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最後の一週間
傾れ込む来訪者
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私が箱から出した食器や調理器具を洗っている間、ヴィクターはアパート内に無計画に置かれていた家具の位置を変えたりしていた。
そして、このリビングとキッチンの兼用ルームにあるソファーベッドを、あのシャンデリアのある部屋へ移動させると言って、扉を全開にしてストッパーをかけた。
このモスグリーンのソファベッドは、分厚く大型でどっしりした形なので、かなりの重量なのは間違いなかった。
1人であんな大きなものを移動出来ないだろうと思って手伝おうとしたら、平気だと言う。どうするのかと思ってたら、ソファベッドを横倒しにして、柔らかい背面をフロアにスライドさせるように器用に押して動かし始めた。
なるほど、そうすれば、重いものを抱え上げることなく動かせる。
扉の幅よりもソファーベッドの幅のほうが大きいので、大丈夫なのだろうかと見ていたら、通過する時に少しずつ角度や向きを変えたり調整して、難なく通り抜けてホールのほうへと移動していく。
1人であんな大きなものを移動させる勇ましい姿につい見とれていたが、丁度、乾燥機に入れていたものも乾いた頃だったのを思い出し、バスルームへ行ってみる。
ENDランプが点灯していたので、乾燥機を開けると、温かい空気と、爽やかな洗い立ての香りが漏れて来た。
タオル類を畳みバスルームのラックに片付けて、ソファーベッド用のカバー類を取り出し、シャンデリアのある部屋へ向かう。
中を覗くと、壁際にソファーベッドを移動させたヴィクターが、座席部分を持ち上げて中からブランケット類を取り出し、ベッドの形へ組み立て直しているところだった。
「これ、俺がたまに祖母の家に行った時に使ってたやつ」
「ふうん、じゃぁ、懐かしいものだね」
彼が使っていたソファベッドなんだと思うと、祖母に会いに来た彼がここで眠る姿を想像して、自然と微笑みが溢れる。
祖母の作る美味しい食事をお腹いっぱい食べて、たくさん話をして、心身ともに満たされた夕べを過ごした彼が、心地よい眠りに落ちた場所。
ヴィクターが私が持っていたベットとブランケットのカバーを取ったので、私はピローのほうにカバーをかけ始める。
「これはあくまで一時的に使うものだから、新しいベッド、準備しとく」
「うん、そうだね」
ピローを並べながら答えていると、ブランケットを掛けたソファーベッドに彼がごろりとひっくり返り、並べたピローが揺れた。下から私を見上げる彼の目がゆらりと煌めいて、ドキンと胸が弾む。
見慣れていたと思っていたベビーフェイスも、友達として見るのと愛する人として見るのでは全然違う。どこか幼さを感じる少年ぽい顔立ちなのに、私に向けるその眼差しは以前と違って男らしい色気の漂う魅力を秘めていて、この相反する魅力の組み合わせが持つ破壊力はただものじゃない。
甘える様な穏やかな目で私を見つめて、両手を大きく広げたヴィクター。
私は最後のピローを片隅に置くと、ソファーベッドに膝を付き、彼の両肩に手を伸ばした。
彼の両腕がゆっくりと私の体に絡み付き、全身がその温かさに包まれると、私ははち切れそうな幸福感で大きく息をつく。
しばらく黙って頬を寄せ合いお互いの呼吸音に聞き入る。
私の背を抱いていた彼の手がセーターの下に滑り込んで、温かい手を素肌に感じた。
顔を上げると目が合って、引き寄せられるようにキスを交わす。
「リオ」
耳元でヴィクターが小声で囁いた。
「日が暮れるまで、到底待てないんだ」
思わず身を起こして彼を見下ろすと、潤んだ彼の青い目がじっと私を見つめている。
恥ずかしさに耳が熱くなる気がしたけれど、戸惑うこともなく私は微笑んで頷いた。
少しだけ照れたように目を細めて微笑むヴィクターが、私の着ている黒いセーターの裾に手を伸ばし、ゆっくりとまくり上げていく。ミントグリーンのサテン・スリップの上を滑る彼の温かい手の平の感覚に、心拍数が上がり始め体が熱くなる気がした。
私の身を傍らに横たえた彼が、私の手を取って自分のシャツに導く。
ドキドキしながらシャツのボタンを外していく間、彼はずっと私の背を抱きしめていた。
すべてのボタンを外し終え、はだけたシャツの合間から彼の逞しい胸が現れてますます心拍数があがってくる。
「……なんか、ドキドキして、頭がどうかなりそう」
我慢出来ずにそう呟くと、ヴィクターがクスッと笑って頷いた。
「俺も」
彼の温かい手が肩に触れた。
「神に感謝してる」
そう呟いて、澄んだ青い目を煌めかせて優しく微笑むヴィクター。
「こんなに美しい君を俺に与えてくれたことを」
その言葉に息が止まる想いで彼を見つめる。
私も神様に心から感謝している。
これほど愛する相手に巡り会わせてくれたことを。
そっと両手をからめた彼が身を屈めて、優しくキスをする。
彼の熱い唇がゆっくりと首筋を滑り落ちて行く感覚に全身の鳥肌が立つ。
その感覚はまるで炎が肌の上を走っているかのような余韻を残すものだった。
彼の唇が捕らえたランジェリーストラップが、するりと肩を滑り落ちた時、突然、携帯の呼び出し音が鳴り響き、はっとして顔を見合わせる。
聞き覚えのある、ドイツ語のヘビメタ音楽の呼び出し音だ。
「もしかして、クリスティアン?」
今朝、車の中で聞いた音楽だったと思い出した。
静かだった空間に、激しい重低音と耳をつんざく悲鳴じみたボーカルの声が響き渡る。
ヴィクターは頭を抱え俯いたまましばらく黙っていたが、やがて、ハァ、と溜め息をついてサイドテーブルに置いてあった携帯に手を伸ばし、低い、不機嫌な声で電話に出た。
ドイツ語で会話をしているので、何を話しているのかはよくわからないけれど、しばらく何やら激しい言い合いをして、それから淡々とした会話の後、ようやく通話が終る。
携帯をサイドテーブルに置いたヴィクターが、仰向けにひっくり返って苦笑いした。
「……今から、出なきゃいけなくなった」
「え?」
「明日は予定があるから、荷物運びに車を出せるのは今日だけだって言うんだ。これから、カフェのオーナーに車を返しに行って、そこでクリスティアンと合流して、荷物をこっちへ移動させることになった」
「そうなんだ、でも、今日、手伝ってくれるんならよかった」
「俺は今、全然、あいつに会いたい気分じゃないんだけどね」
ヴィクターはそう言って、名残惜しそうに私の髪を撫でる。
私は笑いながら彼のシャツに手を伸ばし、さっき外したばかりのボタンを留め始めた。
「出ている間に、パエリア、作っておくから」
そう言うと、ヴィクターは笑いながら頷いて、私の頭にセーターを被せた。
頭を出すと、乱れた髪を丁寧に整えてくれる。その顔が随分と真剣な真顔だったので、つい頬が緩んでしまう。
グレーのレザージャケットを羽織り、携帯を内ポケットに入れたヴィクターの後を追って、玄関のほうへ行く。
彼の後ろを歩きながら、今のこの瞬間にものすごくドキドキと胸がときめいた。
愛する人を送り出すなんて、人生初の経験だ。
扉を開いて振り返ったヴィクターが、私を見ると照れたように微笑んで、キスをした。
「Te Amo」
私も彼の首に両腕を回してぎゅっと抱きしめた。
「Te Amo」
嬉しそうに目を細めて頷いたヴィクター。
ほんのひと時、離れるだけなのに、もう待てなくて今すぐ会いたくなるこの気持ち。
3日後に帰国して、次に会えるまでのおよそ1ヶ月半、耐えられるのだろうか。
そんなことを考えながら、表への扉を開けて出て行く彼の背中を見送った。
キッチンへ行くと塩抜きしておいたアサリをチェックして、パエリアの準備に取りかかる。
先にヴィクターの携帯でお気に入りレシピを確認して、手順はメモに書いていたので、それに従って作業を進めて行くだけだ。
野菜類を先に切り、続いてイカ、鶏もも肉をカットして、材料を揃えたら、大きなパエリア鍋を熱してオリーブオイルを注ぎ入れる。
熱気を感じて来たら、ガーリック、アサリとイカ、鶏もも肉を投入し、アサリが開いたら、鍋から取り出す。
その鍋へ今度は野菜類を入れ軽く炒め、続いて米を追加して全体を炒めたら、最初のアサリ、イカと鶏もも肉を鍋に戻し、サフランとスープベースを混ぜたものを入れ全体が馴染むまで混ぜる。そして、最後に海老を上に並べて蓋をし、火力は弱火に落とす。
ちなみに、米はイタリア産の寿司用と書いてあった日本米を買った。というのも、このレシピが、日本米を使ったものだったから、他の種類だと思い通りに仕上がらない可能性が高いと思ったからだ。
ヴィクターの話だと、ベルリン市内には日本食品が揃うアジアンスーパーも数多く、日系のスーパーもあるとのことなので、実際に住み始めたらそういったところで和食の材料も入手出来そうだ。それに恐らく、このあたりの情報は、蓮美ちゃんが全部網羅していることだろう。
お鍋の様子を見ながら、小鍋で茹で卵を作りつつ、先に千切りにしておいた人参でキャロット・ラペの準備をする。
千切り人参をガラスのボウルに入れて、オリーブオイル、白ワインビネガーを振りかけて混ぜながら、蜂蜜と塩、粒マスタードを少しずつ足し調整して、最後にクルミとレーズンを加えたら、冷蔵庫へ入れておく。
かなり大量になってしまったが、これも保存食みたいなもので一週間くらいは平気だから、多めに作って困ることはない。
キャロット・ラペは、実家に帰るとよく作るもののひとつだ。
人参が大嫌いだった弟が高校生の頃、私が気まぐれで作ったキャロット・ラペを食べて、初めて人参がウマい、と言ったのがきっかけで、我が家で作る人参サラダは、キャロット・ラペだけになってしまった。
私が実家に戻る時に、弟も予定を合わせて帰って来ることもあるし、父は酒のつまみに合うというから、実家に行くと必ずキャロット・ラペがメニューにあがる。
母は私が戻っている間、自分はキッチンに立たずにあれこれリビングから指示を飛ばすだけで済んで楽だと喜ぶので、私も進んで料理をしていたのだが、まさか、母の指導を受けてなんとなく覚えて来た料理が、こんなところで出番を迎えるとは。
母は調理師免許も持つくらいなので、料理の腕は確かだ。
帰国したら嫁入り修行という名目で、もう少し特訓してもらったほうがいいかもしれない。
私も一人暮らしを始めてからは、仲間内の持ち寄りパーティの時や、野外デートのお弁当くらいは作ったことはあったけれど、私は、自分のアパートに彼氏を泊めることはしなかったので、自分や家族以外の人の為に料理をするなんてことはなかった。アパートのキッチンは小さいし、冷蔵庫も小型なので、あれこれ食材を揃えて手の込んだ料理をするのは難しかった。
それでも、彼氏を招いてシンプルな食事を作ることぐらい出来たのに、どうして一度も実行しなかったのだろうか。
私はずっと、保身のことばかり考えていたのかもしれない。
でもそれは、心のどこかで、その相手に自分のテリトリーに入られたくないと感じていたからだろう。
夜にアパートの前まで送ってくれた彼氏が、中に入れてくれと懇願した途端、急に気持ちが冷めて行く自分に気がついた時は、我ながらどんだけ冷たい女なんだと情けなくなったものだけど……拓海は一度もそういうことはしなかった、唯一の男だったかもしれない。きっと、彼はプライドの高い男だから、招かれるまで自分から言い出さないタイプだったのだろう。
そう考えてみたら、あの晩、部屋を閉め出されたヴィクターを殆ど躊躇無く招き入れた自分は、どう考えてもそれまでの自分じゃかったんだ、と気がつく。
例えそれが、確かに危ないところを助けてくれた相手だったとしても、今までの自分を振り返ってみたら、知り合って間もない男性を自分のアパートに泊めるほどの勇気はなかったはずだ。
サビーナや蓮美ちゃんが言うように、ヴィクターがオオカミに豹変しないという保証は何処にもなかったわけだし、そのことは考えなかったと言うと嘘になる。彼がそういう人間じゃないと完全に信じ切っていたとも言えるけれど、万が一、の可能性もわかっていて、私は彼を招き入れていた。
ヴィクターと一緒にいる時の心地良さは、異性の友達としての信頼の上に成り立つものではなく、私自身が自分の空間を彼と共有することに違和感を持たないくらい、波長が合っていたからなのだ。
つまり、そんな早くから私は彼という人間に惹かれていたということなのだろう。
新たな発見に驚きながら、ふと蓮美ちゃんのことを思い出す。
彼女に連絡しないわけにはいかないだろう。
とは言っても、ここはWifiはまだないアパートだから、私が持っているiPadはネットに繋がらない。
後で、ヴィクターの携帯でフリーメールにログインさせてもらおう。
そこまで考えパエリア鍋の中の様子をチェックして、もう少しスープベースを追加する。
しばらくしてジリジリと音が聞こえて、焦げ目がついてきた感じだったので火を消した。
ここには時計がなく、腕時計はスーツケースに入れているので、今、何時くらいなのかわからない。
レザーソファーの側に置きっぱなしのスーツケースを開けて腕時計を出そうとしたら、玄関の扉の鍵の音がした。
帰って来た!
すぐにスーツケースから手を離し、考えるより早くキッチンから飛び出すと、玄関の扉が開きその向こうに彼の姿が見えた。
「ヴィクター!」
思わず声をあげて駆け寄ると、入り口に大きな箱を置いた彼がびっくりしたように目を見開き、駆け寄った私をぎゅっと抱きしめた。
お日様のような笑顔で私の顔を覗きこむ。
「ただいま、リオ」
耳元でそう囁いた彼の声に嬉しくて、何か言おうと視線をあげ、その彼の背後の思わぬ視線と目が合い、瞬時に開いた口が塞がらず硬直した。
ニヤニヤと意地の悪そうな微笑みを浮かべたクリスティアン。
すっかり頭から抜け落ちていたけれど、車を出してくれた彼が、アパートに来ないはずがない。
「なに!?クリスティアン、どいてっ、でか過ぎて、何も見えない!」
更にその背後から聞き覚えのある声が聞こえたかと思うと、押しのけられたクリスティアンの後ろから興奮気味のアナマリーの姿が現れた。
「あ……」
動揺と驚きで言葉も出ず、同じく呆然としているアナマリーと目を合わせたまま、固まる。
しばし、全員沈黙。
何をどう言えばいいのか分らなくてパニックになり、恥ずかしさと照れで頬が熱くなっていく感覚だけははっきりとわかった。
入り口で立ち尽くす私達4人を、アパートの住居人が興味深げに眺めながら通り過ぎて行く。
やがて、まだ私を抱きしめたままだったヴィクターが、私の左手を取ると二人の目の前に出した。
二人の視線が、私の左手に輝くルビーの指輪に落ちる。
「これ……エンゲージ・リング?!」
驚嘆の声を上げたアナマリー。
「トロさが代名詞のヴィクターが、ここに来てついに本領発揮したってわけ?」
皮肉っぽくそう言ったクリスティアンが、長い手を伸ばして扉を思い切り全開にすると、小脇に抱えていた大きな箱をドン、と乱暴にフロアに置き、アナマリーを振り返った。
「さぁ、お邪魔させてもらおうじゃないか。なんか、いい匂いもするし、メシ時といえばそんな時間だろ。アナマリー、入れよ」
「えっ、あっ、でも」
慌てるアナマリーが追い立てられるように中に入り、クリスティアンは遠慮もなくさっさと靴を脱いでホールを歩いて行く。困ったようにちらりとこちらを振り返ったアナマリーに、ヴィクターが笑顔で頷くと、彼女もブーツを脱いでクリスティアン同様、キッチンのほうへと小走りで行く。
ヴィクターは扉を閉めながら可笑しそうに微笑んだ。
「こっちに戻る途中にアナマリーに電話したら、自分も合流するって言い出したから、そのままピックアップして来たんだ」
「そうだったんだ。でも、二人一緒に来てくれたの、良かったかも」
こんな恥ずかしさや照れくささを二回に分けて味わうより、まとめて一回で済ませられるほうが、昨日から過大な負荷がかかり続けている心臓にはいいだろう。
扉の鍵を締めると、少しずつ驚きも収まり落ち着きが戻って来る。
キッチンへ行くと、そこに立っていた二人が私達を振り返った。
カウンターの上にあった、私達が使っていたマグカップ二つを手に持ったクリスティアンが嫌みっぽいセリフを吐く。
「なんだ、この、甘ったるい新婚家庭みたいな雰囲気は!一晩でどこまで飛躍すれば気が済むんだ」
「何がどうしてこうなったのか、私も全部知りたい」
アナマリーも辺りを見渡しながら独り言のように言う。
交互に投げかけられる言葉に苦笑して、私達は顔を見合わせた。
この二人がヴィクターの側に居てくれたからこそ、こうして私達の気持ちが通じ合ったのだ。
それを思えば、彼等には感謝してもしきれないほど恩があると言っても大袈裟ではないだろう。
「とりあえず、食事する?人数分、足りるし?」
そう言って隣のヴィクターを見上げると、彼も楽しそうに微笑んで頷いた。
そして、このリビングとキッチンの兼用ルームにあるソファーベッドを、あのシャンデリアのある部屋へ移動させると言って、扉を全開にしてストッパーをかけた。
このモスグリーンのソファベッドは、分厚く大型でどっしりした形なので、かなりの重量なのは間違いなかった。
1人であんな大きなものを移動出来ないだろうと思って手伝おうとしたら、平気だと言う。どうするのかと思ってたら、ソファベッドを横倒しにして、柔らかい背面をフロアにスライドさせるように器用に押して動かし始めた。
なるほど、そうすれば、重いものを抱え上げることなく動かせる。
扉の幅よりもソファーベッドの幅のほうが大きいので、大丈夫なのだろうかと見ていたら、通過する時に少しずつ角度や向きを変えたり調整して、難なく通り抜けてホールのほうへと移動していく。
1人であんな大きなものを移動させる勇ましい姿につい見とれていたが、丁度、乾燥機に入れていたものも乾いた頃だったのを思い出し、バスルームへ行ってみる。
ENDランプが点灯していたので、乾燥機を開けると、温かい空気と、爽やかな洗い立ての香りが漏れて来た。
タオル類を畳みバスルームのラックに片付けて、ソファーベッド用のカバー類を取り出し、シャンデリアのある部屋へ向かう。
中を覗くと、壁際にソファーベッドを移動させたヴィクターが、座席部分を持ち上げて中からブランケット類を取り出し、ベッドの形へ組み立て直しているところだった。
「これ、俺がたまに祖母の家に行った時に使ってたやつ」
「ふうん、じゃぁ、懐かしいものだね」
彼が使っていたソファベッドなんだと思うと、祖母に会いに来た彼がここで眠る姿を想像して、自然と微笑みが溢れる。
祖母の作る美味しい食事をお腹いっぱい食べて、たくさん話をして、心身ともに満たされた夕べを過ごした彼が、心地よい眠りに落ちた場所。
ヴィクターが私が持っていたベットとブランケットのカバーを取ったので、私はピローのほうにカバーをかけ始める。
「これはあくまで一時的に使うものだから、新しいベッド、準備しとく」
「うん、そうだね」
ピローを並べながら答えていると、ブランケットを掛けたソファーベッドに彼がごろりとひっくり返り、並べたピローが揺れた。下から私を見上げる彼の目がゆらりと煌めいて、ドキンと胸が弾む。
見慣れていたと思っていたベビーフェイスも、友達として見るのと愛する人として見るのでは全然違う。どこか幼さを感じる少年ぽい顔立ちなのに、私に向けるその眼差しは以前と違って男らしい色気の漂う魅力を秘めていて、この相反する魅力の組み合わせが持つ破壊力はただものじゃない。
甘える様な穏やかな目で私を見つめて、両手を大きく広げたヴィクター。
私は最後のピローを片隅に置くと、ソファーベッドに膝を付き、彼の両肩に手を伸ばした。
彼の両腕がゆっくりと私の体に絡み付き、全身がその温かさに包まれると、私ははち切れそうな幸福感で大きく息をつく。
しばらく黙って頬を寄せ合いお互いの呼吸音に聞き入る。
私の背を抱いていた彼の手がセーターの下に滑り込んで、温かい手を素肌に感じた。
顔を上げると目が合って、引き寄せられるようにキスを交わす。
「リオ」
耳元でヴィクターが小声で囁いた。
「日が暮れるまで、到底待てないんだ」
思わず身を起こして彼を見下ろすと、潤んだ彼の青い目がじっと私を見つめている。
恥ずかしさに耳が熱くなる気がしたけれど、戸惑うこともなく私は微笑んで頷いた。
少しだけ照れたように目を細めて微笑むヴィクターが、私の着ている黒いセーターの裾に手を伸ばし、ゆっくりとまくり上げていく。ミントグリーンのサテン・スリップの上を滑る彼の温かい手の平の感覚に、心拍数が上がり始め体が熱くなる気がした。
私の身を傍らに横たえた彼が、私の手を取って自分のシャツに導く。
ドキドキしながらシャツのボタンを外していく間、彼はずっと私の背を抱きしめていた。
すべてのボタンを外し終え、はだけたシャツの合間から彼の逞しい胸が現れてますます心拍数があがってくる。
「……なんか、ドキドキして、頭がどうかなりそう」
我慢出来ずにそう呟くと、ヴィクターがクスッと笑って頷いた。
「俺も」
彼の温かい手が肩に触れた。
「神に感謝してる」
そう呟いて、澄んだ青い目を煌めかせて優しく微笑むヴィクター。
「こんなに美しい君を俺に与えてくれたことを」
その言葉に息が止まる想いで彼を見つめる。
私も神様に心から感謝している。
これほど愛する相手に巡り会わせてくれたことを。
そっと両手をからめた彼が身を屈めて、優しくキスをする。
彼の熱い唇がゆっくりと首筋を滑り落ちて行く感覚に全身の鳥肌が立つ。
その感覚はまるで炎が肌の上を走っているかのような余韻を残すものだった。
彼の唇が捕らえたランジェリーストラップが、するりと肩を滑り落ちた時、突然、携帯の呼び出し音が鳴り響き、はっとして顔を見合わせる。
聞き覚えのある、ドイツ語のヘビメタ音楽の呼び出し音だ。
「もしかして、クリスティアン?」
今朝、車の中で聞いた音楽だったと思い出した。
静かだった空間に、激しい重低音と耳をつんざく悲鳴じみたボーカルの声が響き渡る。
ヴィクターは頭を抱え俯いたまましばらく黙っていたが、やがて、ハァ、と溜め息をついてサイドテーブルに置いてあった携帯に手を伸ばし、低い、不機嫌な声で電話に出た。
ドイツ語で会話をしているので、何を話しているのかはよくわからないけれど、しばらく何やら激しい言い合いをして、それから淡々とした会話の後、ようやく通話が終る。
携帯をサイドテーブルに置いたヴィクターが、仰向けにひっくり返って苦笑いした。
「……今から、出なきゃいけなくなった」
「え?」
「明日は予定があるから、荷物運びに車を出せるのは今日だけだって言うんだ。これから、カフェのオーナーに車を返しに行って、そこでクリスティアンと合流して、荷物をこっちへ移動させることになった」
「そうなんだ、でも、今日、手伝ってくれるんならよかった」
「俺は今、全然、あいつに会いたい気分じゃないんだけどね」
ヴィクターはそう言って、名残惜しそうに私の髪を撫でる。
私は笑いながら彼のシャツに手を伸ばし、さっき外したばかりのボタンを留め始めた。
「出ている間に、パエリア、作っておくから」
そう言うと、ヴィクターは笑いながら頷いて、私の頭にセーターを被せた。
頭を出すと、乱れた髪を丁寧に整えてくれる。その顔が随分と真剣な真顔だったので、つい頬が緩んでしまう。
グレーのレザージャケットを羽織り、携帯を内ポケットに入れたヴィクターの後を追って、玄関のほうへ行く。
彼の後ろを歩きながら、今のこの瞬間にものすごくドキドキと胸がときめいた。
愛する人を送り出すなんて、人生初の経験だ。
扉を開いて振り返ったヴィクターが、私を見ると照れたように微笑んで、キスをした。
「Te Amo」
私も彼の首に両腕を回してぎゅっと抱きしめた。
「Te Amo」
嬉しそうに目を細めて頷いたヴィクター。
ほんのひと時、離れるだけなのに、もう待てなくて今すぐ会いたくなるこの気持ち。
3日後に帰国して、次に会えるまでのおよそ1ヶ月半、耐えられるのだろうか。
そんなことを考えながら、表への扉を開けて出て行く彼の背中を見送った。
キッチンへ行くと塩抜きしておいたアサリをチェックして、パエリアの準備に取りかかる。
先にヴィクターの携帯でお気に入りレシピを確認して、手順はメモに書いていたので、それに従って作業を進めて行くだけだ。
野菜類を先に切り、続いてイカ、鶏もも肉をカットして、材料を揃えたら、大きなパエリア鍋を熱してオリーブオイルを注ぎ入れる。
熱気を感じて来たら、ガーリック、アサリとイカ、鶏もも肉を投入し、アサリが開いたら、鍋から取り出す。
その鍋へ今度は野菜類を入れ軽く炒め、続いて米を追加して全体を炒めたら、最初のアサリ、イカと鶏もも肉を鍋に戻し、サフランとスープベースを混ぜたものを入れ全体が馴染むまで混ぜる。そして、最後に海老を上に並べて蓋をし、火力は弱火に落とす。
ちなみに、米はイタリア産の寿司用と書いてあった日本米を買った。というのも、このレシピが、日本米を使ったものだったから、他の種類だと思い通りに仕上がらない可能性が高いと思ったからだ。
ヴィクターの話だと、ベルリン市内には日本食品が揃うアジアンスーパーも数多く、日系のスーパーもあるとのことなので、実際に住み始めたらそういったところで和食の材料も入手出来そうだ。それに恐らく、このあたりの情報は、蓮美ちゃんが全部網羅していることだろう。
お鍋の様子を見ながら、小鍋で茹で卵を作りつつ、先に千切りにしておいた人参でキャロット・ラペの準備をする。
千切り人参をガラスのボウルに入れて、オリーブオイル、白ワインビネガーを振りかけて混ぜながら、蜂蜜と塩、粒マスタードを少しずつ足し調整して、最後にクルミとレーズンを加えたら、冷蔵庫へ入れておく。
かなり大量になってしまったが、これも保存食みたいなもので一週間くらいは平気だから、多めに作って困ることはない。
キャロット・ラペは、実家に帰るとよく作るもののひとつだ。
人参が大嫌いだった弟が高校生の頃、私が気まぐれで作ったキャロット・ラペを食べて、初めて人参がウマい、と言ったのがきっかけで、我が家で作る人参サラダは、キャロット・ラペだけになってしまった。
私が実家に戻る時に、弟も予定を合わせて帰って来ることもあるし、父は酒のつまみに合うというから、実家に行くと必ずキャロット・ラペがメニューにあがる。
母は私が戻っている間、自分はキッチンに立たずにあれこれリビングから指示を飛ばすだけで済んで楽だと喜ぶので、私も進んで料理をしていたのだが、まさか、母の指導を受けてなんとなく覚えて来た料理が、こんなところで出番を迎えるとは。
母は調理師免許も持つくらいなので、料理の腕は確かだ。
帰国したら嫁入り修行という名目で、もう少し特訓してもらったほうがいいかもしれない。
私も一人暮らしを始めてからは、仲間内の持ち寄りパーティの時や、野外デートのお弁当くらいは作ったことはあったけれど、私は、自分のアパートに彼氏を泊めることはしなかったので、自分や家族以外の人の為に料理をするなんてことはなかった。アパートのキッチンは小さいし、冷蔵庫も小型なので、あれこれ食材を揃えて手の込んだ料理をするのは難しかった。
それでも、彼氏を招いてシンプルな食事を作ることぐらい出来たのに、どうして一度も実行しなかったのだろうか。
私はずっと、保身のことばかり考えていたのかもしれない。
でもそれは、心のどこかで、その相手に自分のテリトリーに入られたくないと感じていたからだろう。
夜にアパートの前まで送ってくれた彼氏が、中に入れてくれと懇願した途端、急に気持ちが冷めて行く自分に気がついた時は、我ながらどんだけ冷たい女なんだと情けなくなったものだけど……拓海は一度もそういうことはしなかった、唯一の男だったかもしれない。きっと、彼はプライドの高い男だから、招かれるまで自分から言い出さないタイプだったのだろう。
そう考えてみたら、あの晩、部屋を閉め出されたヴィクターを殆ど躊躇無く招き入れた自分は、どう考えてもそれまでの自分じゃかったんだ、と気がつく。
例えそれが、確かに危ないところを助けてくれた相手だったとしても、今までの自分を振り返ってみたら、知り合って間もない男性を自分のアパートに泊めるほどの勇気はなかったはずだ。
サビーナや蓮美ちゃんが言うように、ヴィクターがオオカミに豹変しないという保証は何処にもなかったわけだし、そのことは考えなかったと言うと嘘になる。彼がそういう人間じゃないと完全に信じ切っていたとも言えるけれど、万が一、の可能性もわかっていて、私は彼を招き入れていた。
ヴィクターと一緒にいる時の心地良さは、異性の友達としての信頼の上に成り立つものではなく、私自身が自分の空間を彼と共有することに違和感を持たないくらい、波長が合っていたからなのだ。
つまり、そんな早くから私は彼という人間に惹かれていたということなのだろう。
新たな発見に驚きながら、ふと蓮美ちゃんのことを思い出す。
彼女に連絡しないわけにはいかないだろう。
とは言っても、ここはWifiはまだないアパートだから、私が持っているiPadはネットに繋がらない。
後で、ヴィクターの携帯でフリーメールにログインさせてもらおう。
そこまで考えパエリア鍋の中の様子をチェックして、もう少しスープベースを追加する。
しばらくしてジリジリと音が聞こえて、焦げ目がついてきた感じだったので火を消した。
ここには時計がなく、腕時計はスーツケースに入れているので、今、何時くらいなのかわからない。
レザーソファーの側に置きっぱなしのスーツケースを開けて腕時計を出そうとしたら、玄関の扉の鍵の音がした。
帰って来た!
すぐにスーツケースから手を離し、考えるより早くキッチンから飛び出すと、玄関の扉が開きその向こうに彼の姿が見えた。
「ヴィクター!」
思わず声をあげて駆け寄ると、入り口に大きな箱を置いた彼がびっくりしたように目を見開き、駆け寄った私をぎゅっと抱きしめた。
お日様のような笑顔で私の顔を覗きこむ。
「ただいま、リオ」
耳元でそう囁いた彼の声に嬉しくて、何か言おうと視線をあげ、その彼の背後の思わぬ視線と目が合い、瞬時に開いた口が塞がらず硬直した。
ニヤニヤと意地の悪そうな微笑みを浮かべたクリスティアン。
すっかり頭から抜け落ちていたけれど、車を出してくれた彼が、アパートに来ないはずがない。
「なに!?クリスティアン、どいてっ、でか過ぎて、何も見えない!」
更にその背後から聞き覚えのある声が聞こえたかと思うと、押しのけられたクリスティアンの後ろから興奮気味のアナマリーの姿が現れた。
「あ……」
動揺と驚きで言葉も出ず、同じく呆然としているアナマリーと目を合わせたまま、固まる。
しばし、全員沈黙。
何をどう言えばいいのか分らなくてパニックになり、恥ずかしさと照れで頬が熱くなっていく感覚だけははっきりとわかった。
入り口で立ち尽くす私達4人を、アパートの住居人が興味深げに眺めながら通り過ぎて行く。
やがて、まだ私を抱きしめたままだったヴィクターが、私の左手を取ると二人の目の前に出した。
二人の視線が、私の左手に輝くルビーの指輪に落ちる。
「これ……エンゲージ・リング?!」
驚嘆の声を上げたアナマリー。
「トロさが代名詞のヴィクターが、ここに来てついに本領発揮したってわけ?」
皮肉っぽくそう言ったクリスティアンが、長い手を伸ばして扉を思い切り全開にすると、小脇に抱えていた大きな箱をドン、と乱暴にフロアに置き、アナマリーを振り返った。
「さぁ、お邪魔させてもらおうじゃないか。なんか、いい匂いもするし、メシ時といえばそんな時間だろ。アナマリー、入れよ」
「えっ、あっ、でも」
慌てるアナマリーが追い立てられるように中に入り、クリスティアンは遠慮もなくさっさと靴を脱いでホールを歩いて行く。困ったようにちらりとこちらを振り返ったアナマリーに、ヴィクターが笑顔で頷くと、彼女もブーツを脱いでクリスティアン同様、キッチンのほうへと小走りで行く。
ヴィクターは扉を閉めながら可笑しそうに微笑んだ。
「こっちに戻る途中にアナマリーに電話したら、自分も合流するって言い出したから、そのままピックアップして来たんだ」
「そうだったんだ。でも、二人一緒に来てくれたの、良かったかも」
こんな恥ずかしさや照れくささを二回に分けて味わうより、まとめて一回で済ませられるほうが、昨日から過大な負荷がかかり続けている心臓にはいいだろう。
扉の鍵を締めると、少しずつ驚きも収まり落ち着きが戻って来る。
キッチンへ行くと、そこに立っていた二人が私達を振り返った。
カウンターの上にあった、私達が使っていたマグカップ二つを手に持ったクリスティアンが嫌みっぽいセリフを吐く。
「なんだ、この、甘ったるい新婚家庭みたいな雰囲気は!一晩でどこまで飛躍すれば気が済むんだ」
「何がどうしてこうなったのか、私も全部知りたい」
アナマリーも辺りを見渡しながら独り言のように言う。
交互に投げかけられる言葉に苦笑して、私達は顔を見合わせた。
この二人がヴィクターの側に居てくれたからこそ、こうして私達の気持ちが通じ合ったのだ。
それを思えば、彼等には感謝してもしきれないほど恩があると言っても大袈裟ではないだろう。
「とりあえず、食事する?人数分、足りるし?」
そう言って隣のヴィクターを見上げると、彼も楽しそうに微笑んで頷いた。
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