲れが出て眠気が襲ってくる。
10時間ぶりの全身を包み込むようなふかふかベッドが気持ちいい……。
「お疲れでしょう? まだ時間はありますし、少し眠っておく方がいいですわ」
「……うん。そうしようかな」
やこのお言葉に甘えて、私は襲ってくる眠気に抗うことなく目を閉じた。
所々で休憩して仮眠を取りながら来たとは言え、長い時間運転してきたんだもの。前みたいに私一人だったらどうってことなかったけど、今回はあやかしとは言え二人を乗せているとなると、責任を感じていつもの倍は疲れてしまった。
だから寝付くのも早くて、目を閉じたらあっと言う間に夢の中だった。
◆◇◆◇◆
「……子殿」
「……」
「加奈子殿」
「うぅん……」
どれくらい経ったのか分からないけれど、やこの声と体を軽く揺らされる感覚で目が覚めた。
寝ぼけた顔で顔を上げると、やこがこちらを覗き込んでいる。
「……やこ」
「もうすぐ19時ですわ。外はだいぶ日が傾きましたよ」
「うん、起きる」
夢も見ないくらいぐっすり眠っていたなんて凄く久し振りかも。
ベッドから起き上がり、何となく窓の外に目を向けるともう少しすると暗くなるぐらいには陽が落ちていた。
「私どれくらい寝てた?」
「3時間くらいです。途中で起こそうと思ったんですけど、とても気持ちよさそうに眠っていましたから……」
「そっか。ちょっと寝すぎちゃったかな……」
こんなに寝たら夜寝れなくなるかも……。
そんな事を考えながら、ふと部屋に虎太郎がいないことに気が付いた。
「あれ? 虎太郎は?」
「虎太郎殿でしたらそちらに……」
やこに示された方を見ると、一人掛けのソファの上に座ったまま天を仰いで眠っている虎太郎がいた。どこか安心しきっているかのように見えるその寝顔は、きっと故郷に近い場所に帰ってきたらなのかもしれないな。
本当はそっとしておいてあげたかったけど、出掛ける予定も立ってたし夜ご飯もあるし。
「虎太郎、起きて。出掛けるよ?」
「ん~……分かった」
そう声をかけると、虎太郎はあくびをしながら大きく伸びをして立ち上がった。
私たちはホテルを出ると、やっぱり夏らしいむっとした蒸し暑い空気が体中にまとわりついた。さっきまで快適な室内にいた分、もうそれだけで汗をかけるくらい。
陽が伸びてるから、地熱が下がるのも遅いもんね。蒸し返しが酷いわ。
車に乗ってホテルを出発すると、一路桂浜へ。
市内から長浜方面へと車を走らせて、約一時間くらい。海岸線に出て窓を開けると温い風とさざ波の音と潮のにおいが流れ込んでくる。あと、今日は偶然にも満月で仄白い光が海面を輝かせているのが見えた。
「凄い綺麗ね!」
「ほんとですね。ここからの景色も好きです」
車を運転しながら、ここから見ても充分なくらい綺麗な場所。濃い潮の香りが包み込んできて、さざ波も心地よくて。
もうここでもいいかなって一瞬思ったけど、でも行くからにはやっぱり近くまで行きたいよね。
海沿いの道を走ってほどなく到着した桂浜の駐車場に車を停めると、思ってたより車が止まっていることに気が付いた。
「思ったより車が停まってるのね」
「そりゃそうだと思うよ。夏休みの時期だし」
夜だから懐中電灯持ってきたけど、思ったよりあちこちで明かりが点いてて明るいから使わないかな? 月も出てるし……。
そう思ったけど、念のため持ち歩くカバンの中に入れて外に出る。駐車場傍のお土産屋さんの間を抜けて、看板に沿って登り階段を登って行くと、目の前に大きな坂本龍馬の銅像が見えてきた。
「おっきい~! 高知駅前にある銅像よりはるかに大きい!」
夜に来る人も多いからか銅像の周りも明るくライトアップしてくれていて、その姿の全貌を拝むことが出来た。
銅像の近くには二組のカップルがいて、二人でぴったりくっつき合いながら写真を撮っている姿が見て取れる。
……まぁ、そりゃ、カップルで来る人もいるわよね。私も写真を撮りたいところだけど……。
と、私はやこと虎太郎をちらりと見た。すると二人は不思議そうな顔をして私を見ているけど、たぶん、二人とも写真には映らないんだろうな。
やこは他の人の目にも見えるようになってるから、もしかしたら写るかもしれないけど……虎太郎はたぶん写らないよね。
そう思いながら私は何気なくスマホのカメラを立ち上げて二人をレンズ越しに覗いてみた。
「……」
やっぱりね。虎太郎は予想がついていたけど、もしかしたらやこは映るかもって思ったら映ってないわ。
「どうしたんですか?」
「ううん。何でもない」
「写真、撮らなくていいのか?」
「うん、私は銅像を見に来たんじゃなくて、海を見に来たんだもの」
ほんとは皆で写真撮りたかったけど、しょうがないよね。一人で写っても何か寂しいし。
竜馬の銅像から下り階段を降りていくと、ようやく目の前に待ちに待った桂浜が目の前に広がる。
月明かりに海面が映し出されてキラキラと輝いているのが良く見える。静かに寄せては返すさざ波がこの夏の暑さを吹き飛ばすくらいの心地よさを感じさせた。
それから、やっぱり砂浜に寄り添って座っているカップルがちらほら……。
暗いのと人が少ないことを良いことに、そのいちゃいちゃっぷりはもう、お邪魔なんじゃないかと思うくらい。
「前から思ってたけどさ~、最近の若人達ってああいうの平気でするよね。人目を全然はばからないでさ」
「……最近の若人達って、その言い方凄くおじいちゃんっぽいわよ」
「おじいちゃんじゃないよ! って言いたいところだけど、僕たちあやかしだもんね。人間よりもずっと長生きしているし、さっきの坂本龍馬が産まれる前から僕らはいるわけだから、おじいちゃんって言われるだけまだ可愛い方かも」
さらっとそう言う虎太郎の言葉に、私は改めて彼らと自分の間にある壁のような物を感じてしまった。
分かってるんだけどな……。何だか、凄く遠く感じる。
直射日光の下には長時間はさすがにいられないわ……。
「幸之助のところへ行くんだったらさ、ここでカツオのタタキでも買って行けば? 柵で売ってるし、安いと思うよ。大きいし」
虎太郎が指さしたのは「ひろめ市場」と呼ばれる場所だった。
入り口はビニールカーテンで閉じられていて、中を覗き込むと色んな飲食店やお土産屋さんがコンパクトに沢山ひしめく場所。それにエアコンが効いてて涼しいから思わず中に入った。
「屋内施設なのに凄い数のお店ね。何店舗ぐらい入ってるのかしら……」
中はとても賑わっていて、イートインコーナーは座る場所を確保するのも大変なくらいだった。一種のアミューズメントパークみたいな感じ。
皆地元の人なんだろうか? まだお昼前だと言うのにもうお酒を飲んでる人が沢山いる。
そう言えば、高知の人達って酒豪が多いって言うわよね。土佐の人間は酒に強いのが当たり前って。そりゃこんな時間からお酒飲んでるんだもの、分からなくはない。
その時ふと、視界の端に映った店舗に気が付いてそちらを振り返った。そこにあった店舗の名前は「安兵衛」。まだ開店する前なのか、奥で店員さんが作業している姿が見える。
「安兵衛だ!」
私は思わずそう叫んでしまった。
安兵衛だよ、安兵衛! 高知の屋台でめちゃくちゃ有名なお店! 私、だいぶ前にここの餃子を東京では唯一目黒にしかない支店で食べた事がある。
小振りの餃子で、中身はぎっしり詰まっててジューシーでめちゃくちゃ美味しい揚げ餃子。幾つでも食べられるくらい美味しい。行く機会がなかなかなくてまだ一回しか食べた事ないけど、ここの味は忘れられずにいる。
そもそも安兵衛って深夜の屋台でしかやってなかったって聞いてたけど、ここにも入ってるんだ!
私が目を輝かせていると虎太郎は呆れたようにこちらを見ていて、やこはクスクスと笑っていた。
「加奈子、このままじゃマジで太ると思う。僕心配だよ……」
「別にいいじゃありませんか。人は見かけでは判断出来ないものですわ」
「そりゃそうだけど……」
開店と同時に注文する私の背後で、虎太郎は「そうだけど、そうじゃないんだよ」と一人肩を落としていたのに、私は全然気が付かなかった。
あれよあれよと市内観光をしている内にチェックインの時間が迫り、私たちは一度車に戻ると、ホテルに併設している駐車場へ移動して車を止めた。
部屋は本当は二部屋抑えたかったんだけど、いくらよさこい祭りが終わった後だとは言え、他の観光客も多いからツインで一部屋しか取れなかったんだ。まぁ、一泊しかしないし構わないんだけど。
「虎太郎。私お風呂に入って来るから、ちょっと席を外してくれる?」
「うん、分かった」
市内をうろうろしたことで汗びっしょりになり、夜桂浜に出掛ける前に一度汗を流しておきたかった。寮にいる時もいつもこんな感じで、虎太郎には入浴の時席を外してもらっているからここは平常運転。
軽く汗を流してから、傷みそうなもので冷蔵庫に入れられそうなものだけを押し込むと、私は一度ベッドにひっくり返った。
「はぁ~……」
長い溜息を吐くと、どっと疲れが出て眠気が襲ってくる。
10時間ぶりの全身を包み込むようなふかふかベッドが気持ちいい……。
「お疲れでしょう? まだ時間はありますし、少し眠っておく方がいいですわ」
「……うん。そうしようかな」
やこのお言葉に甘えて、私は襲ってくる眠気に抗うことなく目を閉じた。
所々で休憩して仮眠を取りながら来たとは言え、長い時間運転してきたんだもの。前みたいに私一人だったらどうってことなかったけど、今回はあやかしとは言え二人を乗せているとなると、責任を感じていつもの倍は疲れてしまった。
だから寝付くのも早くて、目を閉じたらあっと言う間に夢の中だった。
◆◇◆◇◆
「……子殿」
「……」
「加奈子殿」
「うぅん……」
どれくらい経ったのか分からないけれど、やこの声と体を軽く揺らされる感覚で目が覚めた。
寝ぼけた顔で顔を上げると、やこがこちらを覗き込んでいる。
「……やこ」
「もうすぐ19時ですわ。外はだいぶ日が傾きましたよ」
「うん、起きる」
夢も見ないくらいぐっすり眠っていたなんて凄く久し振りかも。
ベッドから起き上がり、何となく窓の外に目を向けるともう少しすると暗くなるぐらいには陽が落ちていた。
「私どれくらい寝てた?」
「3時間くらいです。途中で起こそうと思ったんですけど、とても気持ちよさそうに眠っていましたから……」
「そっか。ちょっと寝すぎちゃったかな……」
こんなに寝たら夜寝れなくなるかも……。
そんな事を考えながら、ふと部屋に虎太郎がいないことに気が付いた。
「あれ? 虎太郎は?」
「虎太郎殿でしたらそちらに……」
やこに示された方を見ると、一人掛けのソファの上に座ったまま天を仰いで眠っている虎太郎がいた。どこか安心しきっているかのように見えるその寝顔は、きっと故郷に近い場所に帰ってきたらなのかもしれないな。
本当はそっとしておいてあげたかったけど、出掛ける予定も立ってたし夜ご飯もあるし。
「虎太郎、起きて。出掛けるよ?」
「ん~……分かった」
そう声をかけると、虎太郎はあくびをしながら大きく伸びをして立ち上がった。
私たちはホテルを出ると、やっぱり夏らしいむっとした蒸し暑い空気が体中にまとわりついた。さっきまで快適な室内にいた分、もうそれだけで汗をかけるくらい。
陽が伸びてるから、地熱が下がるのも遅いもんね。蒸し返しが酷いわ。
車に乗ってホテルを出発すると、一路桂浜へ。
市内から長浜方面へと車を走らせて、約一時間くらい。海岸線に出て窓を開けると温い風とさざ波の音と潮のにおいが流れ込んでくる。あと、今日は偶然にも満月で仄白い光が海面を輝かせているのが見えた。
「凄い綺麗ね!」
「ほんとですね。ここからの景色も好きです」
車を運転しながら、ここから見ても充分なくらい綺麗な場所。濃い潮の香りが包み込んできて、さざ波も心地よくて。
もうここでもいいかなって一瞬思ったけど、でも行くからにはやっぱり近くまで行きたいよね。
海沿いの道を走ってほどなく到着した桂浜の駐車場に車を停めると、思ってたより車が止まっていることに気が付いた。
「思ったより車が停まってるのね」
「そりゃそうだと思うよ。夏休みの時期だし」
夜だから懐中電灯持ってきたけど、思ったよりあちこちで明かりが点いてて明るいから使わないかな? 月も出てるし……。
そう思ったけど、念のため持ち歩くカバンの中に入れて外に出る。駐車場傍のお土産屋さんの間を抜けて、看板に沿って登り階段を登って行くと、目の前に大きな坂本龍馬の銅像が見えてきた。
「おっきい~! 高知駅前にある銅像よりはるかに大きい!」
夜に来る人も多いからか銅像の周りも明るくライトアップしてくれていて、その姿の全貌を拝むことが出来た。
銅像の近くには二組のカップルがいて、二人でぴったりくっつき合いながら写真を撮っている姿が見て取れる。
……まぁ、そりゃ、カップルで来る人もいるわよね。私も写真を撮りたいところだけど……。
と、私はやこと虎太郎をちらりと見た。すると二人は不思議そうな顔をして私を見ているけど、たぶん、二人とも写真には映らないんだろうな。
やこは他の人の目にも見えるようになってるから、もしかしたら写るかもしれないけど……虎太郎はたぶん写らないよね。
そう思いながら私は何気なくスマホのカメラを立ち上げて二人をレンズ越しに覗いてみた。
「……」
やっぱりね。虎太郎は予想がついていたけど、もしかしたらやこは映るかもって思ったら映ってないわ。
「どうしたんですか?」
「ううん。何でもない」
「写真、撮らなくていいのか?」
「うん、私は銅像を見に来たんじゃなくて、海を見に来たんだもの」
ほんとは皆で写真撮りたかったけど、しょうがないよね。一人で写っても何か寂しいし。
竜馬の銅像から下り階段を降りていくと、ようやく目の前に待ちに待った桂浜が目の前に広がる。
月明かりに海面が映し出されてキラキラと輝いているのが良く見える。静かに寄せては返すさざ波がこの夏の暑さを吹き飛ばすくらいの心地よさを感じさせた。
それから、やっぱり砂浜に寄り添って座っているカップルがちらほら……。
暗いのと人が少ないことを良いことに、そのいちゃいちゃっぷりはもう、お邪魔なんじゃないかと思うくらい。
「前から思ってたけどさ~、最近の若人達ってああいうの平気でするよね。人目を全然はばからないでさ」
「……最近の若人達って、その言い方凄くおじいちゃんっぽいわよ」
「おじいちゃんじゃないよ! って言いたいところだけど、僕たちあやかしだもんね。人間よりもずっと長生きしているし、さっきの坂本龍馬が産まれる前から僕らはいるわけだから、おじいちゃんって言われるだけまだ可愛い方かも」
さらっとそう言う虎太郎の言葉に、私は改めて彼らと自分の間にある壁のような物を感じてしまった。
分かってるんだけどな……。何だか、凄く遠く感じる。
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

あやかし嫁取り婚~龍神の契約妻になりました~
椿蛍
キャラ文芸
出会って間もない相手と結婚した――人ではないと知りながら。
あやかしたちは、それぞれの一族の血を残すため、人により近づくため。
特異な力を持った人間の娘を必要としていた。
彼らは、私が持つ『文様を盗み、身に宿す』能力に目をつけた。
『これは、あやかしの嫁取り戦』
身を守るため、私は形だけの結婚を選ぶ――
※二章までで、いったん完結します。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる