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参
優しい時間
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結局、子供たちはその中庭で遊ばせることになり、私たちは二人が良く見える縁側で話をすることになった。
中庭で楽し気に駆け回るてんこ達は、今とんぼを追いかけて二人ではしゃいでいた。
「お茶を用意します」
「あ、幸之助、だったら私が……」
幸之助が席を立とうとするから、慌てて私がやろうとするとなぜか妖狐に止められた。
「今は彼のやりたいようにさせてあげて下さい」
そう言ってやんわりと笑うもんだから、それ以上私がやるとは言えずそのまま縁側にいることになった。
「……じゃあ、幸之助。お願い」
「はい」
幸之助は嬉しそうにニコリと笑い、炊事場の方へと歩いて行った。
彼を見送り、私はそのままてんこ達に目線を向ける。
暑い中、汗をびっしょりかきながらも全力で遊べるてんこ達を見つめながら、良くここまではしゃげるなぁと思ってしまう。あんなに汗かいたら水分補給しないと倒れちゃうわ。
「どうですか? この場所は」
隣に座る妖狐が笑みを浮かべたまま訊ねてきた。
ついこの間も鞍馬とこんな話をしたなと思いながら、私も笑みを浮かべて頷く。
「凄く素敵な場所です。空気も川もとても綺麗だし、静かで落ち着いていて……本当に、とても癒されます。それに幸之助や鞍馬達に出会えた、私にとって唯一と言える場所になりました」
「それは良かった」
「でも私、あと四日で帰らなくちゃいけなくて……」
帰らなければいけない。そう思うとまた寂しい気持ちが膨らんでくる。
妖狐はそんな私の様子を見て、不思議そうに首を傾げた。
「加奈子殿はこの辺りの産まれではないのですか?」
「……はい。私は東京で産まれ育ちました」
そうなんですか……と、驚いた様子で妖狐が頷いた。
「それは寂しくなりますね」
「はい……。向こうに帰ったら次に来れるのは来年の今ぐらいになると思います」
「こちらへは住む予定はないのですか?」
住む予定……。
そうか。そう言えばこのお屋敷に来た時も移住について少し考えたんだっけ。確かにここに住めば幸之助と離れることもないし、皆と一緒に暮らせるのよね。今じゃすっかり私の第二の故郷って言っても過言じゃなくなってる。鞍馬には釘を刺されたけど、家の周りに住んでる人たちも本当に優しくて、もう顔なじみになったって言ってもおかしくないくらい。
一人でここに暮らしてるって聞いたからか、会う人会う人がみんな何かしら持たせてくれるのだ。お菓子とか、山菜とか、自分の庭で採れたって言うお野菜や果物なんかも。
何もしなくても色々くれるから、今は私は私に出来る事でお返しをするようにしていた。畑のお手伝いだったり、荷物運びだったり。そう言えば時々お婆ちゃんの話し相手にもなったりしてる。
みんな自分たちの孫と同じくらいだからって言って、とても可愛がってくれるのが嬉しくてありがたかった。だから私も、良くしてくれる皆の為に何かをしたいってそう思う気持ちが強くなれた場所だ。
皆、優しくてあったかい……。だからここを離れるのが凄く寂しいんだ。だから真面目に移住を考えてもいいのかもしれない。
だけどそれはやっぱり今じゃない。大学を卒業して、やることをやって、それからだわ。
「そうですね……。いづれはそうしようかと考えてはいます。でも今は大学を卒業しないといけないですし、他にも自分がやるべきことをちゃんとやって片付けておかなきゃダメだと思ってます。やらなきゃいけないことを投げ出すような事をしたら、きっと幸之助の事も中途半端に投げ出してしまいそうな気がしたんで」
私はぎゅっと膝の上の手を握り締めてそう答えると、妖狐は柔らかい笑みを浮かべたまま小さく頷いた。
「あなたは真吉殿に似てとても真っすぐ真面目で、優しい方ですね」
「そ、そうでしょうか……?」
「えぇ。よくこの地へ来て下さいました。私もあなたを歓迎しますよ。子供たちもあなたの事を気に入っているようですし」
歓迎してもらえるなんて嬉しいな。でも、私あの子たちに気に入って貰えるようなこと、したかしら……?
そう思っててんこ達に目を向けると、走り回っていたてんこは石に蹴躓いて目の前で派手に転んでしまった。
「あ!」
私は思わず立ち上がるとてんこの傍に駆け寄り、抱き上げる。
「大丈夫?」
「だ、大丈夫だよこんぐらい!」
強がってそう言う割に目に涙が滲んでる。
頬っぺたと手の平に擦り傷が出来ているくらいだけど、子供からしたら大怪我と同じくらいの傷だよね。
「とにかく傷口を洗おう。そうしないと体にばい菌が入っちゃうからね」
「ばいきん? ばいきんって何だ?」
「え~っと……、体に悪い事をする目に見えない悪い奴」
って言ったら分かってくれるかしら。子供にもわかりやすい言葉を選んで言ったつもりなんだけど……。
その言葉に一番に反応したのは、なぜか傍にいたやんこだった。
「悪いことをする奴がいるの?! 目に見えないのに?」
「うん、そうよ。土には目に見えない小さくて汚い悪い奴がたくさんいて、それが傷口から入って体の中で暴れちゃうの」
「え~っ! こわ~い!」
「だから、そうならない為にまず傷を綺麗に洗って、ちゃんと手当しないとね。そうしたら大丈夫だから」
にっこり笑ってそう言うと、自分では自覚が無かったのかもしれないけれど、耳をぺたんと倒して小刻みに震えながら青ざめていたてんこが「は、早く洗うぞ!」と私の手を引っ張った。やんこもどこかキリっとした顔つきで「やんこも洗う!」と私の後について来る姿は、本当に……例えようが無いくらい可愛い……!
まるで私、お母さんになったような気分だわ。
幸之助と言いこの子たちも母性本能くすぐりまくるから困る。
私がてんことやんこを連れて庭から勝手口の方へ向かうと同時に、幸之助がお茶とお茶請けを用意して持ってくる姿が見えた。
◆◇◆◇◆
「あれ? 加奈子殿とてんこ達はどこへ……?」
温かいお茶の入った湯飲みと急須、そしてお茶菓子の他に漬物の乗った盆を持ったまま、幸之助はいなくなった加奈子たちを探した。
その様子を見ていた妖狐はくすっと笑い「まぁ座れ」と促すと、幸之助は盆を置いてその場に座った。
「今日は酒はいいのか?」
「昼間から酒は飲みませんよ」
「そうか」
幸之助から湯飲みを受け取りながら、妖狐はくすくすと笑った。当の幸之助は少しばかり面白くなさそうな表情を浮かべている。
「そなたの新しい主殿を見れて良かったよ。そもそもそのつもりで鞍馬を呼んだんだがな」
「?」
「あの女子《おなご》は真吉殿によく似た性格をしている。真面目にこつこつと、自分が成し遂げなければならないことに真正面から向き合う強さ。相手を想う優しさ。言う事無しだ」
「はい」
幸之助は頷き返しながら答えると、妖狐は心底安心したような表情を浮かべて幸之助の頭にぽんと手を置いた。
「そなたがもう一度主を立てると聞いた時ほど、私は安心したことは無い。そなたの事は我が子のように思っていたからな」
「よ、妖狐殿……」
「最初、鞍馬に泣きつかれた時はどうするかと思ったがな」
そう言ってクスクスと笑うとくしゃりと幸之助の頭を撫でて手を離す。
「加奈子殿は、四日後に家へ帰ることになるそうだな」
「はい。成すべきことをする為だと言っていました」
「では残りの四日間、もっと楽しい思い出作りをしなければならないな」
にこりと笑う妖狐に、幸之助は不思議そうな顔を浮かべる。その時、勝手口の方から傷を洗い終えたてんことやんこ、そして加奈子が歩いてくるのが見えた。
「父上ー! 父上! 凄いですよ! 加奈子にやってもらいました!」
「あ! ちょっ、走るとまた転んじゃうよ!」
止める加奈子をそっちのけに、興奮気味に手の平を見せながら転がるように駆けて来るてんこの手には可愛い狐の絆創膏が張られていた。
「これをしたら痛くなくなったんです! 凄いですよ! 加奈子は奇術師です!」
「父上、見て! やんこも! やんこもやってもらった!」
どこもケガをしていないはずのやんこまで、小さな指先に同じ絆創膏を巻いてもらい嬉々としている。二人とも興奮冷めやらぬ様子だった。
「そうか。良かったね。きちんとお礼は言ったのかい?」
「うん! 言った!」
二人とも嬉しそうに頬を紅潮させて大きく頷いたのを見て、妖狐はにっこりと笑い二人の頭を撫でた。
「ちょうどいい。やんこ、てんこ。お前たちはもう中に入って少し体を休めなさい」
「はい!」
元気よくそう答えた二人は、草履を脱いで屋敷の中に入っていく。その間に二人を追いかけて小走りに駆け寄って来た加奈子を見て、妖狐は提案を一つ持ち掛けた。
「加奈子殿。子供たちが休んでいる間、少し昔話をしましょう」
「昔話?」
「子供たちの面倒を見てもらった礼もありますが、あなたがここを離れる前にお話をしておこうと思うのです。私たちの事を」
妖狐はそう言うとにっこり微笑んだ。
中庭で楽し気に駆け回るてんこ達は、今とんぼを追いかけて二人ではしゃいでいた。
「お茶を用意します」
「あ、幸之助、だったら私が……」
幸之助が席を立とうとするから、慌てて私がやろうとするとなぜか妖狐に止められた。
「今は彼のやりたいようにさせてあげて下さい」
そう言ってやんわりと笑うもんだから、それ以上私がやるとは言えずそのまま縁側にいることになった。
「……じゃあ、幸之助。お願い」
「はい」
幸之助は嬉しそうにニコリと笑い、炊事場の方へと歩いて行った。
彼を見送り、私はそのままてんこ達に目線を向ける。
暑い中、汗をびっしょりかきながらも全力で遊べるてんこ達を見つめながら、良くここまではしゃげるなぁと思ってしまう。あんなに汗かいたら水分補給しないと倒れちゃうわ。
「どうですか? この場所は」
隣に座る妖狐が笑みを浮かべたまま訊ねてきた。
ついこの間も鞍馬とこんな話をしたなと思いながら、私も笑みを浮かべて頷く。
「凄く素敵な場所です。空気も川もとても綺麗だし、静かで落ち着いていて……本当に、とても癒されます。それに幸之助や鞍馬達に出会えた、私にとって唯一と言える場所になりました」
「それは良かった」
「でも私、あと四日で帰らなくちゃいけなくて……」
帰らなければいけない。そう思うとまた寂しい気持ちが膨らんでくる。
妖狐はそんな私の様子を見て、不思議そうに首を傾げた。
「加奈子殿はこの辺りの産まれではないのですか?」
「……はい。私は東京で産まれ育ちました」
そうなんですか……と、驚いた様子で妖狐が頷いた。
「それは寂しくなりますね」
「はい……。向こうに帰ったら次に来れるのは来年の今ぐらいになると思います」
「こちらへは住む予定はないのですか?」
住む予定……。
そうか。そう言えばこのお屋敷に来た時も移住について少し考えたんだっけ。確かにここに住めば幸之助と離れることもないし、皆と一緒に暮らせるのよね。今じゃすっかり私の第二の故郷って言っても過言じゃなくなってる。鞍馬には釘を刺されたけど、家の周りに住んでる人たちも本当に優しくて、もう顔なじみになったって言ってもおかしくないくらい。
一人でここに暮らしてるって聞いたからか、会う人会う人がみんな何かしら持たせてくれるのだ。お菓子とか、山菜とか、自分の庭で採れたって言うお野菜や果物なんかも。
何もしなくても色々くれるから、今は私は私に出来る事でお返しをするようにしていた。畑のお手伝いだったり、荷物運びだったり。そう言えば時々お婆ちゃんの話し相手にもなったりしてる。
みんな自分たちの孫と同じくらいだからって言って、とても可愛がってくれるのが嬉しくてありがたかった。だから私も、良くしてくれる皆の為に何かをしたいってそう思う気持ちが強くなれた場所だ。
皆、優しくてあったかい……。だからここを離れるのが凄く寂しいんだ。だから真面目に移住を考えてもいいのかもしれない。
だけどそれはやっぱり今じゃない。大学を卒業して、やることをやって、それからだわ。
「そうですね……。いづれはそうしようかと考えてはいます。でも今は大学を卒業しないといけないですし、他にも自分がやるべきことをちゃんとやって片付けておかなきゃダメだと思ってます。やらなきゃいけないことを投げ出すような事をしたら、きっと幸之助の事も中途半端に投げ出してしまいそうな気がしたんで」
私はぎゅっと膝の上の手を握り締めてそう答えると、妖狐は柔らかい笑みを浮かべたまま小さく頷いた。
「あなたは真吉殿に似てとても真っすぐ真面目で、優しい方ですね」
「そ、そうでしょうか……?」
「えぇ。よくこの地へ来て下さいました。私もあなたを歓迎しますよ。子供たちもあなたの事を気に入っているようですし」
歓迎してもらえるなんて嬉しいな。でも、私あの子たちに気に入って貰えるようなこと、したかしら……?
そう思っててんこ達に目を向けると、走り回っていたてんこは石に蹴躓いて目の前で派手に転んでしまった。
「あ!」
私は思わず立ち上がるとてんこの傍に駆け寄り、抱き上げる。
「大丈夫?」
「だ、大丈夫だよこんぐらい!」
強がってそう言う割に目に涙が滲んでる。
頬っぺたと手の平に擦り傷が出来ているくらいだけど、子供からしたら大怪我と同じくらいの傷だよね。
「とにかく傷口を洗おう。そうしないと体にばい菌が入っちゃうからね」
「ばいきん? ばいきんって何だ?」
「え~っと……、体に悪い事をする目に見えない悪い奴」
って言ったら分かってくれるかしら。子供にもわかりやすい言葉を選んで言ったつもりなんだけど……。
その言葉に一番に反応したのは、なぜか傍にいたやんこだった。
「悪いことをする奴がいるの?! 目に見えないのに?」
「うん、そうよ。土には目に見えない小さくて汚い悪い奴がたくさんいて、それが傷口から入って体の中で暴れちゃうの」
「え~っ! こわ~い!」
「だから、そうならない為にまず傷を綺麗に洗って、ちゃんと手当しないとね。そうしたら大丈夫だから」
にっこり笑ってそう言うと、自分では自覚が無かったのかもしれないけれど、耳をぺたんと倒して小刻みに震えながら青ざめていたてんこが「は、早く洗うぞ!」と私の手を引っ張った。やんこもどこかキリっとした顔つきで「やんこも洗う!」と私の後について来る姿は、本当に……例えようが無いくらい可愛い……!
まるで私、お母さんになったような気分だわ。
幸之助と言いこの子たちも母性本能くすぐりまくるから困る。
私がてんことやんこを連れて庭から勝手口の方へ向かうと同時に、幸之助がお茶とお茶請けを用意して持ってくる姿が見えた。
◆◇◆◇◆
「あれ? 加奈子殿とてんこ達はどこへ……?」
温かいお茶の入った湯飲みと急須、そしてお茶菓子の他に漬物の乗った盆を持ったまま、幸之助はいなくなった加奈子たちを探した。
その様子を見ていた妖狐はくすっと笑い「まぁ座れ」と促すと、幸之助は盆を置いてその場に座った。
「今日は酒はいいのか?」
「昼間から酒は飲みませんよ」
「そうか」
幸之助から湯飲みを受け取りながら、妖狐はくすくすと笑った。当の幸之助は少しばかり面白くなさそうな表情を浮かべている。
「そなたの新しい主殿を見れて良かったよ。そもそもそのつもりで鞍馬を呼んだんだがな」
「?」
「あの女子《おなご》は真吉殿によく似た性格をしている。真面目にこつこつと、自分が成し遂げなければならないことに真正面から向き合う強さ。相手を想う優しさ。言う事無しだ」
「はい」
幸之助は頷き返しながら答えると、妖狐は心底安心したような表情を浮かべて幸之助の頭にぽんと手を置いた。
「そなたがもう一度主を立てると聞いた時ほど、私は安心したことは無い。そなたの事は我が子のように思っていたからな」
「よ、妖狐殿……」
「最初、鞍馬に泣きつかれた時はどうするかと思ったがな」
そう言ってクスクスと笑うとくしゃりと幸之助の頭を撫でて手を離す。
「加奈子殿は、四日後に家へ帰ることになるそうだな」
「はい。成すべきことをする為だと言っていました」
「では残りの四日間、もっと楽しい思い出作りをしなければならないな」
にこりと笑う妖狐に、幸之助は不思議そうな顔を浮かべる。その時、勝手口の方から傷を洗い終えたてんことやんこ、そして加奈子が歩いてくるのが見えた。
「父上ー! 父上! 凄いですよ! 加奈子にやってもらいました!」
「あ! ちょっ、走るとまた転んじゃうよ!」
止める加奈子をそっちのけに、興奮気味に手の平を見せながら転がるように駆けて来るてんこの手には可愛い狐の絆創膏が張られていた。
「これをしたら痛くなくなったんです! 凄いですよ! 加奈子は奇術師です!」
「父上、見て! やんこも! やんこもやってもらった!」
どこもケガをしていないはずのやんこまで、小さな指先に同じ絆創膏を巻いてもらい嬉々としている。二人とも興奮冷めやらぬ様子だった。
「そうか。良かったね。きちんとお礼は言ったのかい?」
「うん! 言った!」
二人とも嬉しそうに頬を紅潮させて大きく頷いたのを見て、妖狐はにっこりと笑い二人の頭を撫でた。
「ちょうどいい。やんこ、てんこ。お前たちはもう中に入って少し体を休めなさい」
「はい!」
元気よくそう答えた二人は、草履を脱いで屋敷の中に入っていく。その間に二人を追いかけて小走りに駆け寄って来た加奈子を見て、妖狐は提案を一つ持ち掛けた。
「加奈子殿。子供たちが休んでいる間、少し昔話をしましょう」
「昔話?」
「子供たちの面倒を見てもらった礼もありますが、あなたがここを離れる前にお話をしておこうと思うのです。私たちの事を」
妖狐はそう言うとにっこり微笑んだ。
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