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逢魔が時で会いましょう 一人台本(約10分)
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いつも見る景色。車椅子、白い壁、点滴、黄緑色のカーテン、看護師さん、先生。…君。
外から見える僕たちくらいの少年少女は、楽しそうにしている。夕焼け小焼けのチャイムも無視して、遊んでいる。
彼女は言った。
『いつ君と会えなくなるかわからない。明日かもしれない。だから夜がくる夕方が嫌い。』
「僕は好きだよ。朝の方が眠いし辛いな。」
『それはまた別の話でしょ。』
僕らは笑い合った。
それだけが僕の世界。狭くても、寂しくても、僕はここにしかいられない。
でも君がいる。
君がいるから僕は、こんなに笑っていられるんだ。
なんて、あの頃は思っていた。
突然隣のベッドの子がいなくなるなんてよくあることで、それは君も同じで。
先生たちはいつもみたく軽く言うんだ。まるで朝ごはんが今日はパンだったね、みたいな。
…今日死んじゃったのは、君だった。
つまらない、つまらない毎日。
あいつもあいつもあいつも、お前たちがいなくなればよかったのに。
本当はそんなこと、考えたくないのに。
止まらない。止めてくれる人が、君がいないんだから当たり前だ。
そんな時に聞こえてきた会話。
逢魔が時に出てくる鏡。そこには、この世じゃないものに会える。
試すほかなかった。鏡は本当に現れたし、やらないわけがないだろう?
君にまた、会えるなら。
死ぬのだって怖くない。
車椅子がギシギシと進む。
鼓動は、君を求めて高鳴る。
ひんやりとした鏡の感覚が僕を吸い込む。
目が覚めると、そこは病室。見慣れた景色。
ただ一つ、違った。
君が目の前で哀しそうに窓の外を見つめていた。
君はずっとここにいた。
ずっと一人で。なら、僕も一緒にいるよ。
どれくらいだろう。かなり長い間、君とこの世界で遊んだ。外にも出てみたりした。楽しかった。
このままずっと一緒にいようと思ってた。
でも、君は僕にここにいてはいけないと言う。なんで、なんで僕の気持ちをわかってくれないの?
…この世界はなんでも叶う世界なんだ。僕たちは点滴をずっとつけてることもないし、自分の足でどこまでだっていける。
そして何より、君が存在する。
そんな素敵な世界をどうして去ろうと思うのか。
そう返すと君は不服そうに僕の髪を撫でた。
撫で続けられてうとうとし始める。本当に眠ってしまいそうだ。
瞬間、君が僕の腕を掴んだ。二人して走り出す。こんな外の子たちみたいなこと、僕らができると思ってなかった。
「僕はやっぱり、お日様は嫌いだよ。」
君が夕日を指さす。瞬間、抱きしめられ、瞬間、落ちる。落ちる。どこまでも、どこまでも。
君の悲しそうな笑顔がはっきり脳に焼き付いたまま。
目覚めた先には、心配そうにしてるみんなの顔。
僕は倒れて何日間も眠っていたらしい。
「とてもいい、覚めたくない夢だった。」
不思議そうな顔をされても。だってそうだったんだから。
「あの子はまだ、あそこにいるのかな。」
きっともう鏡は現れないだろう。
僕が神様だったらきっとそうする。
奇跡なんて一回もあれば十分だ。
それにしてもほんとひどいよね。
あんな偽物、僕に見せるなんて。
外から見える僕たちくらいの少年少女は、楽しそうにしている。夕焼け小焼けのチャイムも無視して、遊んでいる。
彼女は言った。
『いつ君と会えなくなるかわからない。明日かもしれない。だから夜がくる夕方が嫌い。』
「僕は好きだよ。朝の方が眠いし辛いな。」
『それはまた別の話でしょ。』
僕らは笑い合った。
それだけが僕の世界。狭くても、寂しくても、僕はここにしかいられない。
でも君がいる。
君がいるから僕は、こんなに笑っていられるんだ。
なんて、あの頃は思っていた。
突然隣のベッドの子がいなくなるなんてよくあることで、それは君も同じで。
先生たちはいつもみたく軽く言うんだ。まるで朝ごはんが今日はパンだったね、みたいな。
…今日死んじゃったのは、君だった。
つまらない、つまらない毎日。
あいつもあいつもあいつも、お前たちがいなくなればよかったのに。
本当はそんなこと、考えたくないのに。
止まらない。止めてくれる人が、君がいないんだから当たり前だ。
そんな時に聞こえてきた会話。
逢魔が時に出てくる鏡。そこには、この世じゃないものに会える。
試すほかなかった。鏡は本当に現れたし、やらないわけがないだろう?
君にまた、会えるなら。
死ぬのだって怖くない。
車椅子がギシギシと進む。
鼓動は、君を求めて高鳴る。
ひんやりとした鏡の感覚が僕を吸い込む。
目が覚めると、そこは病室。見慣れた景色。
ただ一つ、違った。
君が目の前で哀しそうに窓の外を見つめていた。
君はずっとここにいた。
ずっと一人で。なら、僕も一緒にいるよ。
どれくらいだろう。かなり長い間、君とこの世界で遊んだ。外にも出てみたりした。楽しかった。
このままずっと一緒にいようと思ってた。
でも、君は僕にここにいてはいけないと言う。なんで、なんで僕の気持ちをわかってくれないの?
…この世界はなんでも叶う世界なんだ。僕たちは点滴をずっとつけてることもないし、自分の足でどこまでだっていける。
そして何より、君が存在する。
そんな素敵な世界をどうして去ろうと思うのか。
そう返すと君は不服そうに僕の髪を撫でた。
撫で続けられてうとうとし始める。本当に眠ってしまいそうだ。
瞬間、君が僕の腕を掴んだ。二人して走り出す。こんな外の子たちみたいなこと、僕らができると思ってなかった。
「僕はやっぱり、お日様は嫌いだよ。」
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