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第10章
(3)絆
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2か月後
季節は流れ・・・那◯の大山参道には色鮮やかな紅葉のアーケードが輝き、千本の紅葉が足◯織姫公園のもみじ谷を赤く染めた頃、朝日家はいつもの活気を取り戻していた。
明日から数ヶ月ぶりに学校へ通学する朋友は、自宅の居間で頼光と対戦型アクションゲームをしながら顔を突き合わせ口論していた。
老婆心ながら心配のあまり孫に物申す祖父と爺ちゃんの言うことは杞憂に過ぎないという孫の激突である。そんな頼光と朋友の前に夏子が盆に載せた温かいお茶を持参して来た。
「お前は何にもわかっとらんのぉ~」
「何がだよ!」
「此奴、入院している間に更にボケよったな!」
「爺ちゃん程じゃねぇーよ」
「生意気な・・・」
居間のテーブルに人数分のお茶を並べ置きながら、コントローラーを手にしてテレビ画面を見つめているふたりを宥める夏子。
そこへ笑顔で近寄って来た高彦も朋友が元気になって帰って来たのだからと内心は大喜びしている頼光の気持ちを察して仲裁に入るも・・・
「馬鹿もん! 儂は此奴の事を想って真剣に言っとるのじゃ」
「だから、御剣で斬るんだよ!」
「此奴は何にもわかっとらんわい、よいか、奴は相手を思い通りに操ったり、誘惑したり、剰え、人に化けたりする女狐じゃぞ! そんな化け物とどうやって戦うつもりじゃ?」
「どうやってって・・・」
温かいお茶を啜りながら微笑ましく頼光と朋友の会話を聞いている高彦と夏子の脇で頼光からの問いに対して真剣に悩んでいる朋友は、結子から教わった言葉を想い出した。
「だから、その、心を鎮めて集中力を高めてだな、全身で気を感じるんだよ!」
「馬鹿もん! 相手は百戦錬磨の女狐じゃ、妖気ぐらい消してわからんようにしよるわい!」
「う~ん・・・なら、そうだなぁ、狐だから、尻尾みりゃいいか?」
「こりゃ駄目じゃ・・・」
この日は朝早くから映画のPRのために密着取材を受けていた結子は、日中に撮影を終え帰宅して湯船に浸かっていた。
朋友が無事に退院したので病院へ通うことはなくなったのだが、学業と芸能活動の両立は相変わらず続いている。
成績が良い結子ではあるものの芸能活動によって出席できていない教科の遅れを取り戻すためにも人一倍、学業に励まなければいけない結子は入浴を済ませて午後から通学する準備に取りかかろうと考えていた時、又しても事件が勃発した。
「もう、いい加減にしてよ!」
次から次へと騒ぎを起こして攻撃を仕掛けて来る穢れた存在たちの所為で、結子は心身ともに疲弊していた。それでも安息の時間はなく自分の意思とは無関係に訪れる難題に対応しなければならないのだ。
屋外の穢れた気配を察知した結子は、自宅内にいながら狐の子分たちに憑依された大勢の男子生徒たちが結子の自宅を取り囲むように徘徊していることを体感したのである。
自分だけならいざ知らず、家族や近隣の住民を巻き込む訳にはいかない。
「大変なことになった・・・」
この難題をいかにして解決するのか、結子は思案しながら静かに呟いた。
「大変なことになったって、どう言うことだよ?」
自宅の居間で携帯電話を片手に朋友が会話している相手は鬼塚京一である。大量の狐の子分たちが結子の自宅の方へ向かって行ったのを角田剛毅が見たそうだから、今から狐の子分たちを追いかけると鬼塚から聞かされた朋友は、鬼塚に感謝の意を伝えて御神宝を手に駆け出した。
自宅から駈けて来た朋友は、足◯駅のEF60前で偶然にも角田と鉢合った。急いで何処へ行くのかと角田は朋友に問い掛ける。
「うっせぇ! じゃぁな!」
立ち止まった朋友は角田に目線を送ったものの瞬時に目を逸らして行き先を伝えないまま駈けてゆく。
結子の自宅前に到着した鬼塚の目に映る狐たちに憑依された多数の男子生徒たち・・・鬼塚にとっては母校の後輩たちであり、あらゆる手段を使い怒濤の攻撃を仕掛けて来る狐たちへの怒りが込み上げて来る。
今なら狐たちに自分の存在を悟られていないと判断した鬼塚は、奇襲を仕掛けようと前のめりになった時、鬼塚の携帯電話が静かに音を立てた。
「剛毅、どうした・・・何? 駅の方に向かって行っただと・・・」
その頃・・・
足◯駅の両毛線ホームから電車に搭乗した朋友は、大元を退治しなければいけないという結論を導き出していた。導かれるように九尾狐の下へ向かう朋友は、結子なら大丈夫だから自分が大狐を退治しなければという強い意志を胸に集中力を更に高めていた。
「もう、貴方たち、いいかげんにしなさいよ!」
制服を着て戦闘に繰り出そうと玄関口へ向かい勢いよくドアを開けた結子の前には、背を向けるようにしてひとり仁王立ちしている鬼塚がいた。
「此処は任せて、朋友を追え! 彼奴はひとりで大狐と戦うつもりだ! 早く!」
昨年は敵として戦った強者が今は味方として加勢してくれる・・・結子は鬼塚の優しさと正義感ある行動に感謝しながら朋友と大狐の下へ向かう選択をした。
朋友の気を感じながら狐たちを避けるように自宅前を後にする結子を余所目に狐たちへ睨みを利かせる鬼塚の携帯電話が再びジリジリと振動する。
「もしもし、鬼塚さん・・・はい、今、そっちに向かっています!」
角田が街中から鬼塚に連絡していると狐たちを退治するべく駆けて来た昭心と思い掛けず出会した。
「さて、気合い入れて行くか!」
神々しい勾玉ストラップを力強く握り締める鬼塚。狐たちの策謀に嵌らないためにも先読みする鬼塚は、角田と昭心の到着を待たずして結子の自宅を取り囲む狐の子分たちに憑依された男子生徒の群れへ飛び込み、ひとり格闘を始めた。
季節は流れ・・・那◯の大山参道には色鮮やかな紅葉のアーケードが輝き、千本の紅葉が足◯織姫公園のもみじ谷を赤く染めた頃、朝日家はいつもの活気を取り戻していた。
明日から数ヶ月ぶりに学校へ通学する朋友は、自宅の居間で頼光と対戦型アクションゲームをしながら顔を突き合わせ口論していた。
老婆心ながら心配のあまり孫に物申す祖父と爺ちゃんの言うことは杞憂に過ぎないという孫の激突である。そんな頼光と朋友の前に夏子が盆に載せた温かいお茶を持参して来た。
「お前は何にもわかっとらんのぉ~」
「何がだよ!」
「此奴、入院している間に更にボケよったな!」
「爺ちゃん程じゃねぇーよ」
「生意気な・・・」
居間のテーブルに人数分のお茶を並べ置きながら、コントローラーを手にしてテレビ画面を見つめているふたりを宥める夏子。
そこへ笑顔で近寄って来た高彦も朋友が元気になって帰って来たのだからと内心は大喜びしている頼光の気持ちを察して仲裁に入るも・・・
「馬鹿もん! 儂は此奴の事を想って真剣に言っとるのじゃ」
「だから、御剣で斬るんだよ!」
「此奴は何にもわかっとらんわい、よいか、奴は相手を思い通りに操ったり、誘惑したり、剰え、人に化けたりする女狐じゃぞ! そんな化け物とどうやって戦うつもりじゃ?」
「どうやってって・・・」
温かいお茶を啜りながら微笑ましく頼光と朋友の会話を聞いている高彦と夏子の脇で頼光からの問いに対して真剣に悩んでいる朋友は、結子から教わった言葉を想い出した。
「だから、その、心を鎮めて集中力を高めてだな、全身で気を感じるんだよ!」
「馬鹿もん! 相手は百戦錬磨の女狐じゃ、妖気ぐらい消してわからんようにしよるわい!」
「う~ん・・・なら、そうだなぁ、狐だから、尻尾みりゃいいか?」
「こりゃ駄目じゃ・・・」
この日は朝早くから映画のPRのために密着取材を受けていた結子は、日中に撮影を終え帰宅して湯船に浸かっていた。
朋友が無事に退院したので病院へ通うことはなくなったのだが、学業と芸能活動の両立は相変わらず続いている。
成績が良い結子ではあるものの芸能活動によって出席できていない教科の遅れを取り戻すためにも人一倍、学業に励まなければいけない結子は入浴を済ませて午後から通学する準備に取りかかろうと考えていた時、又しても事件が勃発した。
「もう、いい加減にしてよ!」
次から次へと騒ぎを起こして攻撃を仕掛けて来る穢れた存在たちの所為で、結子は心身ともに疲弊していた。それでも安息の時間はなく自分の意思とは無関係に訪れる難題に対応しなければならないのだ。
屋外の穢れた気配を察知した結子は、自宅内にいながら狐の子分たちに憑依された大勢の男子生徒たちが結子の自宅を取り囲むように徘徊していることを体感したのである。
自分だけならいざ知らず、家族や近隣の住民を巻き込む訳にはいかない。
「大変なことになった・・・」
この難題をいかにして解決するのか、結子は思案しながら静かに呟いた。
「大変なことになったって、どう言うことだよ?」
自宅の居間で携帯電話を片手に朋友が会話している相手は鬼塚京一である。大量の狐の子分たちが結子の自宅の方へ向かって行ったのを角田剛毅が見たそうだから、今から狐の子分たちを追いかけると鬼塚から聞かされた朋友は、鬼塚に感謝の意を伝えて御神宝を手に駆け出した。
自宅から駈けて来た朋友は、足◯駅のEF60前で偶然にも角田と鉢合った。急いで何処へ行くのかと角田は朋友に問い掛ける。
「うっせぇ! じゃぁな!」
立ち止まった朋友は角田に目線を送ったものの瞬時に目を逸らして行き先を伝えないまま駈けてゆく。
結子の自宅前に到着した鬼塚の目に映る狐たちに憑依された多数の男子生徒たち・・・鬼塚にとっては母校の後輩たちであり、あらゆる手段を使い怒濤の攻撃を仕掛けて来る狐たちへの怒りが込み上げて来る。
今なら狐たちに自分の存在を悟られていないと判断した鬼塚は、奇襲を仕掛けようと前のめりになった時、鬼塚の携帯電話が静かに音を立てた。
「剛毅、どうした・・・何? 駅の方に向かって行っただと・・・」
その頃・・・
足◯駅の両毛線ホームから電車に搭乗した朋友は、大元を退治しなければいけないという結論を導き出していた。導かれるように九尾狐の下へ向かう朋友は、結子なら大丈夫だから自分が大狐を退治しなければという強い意志を胸に集中力を更に高めていた。
「もう、貴方たち、いいかげんにしなさいよ!」
制服を着て戦闘に繰り出そうと玄関口へ向かい勢いよくドアを開けた結子の前には、背を向けるようにしてひとり仁王立ちしている鬼塚がいた。
「此処は任せて、朋友を追え! 彼奴はひとりで大狐と戦うつもりだ! 早く!」
昨年は敵として戦った強者が今は味方として加勢してくれる・・・結子は鬼塚の優しさと正義感ある行動に感謝しながら朋友と大狐の下へ向かう選択をした。
朋友の気を感じながら狐たちを避けるように自宅前を後にする結子を余所目に狐たちへ睨みを利かせる鬼塚の携帯電話が再びジリジリと振動する。
「もしもし、鬼塚さん・・・はい、今、そっちに向かっています!」
角田が街中から鬼塚に連絡していると狐たちを退治するべく駆けて来た昭心と思い掛けず出会した。
「さて、気合い入れて行くか!」
神々しい勾玉ストラップを力強く握り締める鬼塚。狐たちの策謀に嵌らないためにも先読みする鬼塚は、角田と昭心の到着を待たずして結子の自宅を取り囲む狐の子分たちに憑依された男子生徒の群れへ飛び込み、ひとり格闘を始めた。
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