婚約破棄をいたしましょう。

見丘ユタ

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1.プロローグ

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「コーデリア・ウォーレン! 今日は君に大切な話がある。こちらへ」

 卒業パーティーで賑わう最中、緊張した面持ちで婚約者の王太子、テリーが壇上で高らかに宣言した。

 その隣にはシルビアが口元に笑みを浮かべて佇んでいる。

 ……ついに、ついに来てしまった。乙女ゲームのクライマックス、断罪イベント。

 会場の端で目立たないようにしていた私、コーデリアは、これから起こる自分への弾圧、婚約破棄、そして追放に恐怖した。

「……かしこまりました」

 モーゼの十戒よろしく、私の前には壇上への道が最短距離で開かれる。

 涼しい顔で一歩ずつ進むが、正直言って足取りは重い。

 パーティ休めばよかったよおおおお! と泣き叫びたいが、こうも注目を浴びていてはそれもできない。

 それこそ「侯爵家の恥だ!」と、弾圧以前に問答無用で家を追放されるだろう。

 この日を避けるために生きてきたのに、どうしてこうもゲーム通りにイベントが来てしまうものなのだろうか。

 私はゆっくりと死刑台──もとい壇上に向かう中、自分の運命を恨めしく思った。
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