2 / 11
彼と最後の星の降る夜 一人台本(約10分)
しおりを挟む
僕は、いつも一人だった。
昔から弱虫で鈍くさくて、人見知りで。
クラスのいじめっ子たちからは格好の標的にされてしまう。そんな風に、一生を送っていくのだと思っていた。
だが、転機は突然訪れる。それは中学二年の春だった。
彼が転校してきたのだ。成績優秀、スポーツ万能。誰からも慕われる彼は何故か僕と一緒にいたがった。
最初はからかってるのかと思ったけどそれはすぐに違うとわかった。
僕をいじめていたやつらが彼の目の前で僕をからかうと、彼は激昴しやつらを殴ったんだ。
なんでそこまで、と言うと君は
「友達のことを言われてなんとも思わないやつはいないよ。」
そう返してきた。
少し問題沙汰にはなったけれど、僕はとても嬉しかったんだ。すっと心の汚い部分が溶けたような、そんな感じがした。今まで一人だったからわからなかった。
そうか、僕らはもう〝友達〟なのか。
それからは楽しい毎日だ。放課後遊んだり、週末に出かけたり、時には一緒に怒られたり。
僕達のお気に入りは丘の上。ここからだと学校がよく見える。ここで寝転ぶのが僕らの日課になっていた。
たまにいじめっ子たちが僕と一緒にいる彼を悪く言うけれど、それに対して言い返せるようにもなった。まあ最後は物理でやられてしまうんだけど。
傷だらけの僕を彼は何も言わず手当してくれる。
ねえ、君のおかげで僕はこんなにも強くなれたんだ。・・・だからそんな悲しそうな顔はしないで。
いつものように僕らは週末、遊園地に出かけた。その日は少し違うことしてみようかって屋台のミニゲームで遊んだ。
僕はハズレのお菓子しか当たらなかったけど、彼は可愛いクラゲのキーホルダーを当てていた。
「ほら、これあげるよ。君こういうの好きでしょ?」
・・・そう言ってくれたクラゲは、今でも僕の宝物なんだよ。
普通の日常が彩りを覚えていく。
ちょうど一年、僕らは中学三年になった。始業式の朝、いつも早く学校に来る君が、来ない。
体調でも崩したのかとその日は大丈夫?とメールを送るだけで終わった。
返信が遅いのはいつもの事だと、疑いもしなかった。
次の日、学校に出る前に家のインターホンがなった。出るとそこには泣き腫れて目の真っ赤な彼のお母さんがいた。
彼は交通事故で死んだ。
歩道に入り込んできた車から小学生を守って亡くなったらしい。実に彼らしい。彼のお母さんは僕が一番の親友だったからと、一番初めに伝えに来てくれたらしい。
ショックと喪失感。彼がいなくなった。文字にすれば簡単だが、頭はそう簡単に理解してはくれない。
学校を休んで一日中丘の上にいた。ここなら、彼に会える気がしたんだ。
月が空に昇る頃、ようやく心が理解して涙が出てきた。それからわんわん泣いた。馬鹿みたいに泣いた。
「なーに泣いてんのさ。らしくもない。」
・・・?声が聞こえる。彼の、声が。
「こっちだっての。」
振り返るとそこには彼がいた。…半透明だったけど。
な、んで?
「さあねえ、君がそうやって泣いてるからじゃない?」
彼は自分が死んだことも理解していた。自分が死んだというのにとても呑気だ。
でもそれでも構わなかった。幽霊だとしても、彼がいてくれるだけで僕は嬉しかったんだ。
それから毎夜、僕は丘の上に通った。彼は夜まで眠っているから僕は毎日学校でこういうことがあったとか、今日は何をしたとか、そんな話をめいいっぱいする。それに彼は優しく相打ちを打つ。
出かけることはもうできないけれど、その時だけは以前の二人に戻れた気がした。
時間はあっという間に過ぎていき、いつの間にか僕は彼の背を通り越して見下ろすくらいになっていた。
それくらいからだ。彼は段々と苦しむようになってきた。優しいから表には出さないけど、成仏した方がいいのだろう。何故彼が成仏できないのか、理由は明白。
僕がきちんと生きれていないからだ。
彼はもういない。それを受け入れて生きること、それができないと彼は心配で成仏できないんだ。
そりゃそうだ。いじめっ子たちのいじめは彼がいなくなってから元に戻り、僕は毎日のようにいじめられている。よって囲まれて、水をかけられたり、クラゲのキーホルダーを隠されたりもした。
彼がその様子を見ていたら、きっと何故やり返さないのかと問うだろう。
だけど僕は知っている。やり返してしまったら同じなんだ。後から手は打つにしろ、冷静にならなければやつらと同じ。
だけど、だから大丈夫だよ!なんて言っても彼は信じてくれないんだろうな。
(ニュースキャスターの声)今日は珍しくこちらの地域にも流れ星が降るそうです。晴れていれば見れるかもしれませんね。
地域放送のテレビがそんなことを言っている。試しに、賭けてみるのもいいかもしれない。
いつものように僕は丘の上へ向かう。
「ふあぁぁ、おはよう。また来たんだね。」
そう君は言う。
半年前の僕は弱くて、彼がいなきゃダメだった。でもそれは僕のわがままだった。
彼を笑顔で見送ること、それが本来僕がすべきことだったんだ。
実はね、君には言っていないけど僕君以外にも友達ができたんだ。だから、もう大丈夫だよ。
おやすみ。
・・・生まれ変わった君と、また友達になれたらいいな。
昔から弱虫で鈍くさくて、人見知りで。
クラスのいじめっ子たちからは格好の標的にされてしまう。そんな風に、一生を送っていくのだと思っていた。
だが、転機は突然訪れる。それは中学二年の春だった。
彼が転校してきたのだ。成績優秀、スポーツ万能。誰からも慕われる彼は何故か僕と一緒にいたがった。
最初はからかってるのかと思ったけどそれはすぐに違うとわかった。
僕をいじめていたやつらが彼の目の前で僕をからかうと、彼は激昴しやつらを殴ったんだ。
なんでそこまで、と言うと君は
「友達のことを言われてなんとも思わないやつはいないよ。」
そう返してきた。
少し問題沙汰にはなったけれど、僕はとても嬉しかったんだ。すっと心の汚い部分が溶けたような、そんな感じがした。今まで一人だったからわからなかった。
そうか、僕らはもう〝友達〟なのか。
それからは楽しい毎日だ。放課後遊んだり、週末に出かけたり、時には一緒に怒られたり。
僕達のお気に入りは丘の上。ここからだと学校がよく見える。ここで寝転ぶのが僕らの日課になっていた。
たまにいじめっ子たちが僕と一緒にいる彼を悪く言うけれど、それに対して言い返せるようにもなった。まあ最後は物理でやられてしまうんだけど。
傷だらけの僕を彼は何も言わず手当してくれる。
ねえ、君のおかげで僕はこんなにも強くなれたんだ。・・・だからそんな悲しそうな顔はしないで。
いつものように僕らは週末、遊園地に出かけた。その日は少し違うことしてみようかって屋台のミニゲームで遊んだ。
僕はハズレのお菓子しか当たらなかったけど、彼は可愛いクラゲのキーホルダーを当てていた。
「ほら、これあげるよ。君こういうの好きでしょ?」
・・・そう言ってくれたクラゲは、今でも僕の宝物なんだよ。
普通の日常が彩りを覚えていく。
ちょうど一年、僕らは中学三年になった。始業式の朝、いつも早く学校に来る君が、来ない。
体調でも崩したのかとその日は大丈夫?とメールを送るだけで終わった。
返信が遅いのはいつもの事だと、疑いもしなかった。
次の日、学校に出る前に家のインターホンがなった。出るとそこには泣き腫れて目の真っ赤な彼のお母さんがいた。
彼は交通事故で死んだ。
歩道に入り込んできた車から小学生を守って亡くなったらしい。実に彼らしい。彼のお母さんは僕が一番の親友だったからと、一番初めに伝えに来てくれたらしい。
ショックと喪失感。彼がいなくなった。文字にすれば簡単だが、頭はそう簡単に理解してはくれない。
学校を休んで一日中丘の上にいた。ここなら、彼に会える気がしたんだ。
月が空に昇る頃、ようやく心が理解して涙が出てきた。それからわんわん泣いた。馬鹿みたいに泣いた。
「なーに泣いてんのさ。らしくもない。」
・・・?声が聞こえる。彼の、声が。
「こっちだっての。」
振り返るとそこには彼がいた。…半透明だったけど。
な、んで?
「さあねえ、君がそうやって泣いてるからじゃない?」
彼は自分が死んだことも理解していた。自分が死んだというのにとても呑気だ。
でもそれでも構わなかった。幽霊だとしても、彼がいてくれるだけで僕は嬉しかったんだ。
それから毎夜、僕は丘の上に通った。彼は夜まで眠っているから僕は毎日学校でこういうことがあったとか、今日は何をしたとか、そんな話をめいいっぱいする。それに彼は優しく相打ちを打つ。
出かけることはもうできないけれど、その時だけは以前の二人に戻れた気がした。
時間はあっという間に過ぎていき、いつの間にか僕は彼の背を通り越して見下ろすくらいになっていた。
それくらいからだ。彼は段々と苦しむようになってきた。優しいから表には出さないけど、成仏した方がいいのだろう。何故彼が成仏できないのか、理由は明白。
僕がきちんと生きれていないからだ。
彼はもういない。それを受け入れて生きること、それができないと彼は心配で成仏できないんだ。
そりゃそうだ。いじめっ子たちのいじめは彼がいなくなってから元に戻り、僕は毎日のようにいじめられている。よって囲まれて、水をかけられたり、クラゲのキーホルダーを隠されたりもした。
彼がその様子を見ていたら、きっと何故やり返さないのかと問うだろう。
だけど僕は知っている。やり返してしまったら同じなんだ。後から手は打つにしろ、冷静にならなければやつらと同じ。
だけど、だから大丈夫だよ!なんて言っても彼は信じてくれないんだろうな。
(ニュースキャスターの声)今日は珍しくこちらの地域にも流れ星が降るそうです。晴れていれば見れるかもしれませんね。
地域放送のテレビがそんなことを言っている。試しに、賭けてみるのもいいかもしれない。
いつものように僕は丘の上へ向かう。
「ふあぁぁ、おはよう。また来たんだね。」
そう君は言う。
半年前の僕は弱くて、彼がいなきゃダメだった。でもそれは僕のわがままだった。
彼を笑顔で見送ること、それが本来僕がすべきことだったんだ。
実はね、君には言っていないけど僕君以外にも友達ができたんだ。だから、もう大丈夫だよ。
おやすみ。
・・・生まれ変わった君と、また友達になれたらいいな。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
【フリー台本】一人向け(ヤンデレもあるよ)
しゃどやま
恋愛
一人で読み上げることを想定した台本集です。五分以下のものが大半になっております。シチュエーションボイス/シチュボとして、声劇や朗読にお使いください。
別名義しゃってんで投稿していた声劇アプリ(ボイコネ!)が終了したので、お気に入りの台本や未発表台本を投稿させていただきます。どこかに「作・しゃどやま」と記載の上、個人・商用、収益化、ご自由にお使いください。朗読、声劇、動画などにご利用して頂いた場合は感想などからURLを教えていただければ嬉しいのでこっそり見に行きます。※転載(本文をコピーして貼ること)はご遠慮ください。
フリー声劇台本〜BL台本まとめ〜
摩訶子
恋愛
ボイコネのみで公開していた声劇台本の中からBLカテゴリーのものをこちらにも随時上げていきます。
ご使用の際には必ず「シナリオのご使用について」をお読み頂ますようよろしくお願いいたしますm(*_ _)m

アレンジ可シチュボ等のフリー台本集77選
上津英
大衆娯楽
シチュエーションボイス等のフリー台本集です。女性向けで書いていますが、男性向けでの使用も可です。
一人用の短い恋愛系中心。
【利用規約】
・一人称・語尾・方言・男女逆転などのアレンジはご自由に。
・シチュボ以外にもASMR・ボイスドラマ・朗読・配信・声劇にどうぞお使いください。
・個人の使用報告は不要ですが、クレジットの表記はお願い致します。
片思い台本作品集(二人用声劇台本)
樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
恋愛
今まで投稿した事のある一人用の声劇台本を二人用に書き直してみました。
⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠
・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します)
・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。タイトル変更も禁止です。
※こちらの作品は男女入れ替えNGとなりますのでご注意ください。
その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい
👨一人用声劇台本「寝落ち通話」
樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
恋愛
彼女のツイートを心配になった彼氏は彼女に電話をする。
続編「遊園地デート」もあり。
ジャンル:恋愛
所要時間:5分以内
男性一人用の声劇台本になります。
⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠
・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します)
・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。
その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。
フリー台詞・台本集
小夜時雨
ライト文芸
フリーの台詞や台本を置いています。ご自由にお使いください。
人称を変えたり、語尾を変えるなどOKです。
題名の横に、構成人数や男女といった表示がありますが、一人二役でも、男二人、女二人、など好きなように組み合わせてもらっても構いません。
また、許可を取らなくても構いませんが、動画にしたり、配信した場合は聴きに行ってみたいので、教えてもらえるとすごく嬉しいです!また、使用する際はリンクを貼ってください。
※二次配布や自作発言は禁止ですのでお願いします。
フリー声劇台本〜1万文字以内短編〜
摩訶子
大衆娯楽
ボイコネのみで公開していた声劇台本をこちらにも随時上げていきます。
ご利用の際には必ず「シナリオのご利用について」をお読み頂ますようよろしくお願いいたしますm(*_ _)m

声劇・シチュボ台本たち
ぐーすか
大衆娯楽
フリー台本たちです。
声劇、ボイスドラマ、シチュエーションボイス、朗読などにご使用ください。
使用許可不要です。(配信、商用、収益化などの際は 作者表記:ぐーすか を添えてください。できれば一報いただけると助かります)
自作発言・過度な改変は許可していません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる