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最初の一週間
転がる傘
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今朝はこのアパート周辺を散策して、良さそうなカフェで朝食を取ってみよう。
それから、路線図を調べて、まずは森鴎外記念館を訪ねてみよう。
私は、テーブルに置いてあったガイドブックとペンをバッグに入れ、キッチンのコーヒーマシンの側に置いてあった折畳式の傘を手に取って、窓の外を見た。
どうだろう?
昨晩はものすごい豪雨だったけれど、今日は大丈夫かな?
少し悩んだ挙げ句、結局それもバッグに入れた。
バッグがその分また重くなったけれど、ずぶぬれになる危険を回避出来ると思えばなんてことはない。
玄関のドアを開け、静まりかえった階段ホールに出てドアを閉め、鍵をかける。注意深く、サブキーとメインキーの両方を締鍵してその音を確認し、そっと鍵を抜いた。
その時、上階から誰かが降りて来る足音がした。この音は、ヒールの音だから女性だろう。
今は8時15分。
平日の今日は、丁度、朝の通勤や通学の時間帯だ。
急いでいるのか、駆け下りて来る足音がホールに響く。
にわかに走る緊張。
急いでいない私はその人に先に降りてもらおうと思い、動かずにそのままホールに立つ。
やがて、OLらしい格好をした女性が下りて来て、ちらりと私を見るとにっこりと「モーゲン」と声をかけて通り過ぎた。私も、咄嗟に「ハロー」と笑顔で返して、ドキドキしながら彼女が階段を駆け下りて行く後ろ姿を見送る。
一瞬の緊張から解放されて、小さく溜め息をついた。
私は旅行で今、ベルリンに来ている。
ここに住んでいる友人の手助けもあって、彼女のアパートから割と近いところにあるウィークリーアパートを二週間手配してもらった。一昨日着いたばかりで、まだまだ全然土地感もないから、近所を歩くのも地図片手の状態。
東京から離れたところでこれからのことを考えるつもりで、勢いでやってきたものの、勿論、ドイツ語なんて全くわからないし、日常会話が大丈夫な程度の英語で来ているので、1人で外に出るのはかなりの緊張と勇気を伴う。
でも、これこそが、非日常の世界だ。
新しいことを経験すると、きっと新しい発見が生まれて、私の未来も色彩が変わって行くだろう。
まだ手に持っていた鍵をバッグに入れて、私も階段を降り始めた。
つるつるしたダークブラウンの木製手すりに手を添えながら下りて行く。
私の滞在しているウィークリーアパートは4階だが、ドイツでは1階を0階と呼ぶので、ドイツ式に呼べば3階ということらしい。
下の階へと続く折り返しスペースで方向転換をして、真下の2階の踊り場に目を向けながら階段を下りようとし、私の心臓がドキッと跳ねた。
とんでもないものが視界に入ったからだ。
人間の足。
2階の踊り場に、人が横たわっているのが見えた。
ジーンズに、カマキリのような緑のシャツの男性。頭のところに、開いた傘が転がっている。
し……死んでる?!
一気に血の気が引き、恐怖で固まる私。
どうしたらいい?
救急車?
でも、どうやって呼ぶの?!
日本の119番とは番号も違うだろうし、大体、電話も持ってない!
なんで、ドイツに来るなりこんな場面に遭遇してしまうのだ!
心臓がドキドキして、ますますパニックになっていく。
その時ふと、さっき階段を降りて行ったOLさんのことを思い出す。
彼女の足音は立ち止まることもなく、階下へと下りて行った。
つまり、この踊り場を通過していったということだ。
ということは、死体では、ない?
呆然としていると、また上から誰かが下りて来る足音が聞こえた。
見上げると、今度は60代くらいのおじさんが、携帯を見ながら下りて来るのが見える。おじさんは私の視線に気がついたのか、携帯から顔をあげて軽く笑顔を見せ、また「モーゲン」とつぶやきながら私の隣を通り過ぎて行く。そのまま、転がっている人間を足で軽く跨いで、下のほうへ下りて行った。
まるで、何も見なかったように。
なんだ?
まるで驚いた様子もない。
これが、ドイツの「普通」なのだろうか。
この転がっている人が重病人だったら、とか思わないのだろうか。
でも……見たところ別に苦しんでいる様子ではないようだ。
どうやら死んではいないらしいし、重病人でもなさそうだと確信し、私はそろそろと階段を下りた。
ゆっくりと足音を立てないように踊り場のほうへ下りて、足下に転がっている人の横顔に目をやる。
顔色は普通で、どう見ても死んではいない。
肩が上下しているのが見えるので、呼吸しているのも、間違いないようだ。
もしかして、酔っぱらって帰宅して、そのままアパートの中に入らずここで寝込んでしまったということだろうか?
だとすると、他の皆のように、放置したまま通過していって平気だろう。
少しホッとして、そーっと音を立てずに転がっている人の足を跨ごうとしたとき、ガチャと音がして踊り場に面した扉の一つが開いた。振り返ると、チワワを腕に抱いたおばさんが扉の向こうに居て、彼女が声をあげた。
「まだ、寝てる!」
その瞬間、何かに足をすくわれて、あっと声をあげる間もなく私は倒れ込んだ。
「あいたっっ!」
フロアにドスンと思い切り音を立て、うつぶせに倒れた私。
鈍い音と同時に、腹部に強い鈍痛を感じて呻く。
あのおばさんの声に条件反射したのか、寝転がっていた人が急に動いて、私の足をすくう感じで転ばされたのだ。
丁度、この人の足をまたごうとしていた瞬間だったので、バランス悪く足をひっかけられたせいもあり、本当に文字通りすっ転んでしまった。
腹部の鈍痛を両手で押さえながら身を起こす。
この状態でまだ眠り続けているらしいその人を見ると、彼はうっすらと目を開けて私を見て、それからくるりと寝返りをうってまた眠り始めた。
茶色の玄関マットを枕代わりに手繰り寄せて。
土まみれの汚れた玄関マット!
普通、感触で気がつくだろうに!
ふわふわの枕と、トゲトゲした玄関マットの違いくらい。
呆然としていると、扉の向こうに立っているおばさんが私に声をかけた。
「大丈夫?」
どうやらそういうことをドイツ語で聞いているらしいと察し、私は小さく頷くと、急いで立ち上がった。おばさんは困ったように眉を潜め、目の前に転がる人を一瞥すると、バタン、と音を立てて扉を締めた。
私は軽くホコリをはたいて身だしなみを整え、もう一度寝転がっているその人を振り返った。
この様子だと、完全に、熟睡しているということだろう。
人をあれだけ見事に転ばせておいて、平気で眠り続けているんだから、よほど図太い神経の持ち主ということでなければ、完全に意識がないくらい泥酔しているとしか思えない。
朝っぱらから派手に転ばされる羽目になるとは思わなかったけど、せめて、階段から転げ落ちずに踊り場に倒れただけでもマシということにしよう。
この人、早く起きてアパートに戻らないと風邪引くだろうに。
まぁ、私には全然関係ないけれど。
そう思って階段を下りようとして、ふと傘が気になりもう一度振り返った。
まだ、水で濡れた黒い傘。
フロアに小さい水たまりも出来ている。
それは、こちらに背を向け玄関マットに頭を乗せて寝ているその人の頭のそばに転がっている。
あのままだと、次に寝返りをうった時にぶつかってしまうだろう。
私は一瞬考えたが、結局その傘を閉じて壁に立てかけた。
他に通過していく人達にとっても、踊り場を占領しているものは少ないほうがいいだろう。
インパクトの強いカマキリのように眩しい緑色のシャツに目をやる。
もう10月なのに、Tシャツ一枚で冷たいフロアに寝て、寒くはないのだろうか。
私なんて、薄手のジャケットを着ているのに!
この人は日常的にこんな失態を繰り返しているんだろうか。
さすが、ビール大国、ドイツ。
日本のサラリーマンも負けてはいないけれど。
東京の終電を思い出すと、急に可笑しくなってきて、1人で笑いながら階段を降りて行く。
突拍子もない事件のせいか、アパートを出た時の緊張が溶けて足取りも軽くなったのだった。
それから、路線図を調べて、まずは森鴎外記念館を訪ねてみよう。
私は、テーブルに置いてあったガイドブックとペンをバッグに入れ、キッチンのコーヒーマシンの側に置いてあった折畳式の傘を手に取って、窓の外を見た。
どうだろう?
昨晩はものすごい豪雨だったけれど、今日は大丈夫かな?
少し悩んだ挙げ句、結局それもバッグに入れた。
バッグがその分また重くなったけれど、ずぶぬれになる危険を回避出来ると思えばなんてことはない。
玄関のドアを開け、静まりかえった階段ホールに出てドアを閉め、鍵をかける。注意深く、サブキーとメインキーの両方を締鍵してその音を確認し、そっと鍵を抜いた。
その時、上階から誰かが降りて来る足音がした。この音は、ヒールの音だから女性だろう。
今は8時15分。
平日の今日は、丁度、朝の通勤や通学の時間帯だ。
急いでいるのか、駆け下りて来る足音がホールに響く。
にわかに走る緊張。
急いでいない私はその人に先に降りてもらおうと思い、動かずにそのままホールに立つ。
やがて、OLらしい格好をした女性が下りて来て、ちらりと私を見るとにっこりと「モーゲン」と声をかけて通り過ぎた。私も、咄嗟に「ハロー」と笑顔で返して、ドキドキしながら彼女が階段を駆け下りて行く後ろ姿を見送る。
一瞬の緊張から解放されて、小さく溜め息をついた。
私は旅行で今、ベルリンに来ている。
ここに住んでいる友人の手助けもあって、彼女のアパートから割と近いところにあるウィークリーアパートを二週間手配してもらった。一昨日着いたばかりで、まだまだ全然土地感もないから、近所を歩くのも地図片手の状態。
東京から離れたところでこれからのことを考えるつもりで、勢いでやってきたものの、勿論、ドイツ語なんて全くわからないし、日常会話が大丈夫な程度の英語で来ているので、1人で外に出るのはかなりの緊張と勇気を伴う。
でも、これこそが、非日常の世界だ。
新しいことを経験すると、きっと新しい発見が生まれて、私の未来も色彩が変わって行くだろう。
まだ手に持っていた鍵をバッグに入れて、私も階段を降り始めた。
つるつるしたダークブラウンの木製手すりに手を添えながら下りて行く。
私の滞在しているウィークリーアパートは4階だが、ドイツでは1階を0階と呼ぶので、ドイツ式に呼べば3階ということらしい。
下の階へと続く折り返しスペースで方向転換をして、真下の2階の踊り場に目を向けながら階段を下りようとし、私の心臓がドキッと跳ねた。
とんでもないものが視界に入ったからだ。
人間の足。
2階の踊り場に、人が横たわっているのが見えた。
ジーンズに、カマキリのような緑のシャツの男性。頭のところに、開いた傘が転がっている。
し……死んでる?!
一気に血の気が引き、恐怖で固まる私。
どうしたらいい?
救急車?
でも、どうやって呼ぶの?!
日本の119番とは番号も違うだろうし、大体、電話も持ってない!
なんで、ドイツに来るなりこんな場面に遭遇してしまうのだ!
心臓がドキドキして、ますますパニックになっていく。
その時ふと、さっき階段を降りて行ったOLさんのことを思い出す。
彼女の足音は立ち止まることもなく、階下へと下りて行った。
つまり、この踊り場を通過していったということだ。
ということは、死体では、ない?
呆然としていると、また上から誰かが下りて来る足音が聞こえた。
見上げると、今度は60代くらいのおじさんが、携帯を見ながら下りて来るのが見える。おじさんは私の視線に気がついたのか、携帯から顔をあげて軽く笑顔を見せ、また「モーゲン」とつぶやきながら私の隣を通り過ぎて行く。そのまま、転がっている人間を足で軽く跨いで、下のほうへ下りて行った。
まるで、何も見なかったように。
なんだ?
まるで驚いた様子もない。
これが、ドイツの「普通」なのだろうか。
この転がっている人が重病人だったら、とか思わないのだろうか。
でも……見たところ別に苦しんでいる様子ではないようだ。
どうやら死んではいないらしいし、重病人でもなさそうだと確信し、私はそろそろと階段を下りた。
ゆっくりと足音を立てないように踊り場のほうへ下りて、足下に転がっている人の横顔に目をやる。
顔色は普通で、どう見ても死んではいない。
肩が上下しているのが見えるので、呼吸しているのも、間違いないようだ。
もしかして、酔っぱらって帰宅して、そのままアパートの中に入らずここで寝込んでしまったということだろうか?
だとすると、他の皆のように、放置したまま通過していって平気だろう。
少しホッとして、そーっと音を立てずに転がっている人の足を跨ごうとしたとき、ガチャと音がして踊り場に面した扉の一つが開いた。振り返ると、チワワを腕に抱いたおばさんが扉の向こうに居て、彼女が声をあげた。
「まだ、寝てる!」
その瞬間、何かに足をすくわれて、あっと声をあげる間もなく私は倒れ込んだ。
「あいたっっ!」
フロアにドスンと思い切り音を立て、うつぶせに倒れた私。
鈍い音と同時に、腹部に強い鈍痛を感じて呻く。
あのおばさんの声に条件反射したのか、寝転がっていた人が急に動いて、私の足をすくう感じで転ばされたのだ。
丁度、この人の足をまたごうとしていた瞬間だったので、バランス悪く足をひっかけられたせいもあり、本当に文字通りすっ転んでしまった。
腹部の鈍痛を両手で押さえながら身を起こす。
この状態でまだ眠り続けているらしいその人を見ると、彼はうっすらと目を開けて私を見て、それからくるりと寝返りをうってまた眠り始めた。
茶色の玄関マットを枕代わりに手繰り寄せて。
土まみれの汚れた玄関マット!
普通、感触で気がつくだろうに!
ふわふわの枕と、トゲトゲした玄関マットの違いくらい。
呆然としていると、扉の向こうに立っているおばさんが私に声をかけた。
「大丈夫?」
どうやらそういうことをドイツ語で聞いているらしいと察し、私は小さく頷くと、急いで立ち上がった。おばさんは困ったように眉を潜め、目の前に転がる人を一瞥すると、バタン、と音を立てて扉を締めた。
私は軽くホコリをはたいて身だしなみを整え、もう一度寝転がっているその人を振り返った。
この様子だと、完全に、熟睡しているということだろう。
人をあれだけ見事に転ばせておいて、平気で眠り続けているんだから、よほど図太い神経の持ち主ということでなければ、完全に意識がないくらい泥酔しているとしか思えない。
朝っぱらから派手に転ばされる羽目になるとは思わなかったけど、せめて、階段から転げ落ちずに踊り場に倒れただけでもマシということにしよう。
この人、早く起きてアパートに戻らないと風邪引くだろうに。
まぁ、私には全然関係ないけれど。
そう思って階段を下りようとして、ふと傘が気になりもう一度振り返った。
まだ、水で濡れた黒い傘。
フロアに小さい水たまりも出来ている。
それは、こちらに背を向け玄関マットに頭を乗せて寝ているその人の頭のそばに転がっている。
あのままだと、次に寝返りをうった時にぶつかってしまうだろう。
私は一瞬考えたが、結局その傘を閉じて壁に立てかけた。
他に通過していく人達にとっても、踊り場を占領しているものは少ないほうがいいだろう。
インパクトの強いカマキリのように眩しい緑色のシャツに目をやる。
もう10月なのに、Tシャツ一枚で冷たいフロアに寝て、寒くはないのだろうか。
私なんて、薄手のジャケットを着ているのに!
この人は日常的にこんな失態を繰り返しているんだろうか。
さすが、ビール大国、ドイツ。
日本のサラリーマンも負けてはいないけれど。
東京の終電を思い出すと、急に可笑しくなってきて、1人で笑いながら階段を降りて行く。
突拍子もない事件のせいか、アパートを出た時の緊張が溶けて足取りも軽くなったのだった。
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