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最後の一週間

ペアが揃う時

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帰りにスーパーに寄って、夜に何を食べるかメニューを考えてみた。
勿論、もう、明朝は空港で何か食べるつもりだから、今晩は冷蔵庫のものを食べ切って、どうしても余ったら捨てていくことになる。
冷蔵庫に残っていたものを思い出してみる。
中くらいのタマネギ1個、大きな赤パプリカが半分、ズッキーニが確か3分の2くらい。
一番簡単な野菜の消費方法は、野菜を全部切って、スープってやつだ。
この際、全てをお鍋に投げ込んでスープにしようかと思いつつ、精肉売り場を通りかかる。
種類豊富なハムやサラミがずらりと並ぶ冷蔵棚に沿って行くと、イベリコ豚の生ハムの薄切りフレッシュパックが目に付き、それを手に取ってみた。
脳裏に、六本木で食べたボカディージョが思い浮かぶ。
バゲットに切り込みを入れてそこにオリーブオイルを塗って、残っている野菜を軽く炒めて塩胡椒したものと、この生ハムを挟む。そしてアルミホイルで包み、オーブンで温めたら、ボカディージョっぽくなりそうだ。
残った分は、明日の朝、空港に持って行って、飲み物だけ買えばヘルシーな朝食になる。
今晩は、これに決めた。
生ハムと、炒めた野菜のボカディージョ!
私はスーパーでそのイベリコ豚の生ハムと炭酸水のボトルを一本、そして近くのベーカリーでバゲットを一本買って帰宅した。
帰宅するとすぐに、まず、ルームウエアに着替え、リビングのフロアに座り込んで最後の荷造りに取りかかった。
窓は半分ほど開けてはいるが、作業の人がたまに上がって来ているようなので、カーテンは閉めている。
もう一度スーツケースの中身を移動させたり入れ替えたりして、今朝畳んだ洗濯済みの衣類をどうにか入れようと試行錯誤を繰り返す。なかなか全てが収まらず、衣類の畳み方を変えて、くるくる巻いてみたりと、ありとあらゆる方法を駆使して、なんとかすべてを入れ鍵をかけることに成功した。
その後は、機内持ち込み用のバッグと紙袋の中身も整理して、明日着るつもりの洋服をソファーの上に置くと、やっと一息ついた。
時間はもう、夜の7時半になっていて、この荷造りにかなりの時間を費やした事に驚く。
なんだか疲れてしまい、すぐに夕食の準備をする気分にもなれず、キッチンでお湯を沸かしてカモミールティを作ると、ティーバッグをマグカップに入れたままベッドルームへ向かった。
「あぁ、疲れた……」
思わず、独り言を口にしながら、ベッドに寝転がり、サイドテーブルのランプを付けると、そこに置いてあったiPadを手に取る。
メールアイコンにタッチしようとして、気が変わって止める。
今、変なメールとか入って来たら眠れなくなるかもしれない。
今晩は、メールチェックは止めておこう。
私はフロアに置いていたバッグからカメラを取り出すと、iPadとUSBケーブルで繋いで写真をインポートし始めた。全ての写真のインポートが終ると、ケーブルを抜いて、先にYouTubeで何かBGMを探す。
過去に再生したリストを見ていて、先週の金曜日のパーティの時に聴いた、Enrique Iglesias のBailamos を見つけて、それを選ぶ。
リズミカルなテンポとギターの前奏に続き、Enriqueの心を振るわせる様な歌声が流れ始めると、私はインポートした写真を眺め始めた。

Esta noche bailamos
Te doy toda mi vida...

今晩は踊るんだ
俺の人生は君の手に委ねよう
さぁダンスフロアに出よう
もう俺達を阻むものは存在しない


誰にも邪魔されずに
時の流れを止めるんだ
もう俺達を止めるものは存在しない

Bailamos,
リズムに身をまかせるんだ
永遠にこのまま共に生きていこう
Bailamos

今夜俺のすべては君のもの
夢じゃない 現実にしてみせる
さぁ 今この瞬間に
君にどうしても伝えたいことがある
いつまでも君の側にいるということを
夜通し踊り続けるんだ
その先の眩しい幸せを掴んでみせる


スペイン語の所がどういう意味か分らないけれど、よく歌詞の意味を自分なりに日本語で考えてみたら、ものすごく情熱的な内容だった。
あの晩、皆で熱狂して歌い続け、踊り続けた曲のひとつ。あんなに楽しいパーティだったのに、写真を撮ることを考えつかず、カメラを持って行くことさえ忘れていた。取りに行こうと思えば、1分で取って来れたのに、なぜ、思いつかなかったのか。
多分、今まで参加してきたパーティの中で、一番、羽目を外して歌って踊って飲んだパーティだったのに。
今頃になって悔やんでも後の祭りだ。
呼び鈴がなったような気がしたが、このウイークリーアパートに来る人は誰もいないので、多分、他のアパートの呼び鈴に違いないと思い、気にする事もなく写真を眺める。ドン、ドンとドアが叩かれる音も聞こえたので、一度、音楽を消して耳を澄ましてみた。
バタン、と他のアパートのドアが閉まる音が聞こえたので、やっぱり他の部屋の音だったらしい。
時計を見ると、もう8時半になっていた。そろそろ、食べた方がいいかもしれないと思い、ベッドから起き上がって廊下へ出ると、キッチンへ向かった。
アルミホイルを棚から下し、テーブルに置いていたバゲットを手に取りながら、冷蔵庫を開け、中の野菜を取り出そうとした時、ガタン、と何か大きな音が聞こえ、思わず冷蔵庫を閉めて廊下のほうを見た。
何かが倒れた様な、大きな音が、ものすごく近くで聞こえた気がする。
薄暗い窓の外を見てみるが、風が強い様子ではなかった。
変な不安に襲われながら、恐る恐るキッチンを出て、足音を立てずに廊下をそろそろと歩く。閉めているリビングのドアの向こうで、カタン、という窓が閉まる音も聞こえ、心臓が縮み上がる。
ここは、4階だし、まだ、夜の8時半。
強盗が入るような場所でも、時間でもない。
きっと、開け放していた窓に風が吹き付けて、勝手に閉まったんだろう。
血の気が引く様な緊張で、手に持っていたバゲットを握りしめつつ、私は思い切って勢い良くドアを開けた。
真っ暗なリビングのど真ん中に、黒い人影。
驚きで悲鳴をあげ、反射的に手に持っていたバゲットを思い切り投げつけ、逃げ出そうと背をむけた時、名前を呼ばれた気がしてはっと足を止めた。
怖々もう一度後ろを振り返ってみると、私が投げつけたバゲットをコーヒーテーブルに置きながら、こちらに歩いて来るその影が見える。窓から差し込む灯りで少しだけその顔が見えて、私はあっと息を飲んだ。
「な、何、してるの、こんなところで……」
私の目の前にまで来て足を止めた、ヴィクター。
私は呆然と彼を見上げ、言葉を失う。
ブラックのシャツに、デニム姿だから、暗い部屋で真っ黒な影に見えたらしい。
「呼び鈴鳴らしたけど、出て来ないから、外の工事用足場を伝って入ったんだ」
「えっ?」
驚いて窓の方を見て、もう一度ヴィクターを見ると、彼はゆっくりと瞬きして、まっすぐに私の目を見た。
その視線に胸がざわめいて、思わず一歩、後ろへ後退し、妙な緊張で小刻みに震えている自分の手をぎゅうと握りしめた。
「……それで……なにか」
うまく言葉が出て来なくて、つっかえながらそう聞くと、ヴィクターはシャツの胸ポケットに手を入れて、ゆっくりと何かを取り出した。
それは、私が今朝作った折り鶴。
これがどうしたんだろうと思って、その折り鶴をよく見てみると、首のところに何かキラキラ光るものが揺れていて、すぐにそれが、私が無くした片方のシルバーチェーンのピアスだと気がつく。
「あ、これ、見つけて、届けに来てくれたんだ!」
びっくりして聞くと、ヴィクターがクスッと笑いながら、チェーンをぶらさげた折り鶴を見つめた。
「今日の昼過ぎ、この折り鶴を受け取って、シャツの胸ポケットに入れて仕事に行ったんだ。ポケットから折り鶴を取り出してみたら、ピアスがひっかかってた」
「え、そうなの?どうしてだろう……」
変だなと思って首を傾げると、ヴィクターは折り鶴を自分の右手の平に乗せながら私を見た。
「リオ、あの晩、階段から落ちただろ?あの時、ピアスが外れてこのポケットの中に滑り落ちたんだ。洗濯したりしてもそのままずっと、入っていたらしい」
「あぁ、あの時に……」
酔っぱらっていた私が、落とした鍵を掴もうとして階段を踏み外し、危うく落下するところをヴィクターが抱きとめてくれた。あの時の衝撃でピアスが片方はずれて、彼のこのシャツの胸ポケットに滑り落ちたということらしい。どうりで、パーティのあった部屋を探しても見つからなかった訳だ。
「見つかってよかった。有り難う」
ピアスに手を伸ばそうとしたら、ヴィクターは開いていた右手を閉じて、その手のひらにあった折り鶴を隠してしまった。どうしたんだと思って顔を挙げると、今度は目の前にブーケが差し出されてまた驚く。
ヴィクターが、私に花束を?
暗闇でも見えるような、深い赤色の花々が、大きな緑の葉にくるまれるように束ねられた美しいブーケ。
次から次へと驚くことが続いて、その急展開に、頭が付いて行かない。
思考は完全にフリーズしているのに、気がつけばそのブーケを両手で抱きしめていた。
甘く優しい香りのする花束を抱えて、ぼんやりと目の前のヴィクターを見る。
彼はあたりを見渡して、テーブルの上に置いてあった、もう片方のシルバーチェーンのピアスを見つけると、それを手に取り、私を振り返った。
ヴィクターがこちらに手を伸ばすのが見える。
その手が、私の髪を後ろに流し、そっと左の耳に触れた。
温かい彼の指の感触の後、耳がひんやりとして、そのピアスがかけられたことに気づく。そして、彼は、右手を開いて、折り鶴の首に掛かっていたピアスを取ると、私の右の耳に手を伸ばす。そしてまた、ひんやりとした感触と、揺れるピアスの重みを感じた。
ヴィクターがその温かい両手で私の頬に触れ、その手はゆっくりと首すじを滑り、左右の肩に置かれる。
雷に打たれたような衝撃が稲妻のように全身を通過し、体がびくっと震えた。
自分の心臓の鼓動が、はっきりと聞こえるくらい激しく響いている。
経験したことのないような緊張で、もう立っているのさえしんどい。
平静を装うことなんて到底無理だ。
高層タワーのエレベーターが急上昇するように、感情が急速に昂っていく。
私は、勝手に目から溢れてくる涙を呪いながら、黙ってヴィクターを見上げた。
私を見下ろしている、柔らかな微笑みを浮かべた彼と目が合う。その目はとても強く輝いていて、私はその光に目が眩みそうになった。
私は、知っている。
私を不安定にする、その原因。
それは、彼だ。
「リオ」
静かで優しい声で呼ばれ、私は瞬きをした。
頬を滑り落ちる熱い涙の感触がする。
ヴィクターの両手が私の肩から背中のほうへ滑り落ちて行く。
温かいその手に促されるままに彼に身を寄せ、静かにその腕の中に抱きしめられた。
その瞬間、それまで強ばっていた全身から緊張が解き放たれて、私は大きく深呼吸をして目を閉じる。私の腕の中にある甘いブーケの香りと、私の全身を包み込む彼の優しい温かさ。
永遠にこのままこの温もりに抱かれていたい。
私はブーケを抱いていた手を解き、両腕を彼の背中に回しぎゅっと抱きしめた。
彼の背中がこれほど大きく逞しかったなんて、全く知らなかった。
指先に感じる、初めて触れた彼の背中はとても温かい。
彼の体温が私の指先へ流れ込んで来る。
ヴィクターの腕に力が籠められるのを感じて、今まで経験した事のない幸福感に満たされていく。
「君にどうしても伝えたいことがあるんだ」
耳に聞こえて来た、彼の声は少しだけ掠れていた。
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