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九章
アンカール国へ
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僅かな月明かりの中、目に映ったその顔を見て驚愕する。
我が目を疑い、もう一度、しっかりと見た。
カスピアンだった。
アンカール国にいるはずの人じゃないか。
なんで、ここにいるの?
「カ、カスピアン……」
ホッとすると同時に、くらりと目眩がして気が遠くなりかける。
暴れる私を押え込んでいたカスピアンが、腕の力を緩め、代わりにぎゅっと抱きしめてくれた。
まるで電池が切れたかのように体が動かない。
全身黒づくめで、更に漆黒のマントまで羽織っているから、一体誰なのかなんてわからなかった。
じっと私を見つめているカスピアンの表情が、ぼんやりと見える。いくらか頰がこけて、憔悴したように潤んでいる目。私は心臓がぎゅっと握りつぶされたような痛みを感じた。私が逃げ出し、彼がどれほど心配したかはもう、説明されなくても分かる。私が彼を信じることが出来なかったために、こんな大騒動を起こしてしまい、彼に多大な心労をかけてしまった。
「……ごめん、なさい」
やっとの思いでその言葉を口にしたら、情けなさで耐えられず、ぼろぼろと涙が零れ落ちてくる。
カスピアンは私を横抱きにして、ゆっくりと立ち上がった。
「怪我はないか」
耳元にかけられた優しい声に、黙って頷いた。
カスピアンは滝の側を離れ、山道の方へ歩いていく。生い茂る木々の間を進み、山道に出て、滝の音が聞こえなくなったところで立ち止まった。彼が短く口笛を吹くと、山の中から、私が乗っていた漆黒の馬が出てきた。
カスピアンは私を抱え上げ馬の背に横座りさせると、その後ろに飛び乗った。
「セイラ」
確認するように私の名を呼んだカスピアン。見上げると、優しい微笑みを浮かべた彼が、ぎゅっと私を抱き締めた。懐かしい温もりを確かめるように、私も彼の背に手を回し、目を閉じる。
宿屋に乗り込んできたのが彼だと気がついていたら、こんな追いかけっこをせずに済んだのだ。私がちゃんと確認しなかったせいで、二人して、無駄に時間と体力を消耗する羽目になってしまった。しかも、一番会いたかった人から逃げていたという痛恨のミスに、改めてがっくりと落ち込む。
「本当に、貴方だって分からなかった。ごめんなさい」
「もう気に病むな。おまえが無事なら十分だ」
宥めるように私の背を撫でる温かく大きな彼の手に、少し落ち着きを取り戻し、私は大きく深呼吸した。
「これからどうするの?」
「今から、国境を越える」
カスピアンは片手で手綱を引くと、馬を歩かせ始めた。
「今から?フォレオ達は?」
びっくりして聞くと、カスピアンは東の空に目を向けた。
「別行動だ。夜明けと共に、単独で国境を越えることにした」
そういえば、この人はどうやって国境を越えてきたのだろう。
それに、国境では普通の検問所より厳しいチェックが入るらしいのに、二人揃って馬で向かうなんて無謀すぎないか。
私の顔には明らかに疑問が浮かんでいたらしく、カスピアンが小さく笑いをこぼした。
「おまえに、面白いものを見せてやろう」
「面白いもの?国境で?」
全く見当もつかないが、こんなに落ち着き払って余裕な様子からして、既にうまく国境を越えられる手筈を整えているということだろう。どういう計画なのか聞きたい気もしたが、何か面白いことが起きるというなら、このまま黙って成り行きを見ておくことにした。
それにしても、全く予測できなかった展開になっている。
敵国であるエティグス国内に、ラベロアの国王である彼がここに居ること自体、あってはならないこと。よく周りの誰も彼を止めなかったものだ。
再会の余韻に浸る余裕ゼロで、緊張したまま、国境へと進む馬の背に揺られる。
この最後の関門を突破しないことには、本当の意味で安心は出来ない。彼がちゃんと根回ししているのだからと自分に言い聞かせてはみるが、やはり不安は拭いきれなかった。
彼の背をぎゅっと抱き締めて目を閉じる。
温かく逞しいその胸から、いつものように力強い心臓の鼓動が聞こえてきた。
不安が和らぎ、幸せな気持ちが勝っていく。
どうしてこの人の側を離れようと思ったのか、理由を思い返してみるが、今となっては、自分の行動があまりにも軽卒であった気がしてならない。彼と親密な関係にあったと思われたサーシャに嫉妬し、彼の暴力的な言動が怖かったからだったと、理屈では説明出来る。でも、私がこの世で一番信頼しているのは彼なのだ。その彼から離れて生きていけるはずがない。そもそも、私がこの世界に留まる理由も、彼と一緒にいるためなのに。
無事に国境を越えたら、きちんと謝って、この気持ちを伝えよう。
そう心に固く決めると、夜空を見上げた。
まだ、頭上はいくつもの星が煌めく漆黒の空。だが、向こうの東の山脈の輪郭が、金色に光っているのが見える。山の背後にはもう、太陽が輝いているのだろう。
まもなく、夜明けだ。
真っ直ぐに前方を見つめているカスピアンを見上げると、その目には、山脈から漏れる太陽の光が映り込んでいた。彼は、私の視線に気がつくと、口元に柔らかな笑みを浮かべる。
それからしばらく馬はゆっくりと歩みを進めていたが、カスピアンはついに馬を停止させた。
国境に着いたのだ。
ここは少し高台になっており、私達は木々の合間から検問所を見下ろした。
万里の長城を彷彿とさせる長い壁が、地平線の向こうまで延々と続いている。国境線に沿って建てられたその壁は、ゆうに6メートルを超える高さがあり、頑丈そうな煉瓦作りだった。
検問所には、およそ10メートル幅くらいの可動式の扉が設置されている。現在、国境を越える通路は開放されているが、そこには何十人もの兵士が警備していた。国境を境に、エティグス王国とアンカール国の兵士が並んでいるらしい。
「貴方は一体どうやってこの国境を通過したの?」
不思議でしょうがなくて尋ねてみると、カスピアンはくすりと笑った。
彼が指差す方向を見ると、検問所からずっと離れた向こうの木の茂みに、なにかうごめくものがある。目を凝らしてよく見ると、4、5人の兵士達が縛り上げられ、芋虫のように転がっていた。
「アンカールの兵士とこの軍馬を共に通過させている間に、私が向こうの壁を乗り越えただけだ」
つまり、どうにかしてこの6メートルを超える壁を乗り越え、エティグス側に下りたところで、そこを警備していた兵士達を纏めて縛り上げたということらしい。
「夜が明ければ、仲間があやつらを見つけて、解放してやるだろう」
独り言のようにそう呟いて、カスピアンは国境の向こうを見つめる。
大胆不敵な行動は、王子時代から変わらないらしい。
自他ともに認める彼の右腕として、ずっとカスピアンを支えているエイドリアンの気苦労は計り知れないだろう。深く同情したが、元凶はこの私自身なのだと猛省する。これ以上、彼に危険な行動を取らせることのないよう、私が自分の行動を慎まねばならない。
東の空が濃いピンク色に染まり始めた頃、遠くから犬の吠え声が聞こえてきた。アンカール側から聞こえてくる犬の吠え声がだんだん近づいてくるにつれ、今度は、風に乗って低い地響きまで耳に届く。一体何事かと思いながら、国境の向こうを眺めていると、山の斜面を埋め尽くすような白っぽい波が、どんどん国境へと押し寄せて来るのが見えた。
「えっ?……あれは……!」
羊の大群!
驚いて身を乗り出し、その信じられない光景を眺める。
かなりの数の牧羊犬に追い立てられ、羊の大群が国境へと走って来る。数にしたら、多分、2千頭くらいはいるんじゃないかと思うくらいの大群。
国境を警備していた兵士達が、押し寄せて来る羊の大群に気が付いて、重い扉をスライドさせ通路を閉鎖しようとしたが、どうやら間に合わないと思ったのか、すぐに扉から離れた。兵士達は、押し寄せる羊達を国境で押し止めようとしているが、犬に追われてパニック気味の羊達は、立ちはだかる兵士達に体当たりし、突き飛ばしながら、どんどんとエティグス側へと雪崩れ込み始めた。喰い止めようとしていた兵士達が今度は逆に追われ始め、次々と羊の群れに飲まれていく。
「セイラ。しっかり捕まっていろ」
カスピアンは一言そう呟くと、直ぐに馬の手綱を引く。馬は高台を駆け下りると、木々の合間を走り抜け、国境の検問所の方へと向かう。
見れば、羊の大群に押されたのか、検問所を警備していた兵士達の姿は見当たらない。羊達にもみくちゃにされながら、ずっと向こうまで行ってしまったらしい。羊の群れの中に、時折、兵士の手や頭が見え隠れする。どうやらまともに立っている兵士は、ただの一人もいないようだ。
漆黒の馬に黒づくめのカスピアン、そして真っ黒いマントで覆われた私。
羊達の奇襲を受け修羅場状態の検問所周辺では、誰一人、私達の存在には気づいていない。
無人状態の検問所を一気に駆け抜けた。
馬は直ぐに森の茂みへ駆け込んで行く。
「陛下!」
茂みの奥を見ると、馬に乗ったエイドリアンと一緒に、ラベロアの騎士達が居た。その近くに、アンカール人らしい男性が6、7人立っていた。
「羊どもの仕事は済んだ。早々に戻してやれ」
笑いを噛み殺しながらカスピアンがそう言うと、アンカール人の男性の一人が何かを取り出し、口に咥える。銀色のそれは、笛のように見えたが、音は聞こえない。
「あれは……?」
「あれは人間には聞こえない犬笛だ。今、羊達を連れ戻すよう指示を出している」
カスピアンがそう言って国境の方を眺める。
やがて、また、犬の吠え声が聞こえ始め、地響きと共に羊の集団がこちらへと戻って来るのが見えた。
上手に羊をまとめながら走り回る牧羊犬の賢さに感心していると、エイドリアンが馬をこちらに近づけて、安堵の表情を見せた。
「セイラ様もご無事で何よりです。大変お疲れでしょう」
温かい言葉に、熱い涙がこみ上げてくる。エイドリアンの後ろにいるラベロアの騎士達も一様に笑顔を向けてくれていた。
たくさんの心配と迷惑をかけた私を、温かく出迎えてくれる彼等を見て、深い感謝の気持ちで胸がいっぱいになる。
「ありがとう……本当に、ごめんなさい」
泣き笑いで答えると、エイドリアンがにっこり微笑んで頷いた。
「さぁ、離宮のほうへ参りましょう。サリーもお待ちしております」
「離宮?」
「アンカール国王に使用許可をいただいております」
エイドリアンが説明すると同時に、一同は馬の手綱を引く。続々とアンカール側に戻って来る羊達を一度振り返った後、私も前方へと目を向けた。
無事に、エティグス王国の領土から、アンカールの領土に入ることができた。それに恐らく、国境警備の兵士達は、私達が通ったことに気づいていない。つまり、エティグスとアンカールの友好関係に問題を起こす事無く、無事、エティグス王国から脱出が出来たのだ。私はホッと胸を撫で下ろした。
しばらく馬を走らせ、森を通り抜けると、山の中腹にそびえる立派な宮殿に到着した。警備をしていたアンカール国の兵士達が開門してくれて、私達はぞろぞろとその内部に入る。赤煉瓦で建てられたこの離宮は、要塞を兼ねているらしく、四方に監視所らしき塔があった。
建物の入口のところで馬が止まると、アンカール人の女官達に混じって、サリーが一緒に出迎えてくれているのに気が付いた。
カスピアンが私を馬から下ろすと、サリーが涙を零しながら駆け寄って来た。
「セイラ様、よくご無事で。今か今かとずっとお待ちしてました」
「ごめんね。心配かけて、本当にごめんなさい」
申し訳なさで他に言葉も出なかった。
サリーは首を振って泣き笑いしながら私の手を取った。
「セイラ様は、どこかに消えて戻られる時はいつも、とんでもない格好ですね。さぁ、参りましょう」
言われて自分を見下ろしてみる。もう朝日が昇り辺りは明るい。自分が如何に酷い格好をしているのか気づき、ショックを受ける。
借りていたアンカール国の男物の服も、砂だらけであちこち破れているし、結局まとめる暇もなかった髪には、葉っぱや小枝が絡み付いていた。鏡がないと見えないが、顔もきっと汚れてすごいことになっているに違いない。
これでラベロアの王妃になろうだなんて恥ずかしすぎる。
アンカール国の兵士や女官達の注目を浴びている事実に、顔から火が出るかと思った。なるべく顔を見られないように俯きながら、サリーの誘導で離宮内へと入った。
サリーの話だと、一行は2日前にラベロアを出発し、昨夜、ここに到着したらしい。
アンカールの女官達が手伝いを申し出てくれたが、サリーが丁重に断る。使わせてもらえることになっている豪華な客室に入ると、ラベロアの紋章が施された衣装箱が置かれてあるのに気づき、思わず微笑みが溢れた。
サリーが手際よく湯浴みをしてくれて、髪に絡み付いていた葉っぱや小枝も、奇麗に取り除いてくれた。ヴォルガの河でも同じように、ぐちゃぐちゃになった髪を綺麗にしてくれたなと思い出していると、サリーも同じことを考えていたらしく、二人で思い出話をして笑う。
左腕の包帯をしっかり巻き直し、サリーが準備してくれていたラベロアの衣装を着せてもらった。
薄紫色と純白のグラデーションのふわりとしたドレスは、まるで濡れているかのようにしっとりとした光沢があり、肌触りは羽のように優しい。繊細な花模様レースの袖も、ゆったりとしてとても着心地がよかった。
ドレスの裾がまるで花びらのように幾つもの弧を描き、フロアに咲く大輪の花のように広がっている。
あっちこっちを紐やベルトで締め付ける男装と違って、リラックスするにはやっぱりドレスのほうがいいかもしれない。
私が疲れているだろうからと、サリーは髪を結い上げたりせず、首飾りなどの装身具も一切つけなかった。
最後に、体が冷えないようにと、柔らかな大判のストールを肩に掛けてくれる。真っ白でふわふわのそれは、羊毛で編まれたストールだった。片付けを始めたサリーに、国境で大活躍してくれた羊達の話をしていると、扉をノックする音がした。サリーが扉を開けると、アンカールの女官が居て、食事を運び込んでいいかと聞く。サリーが私のところに来て、食事をするかと聞いた時、扉の方で話し声がして、女官達が立ち去る足音がする。そこには、さっきの黒装束から略装に着替えたカスピアンが立っていた。片手で扉を押さえ、こちらをじっと見ているその姿に、胸がドキンと跳ねる。
「お食事の際はお声をかけてください」
サリーがにっこり微笑んで、すぐに退室する。
その後ろ姿を目で追った後、カスピアンはゆっくりと扉を閉め、また、私を振り返った。
いつになく静かで、悲壮感の漂う表情をしている彼。深い緑色の目に苦悩の記憶を残す影が差していて、強靭で堂々としたその体にそぐわないほど、痛々しかった。
この人をここまで苦しめてしまったのだと、申し訳なさで泣きたくなる。私自身もたくさん泣いて苦しんだけれど、その私に散々振り回された彼は、私を心配するあまり、きっと心休まる日なんてなかっただろう。謝罪の言葉を口にするのは簡単だけど、いくら謝っても到底足りはしない。
話したいこと、聞きたいこともたくさんある。
でも、その前に、もっと大事なことがあった。
勇気を出して、扉の方に立っているカスピアンの方に近づこうと一歩踏み出すと、少しだけ表情を和らげた彼がいつものように両腕を広げてくれた。それを見て、胸が痛いほど嬉しくなり、私はドレスをたくし上げると彼に駆け寄り、思い切り飛びつく。カスピアンはいつもと変わらず、しっかりと私を抱き止めてくれた。
「カスピアン」
昂る感情で声が震えるのも構わず、私は力一杯彼の首にしがみついた。
「愛してる。もう、どこにも行かない。ずっと一緒にいたい」
最初に伝えたかった言葉は、一度もつっかえることはなかった。
私の背を抱いている彼の腕に力がこもるのを感じた。
「おまえが無事でよかった」
独り言のようにそう呟いたカスピアンは、宥めるように私の背を撫でる。
言葉が少ない彼の様子からして、きっと、言いたいことをどう表現すればいいのか、考えあぐねているのだと察する。彼が無口になる時は、何かを言おうとしているが、それをどう言葉にすべきか考えている時だ。私は彼を、それほどまでに傷つけ、悲しませてしまったのだ。自分が彼にした仕打ちの酷さを再認識し、深い自己嫌悪に陥る。
それでも、離れたくない気持ちが何よりも強くて、私は彼の首にしがみつく腕にもっと力をこめた。ぶら下がるように粘っている私のしつこさに、カスピアンが小さく笑う声がした。
我が目を疑い、もう一度、しっかりと見た。
カスピアンだった。
アンカール国にいるはずの人じゃないか。
なんで、ここにいるの?
「カ、カスピアン……」
ホッとすると同時に、くらりと目眩がして気が遠くなりかける。
暴れる私を押え込んでいたカスピアンが、腕の力を緩め、代わりにぎゅっと抱きしめてくれた。
まるで電池が切れたかのように体が動かない。
全身黒づくめで、更に漆黒のマントまで羽織っているから、一体誰なのかなんてわからなかった。
じっと私を見つめているカスピアンの表情が、ぼんやりと見える。いくらか頰がこけて、憔悴したように潤んでいる目。私は心臓がぎゅっと握りつぶされたような痛みを感じた。私が逃げ出し、彼がどれほど心配したかはもう、説明されなくても分かる。私が彼を信じることが出来なかったために、こんな大騒動を起こしてしまい、彼に多大な心労をかけてしまった。
「……ごめん、なさい」
やっとの思いでその言葉を口にしたら、情けなさで耐えられず、ぼろぼろと涙が零れ落ちてくる。
カスピアンは私を横抱きにして、ゆっくりと立ち上がった。
「怪我はないか」
耳元にかけられた優しい声に、黙って頷いた。
カスピアンは滝の側を離れ、山道の方へ歩いていく。生い茂る木々の間を進み、山道に出て、滝の音が聞こえなくなったところで立ち止まった。彼が短く口笛を吹くと、山の中から、私が乗っていた漆黒の馬が出てきた。
カスピアンは私を抱え上げ馬の背に横座りさせると、その後ろに飛び乗った。
「セイラ」
確認するように私の名を呼んだカスピアン。見上げると、優しい微笑みを浮かべた彼が、ぎゅっと私を抱き締めた。懐かしい温もりを確かめるように、私も彼の背に手を回し、目を閉じる。
宿屋に乗り込んできたのが彼だと気がついていたら、こんな追いかけっこをせずに済んだのだ。私がちゃんと確認しなかったせいで、二人して、無駄に時間と体力を消耗する羽目になってしまった。しかも、一番会いたかった人から逃げていたという痛恨のミスに、改めてがっくりと落ち込む。
「本当に、貴方だって分からなかった。ごめんなさい」
「もう気に病むな。おまえが無事なら十分だ」
宥めるように私の背を撫でる温かく大きな彼の手に、少し落ち着きを取り戻し、私は大きく深呼吸した。
「これからどうするの?」
「今から、国境を越える」
カスピアンは片手で手綱を引くと、馬を歩かせ始めた。
「今から?フォレオ達は?」
びっくりして聞くと、カスピアンは東の空に目を向けた。
「別行動だ。夜明けと共に、単独で国境を越えることにした」
そういえば、この人はどうやって国境を越えてきたのだろう。
それに、国境では普通の検問所より厳しいチェックが入るらしいのに、二人揃って馬で向かうなんて無謀すぎないか。
私の顔には明らかに疑問が浮かんでいたらしく、カスピアンが小さく笑いをこぼした。
「おまえに、面白いものを見せてやろう」
「面白いもの?国境で?」
全く見当もつかないが、こんなに落ち着き払って余裕な様子からして、既にうまく国境を越えられる手筈を整えているということだろう。どういう計画なのか聞きたい気もしたが、何か面白いことが起きるというなら、このまま黙って成り行きを見ておくことにした。
それにしても、全く予測できなかった展開になっている。
敵国であるエティグス国内に、ラベロアの国王である彼がここに居ること自体、あってはならないこと。よく周りの誰も彼を止めなかったものだ。
再会の余韻に浸る余裕ゼロで、緊張したまま、国境へと進む馬の背に揺られる。
この最後の関門を突破しないことには、本当の意味で安心は出来ない。彼がちゃんと根回ししているのだからと自分に言い聞かせてはみるが、やはり不安は拭いきれなかった。
彼の背をぎゅっと抱き締めて目を閉じる。
温かく逞しいその胸から、いつものように力強い心臓の鼓動が聞こえてきた。
不安が和らぎ、幸せな気持ちが勝っていく。
どうしてこの人の側を離れようと思ったのか、理由を思い返してみるが、今となっては、自分の行動があまりにも軽卒であった気がしてならない。彼と親密な関係にあったと思われたサーシャに嫉妬し、彼の暴力的な言動が怖かったからだったと、理屈では説明出来る。でも、私がこの世で一番信頼しているのは彼なのだ。その彼から離れて生きていけるはずがない。そもそも、私がこの世界に留まる理由も、彼と一緒にいるためなのに。
無事に国境を越えたら、きちんと謝って、この気持ちを伝えよう。
そう心に固く決めると、夜空を見上げた。
まだ、頭上はいくつもの星が煌めく漆黒の空。だが、向こうの東の山脈の輪郭が、金色に光っているのが見える。山の背後にはもう、太陽が輝いているのだろう。
まもなく、夜明けだ。
真っ直ぐに前方を見つめているカスピアンを見上げると、その目には、山脈から漏れる太陽の光が映り込んでいた。彼は、私の視線に気がつくと、口元に柔らかな笑みを浮かべる。
それからしばらく馬はゆっくりと歩みを進めていたが、カスピアンはついに馬を停止させた。
国境に着いたのだ。
ここは少し高台になっており、私達は木々の合間から検問所を見下ろした。
万里の長城を彷彿とさせる長い壁が、地平線の向こうまで延々と続いている。国境線に沿って建てられたその壁は、ゆうに6メートルを超える高さがあり、頑丈そうな煉瓦作りだった。
検問所には、およそ10メートル幅くらいの可動式の扉が設置されている。現在、国境を越える通路は開放されているが、そこには何十人もの兵士が警備していた。国境を境に、エティグス王国とアンカール国の兵士が並んでいるらしい。
「貴方は一体どうやってこの国境を通過したの?」
不思議でしょうがなくて尋ねてみると、カスピアンはくすりと笑った。
彼が指差す方向を見ると、検問所からずっと離れた向こうの木の茂みに、なにかうごめくものがある。目を凝らしてよく見ると、4、5人の兵士達が縛り上げられ、芋虫のように転がっていた。
「アンカールの兵士とこの軍馬を共に通過させている間に、私が向こうの壁を乗り越えただけだ」
つまり、どうにかしてこの6メートルを超える壁を乗り越え、エティグス側に下りたところで、そこを警備していた兵士達を纏めて縛り上げたということらしい。
「夜が明ければ、仲間があやつらを見つけて、解放してやるだろう」
独り言のようにそう呟いて、カスピアンは国境の向こうを見つめる。
大胆不敵な行動は、王子時代から変わらないらしい。
自他ともに認める彼の右腕として、ずっとカスピアンを支えているエイドリアンの気苦労は計り知れないだろう。深く同情したが、元凶はこの私自身なのだと猛省する。これ以上、彼に危険な行動を取らせることのないよう、私が自分の行動を慎まねばならない。
東の空が濃いピンク色に染まり始めた頃、遠くから犬の吠え声が聞こえてきた。アンカール側から聞こえてくる犬の吠え声がだんだん近づいてくるにつれ、今度は、風に乗って低い地響きまで耳に届く。一体何事かと思いながら、国境の向こうを眺めていると、山の斜面を埋め尽くすような白っぽい波が、どんどん国境へと押し寄せて来るのが見えた。
「えっ?……あれは……!」
羊の大群!
驚いて身を乗り出し、その信じられない光景を眺める。
かなりの数の牧羊犬に追い立てられ、羊の大群が国境へと走って来る。数にしたら、多分、2千頭くらいはいるんじゃないかと思うくらいの大群。
国境を警備していた兵士達が、押し寄せて来る羊の大群に気が付いて、重い扉をスライドさせ通路を閉鎖しようとしたが、どうやら間に合わないと思ったのか、すぐに扉から離れた。兵士達は、押し寄せる羊達を国境で押し止めようとしているが、犬に追われてパニック気味の羊達は、立ちはだかる兵士達に体当たりし、突き飛ばしながら、どんどんとエティグス側へと雪崩れ込み始めた。喰い止めようとしていた兵士達が今度は逆に追われ始め、次々と羊の群れに飲まれていく。
「セイラ。しっかり捕まっていろ」
カスピアンは一言そう呟くと、直ぐに馬の手綱を引く。馬は高台を駆け下りると、木々の合間を走り抜け、国境の検問所の方へと向かう。
見れば、羊の大群に押されたのか、検問所を警備していた兵士達の姿は見当たらない。羊達にもみくちゃにされながら、ずっと向こうまで行ってしまったらしい。羊の群れの中に、時折、兵士の手や頭が見え隠れする。どうやらまともに立っている兵士は、ただの一人もいないようだ。
漆黒の馬に黒づくめのカスピアン、そして真っ黒いマントで覆われた私。
羊達の奇襲を受け修羅場状態の検問所周辺では、誰一人、私達の存在には気づいていない。
無人状態の検問所を一気に駆け抜けた。
馬は直ぐに森の茂みへ駆け込んで行く。
「陛下!」
茂みの奥を見ると、馬に乗ったエイドリアンと一緒に、ラベロアの騎士達が居た。その近くに、アンカール人らしい男性が6、7人立っていた。
「羊どもの仕事は済んだ。早々に戻してやれ」
笑いを噛み殺しながらカスピアンがそう言うと、アンカール人の男性の一人が何かを取り出し、口に咥える。銀色のそれは、笛のように見えたが、音は聞こえない。
「あれは……?」
「あれは人間には聞こえない犬笛だ。今、羊達を連れ戻すよう指示を出している」
カスピアンがそう言って国境の方を眺める。
やがて、また、犬の吠え声が聞こえ始め、地響きと共に羊の集団がこちらへと戻って来るのが見えた。
上手に羊をまとめながら走り回る牧羊犬の賢さに感心していると、エイドリアンが馬をこちらに近づけて、安堵の表情を見せた。
「セイラ様もご無事で何よりです。大変お疲れでしょう」
温かい言葉に、熱い涙がこみ上げてくる。エイドリアンの後ろにいるラベロアの騎士達も一様に笑顔を向けてくれていた。
たくさんの心配と迷惑をかけた私を、温かく出迎えてくれる彼等を見て、深い感謝の気持ちで胸がいっぱいになる。
「ありがとう……本当に、ごめんなさい」
泣き笑いで答えると、エイドリアンがにっこり微笑んで頷いた。
「さぁ、離宮のほうへ参りましょう。サリーもお待ちしております」
「離宮?」
「アンカール国王に使用許可をいただいております」
エイドリアンが説明すると同時に、一同は馬の手綱を引く。続々とアンカール側に戻って来る羊達を一度振り返った後、私も前方へと目を向けた。
無事に、エティグス王国の領土から、アンカールの領土に入ることができた。それに恐らく、国境警備の兵士達は、私達が通ったことに気づいていない。つまり、エティグスとアンカールの友好関係に問題を起こす事無く、無事、エティグス王国から脱出が出来たのだ。私はホッと胸を撫で下ろした。
しばらく馬を走らせ、森を通り抜けると、山の中腹にそびえる立派な宮殿に到着した。警備をしていたアンカール国の兵士達が開門してくれて、私達はぞろぞろとその内部に入る。赤煉瓦で建てられたこの離宮は、要塞を兼ねているらしく、四方に監視所らしき塔があった。
建物の入口のところで馬が止まると、アンカール人の女官達に混じって、サリーが一緒に出迎えてくれているのに気が付いた。
カスピアンが私を馬から下ろすと、サリーが涙を零しながら駆け寄って来た。
「セイラ様、よくご無事で。今か今かとずっとお待ちしてました」
「ごめんね。心配かけて、本当にごめんなさい」
申し訳なさで他に言葉も出なかった。
サリーは首を振って泣き笑いしながら私の手を取った。
「セイラ様は、どこかに消えて戻られる時はいつも、とんでもない格好ですね。さぁ、参りましょう」
言われて自分を見下ろしてみる。もう朝日が昇り辺りは明るい。自分が如何に酷い格好をしているのか気づき、ショックを受ける。
借りていたアンカール国の男物の服も、砂だらけであちこち破れているし、結局まとめる暇もなかった髪には、葉っぱや小枝が絡み付いていた。鏡がないと見えないが、顔もきっと汚れてすごいことになっているに違いない。
これでラベロアの王妃になろうだなんて恥ずかしすぎる。
アンカール国の兵士や女官達の注目を浴びている事実に、顔から火が出るかと思った。なるべく顔を見られないように俯きながら、サリーの誘導で離宮内へと入った。
サリーの話だと、一行は2日前にラベロアを出発し、昨夜、ここに到着したらしい。
アンカールの女官達が手伝いを申し出てくれたが、サリーが丁重に断る。使わせてもらえることになっている豪華な客室に入ると、ラベロアの紋章が施された衣装箱が置かれてあるのに気づき、思わず微笑みが溢れた。
サリーが手際よく湯浴みをしてくれて、髪に絡み付いていた葉っぱや小枝も、奇麗に取り除いてくれた。ヴォルガの河でも同じように、ぐちゃぐちゃになった髪を綺麗にしてくれたなと思い出していると、サリーも同じことを考えていたらしく、二人で思い出話をして笑う。
左腕の包帯をしっかり巻き直し、サリーが準備してくれていたラベロアの衣装を着せてもらった。
薄紫色と純白のグラデーションのふわりとしたドレスは、まるで濡れているかのようにしっとりとした光沢があり、肌触りは羽のように優しい。繊細な花模様レースの袖も、ゆったりとしてとても着心地がよかった。
ドレスの裾がまるで花びらのように幾つもの弧を描き、フロアに咲く大輪の花のように広がっている。
あっちこっちを紐やベルトで締め付ける男装と違って、リラックスするにはやっぱりドレスのほうがいいかもしれない。
私が疲れているだろうからと、サリーは髪を結い上げたりせず、首飾りなどの装身具も一切つけなかった。
最後に、体が冷えないようにと、柔らかな大判のストールを肩に掛けてくれる。真っ白でふわふわのそれは、羊毛で編まれたストールだった。片付けを始めたサリーに、国境で大活躍してくれた羊達の話をしていると、扉をノックする音がした。サリーが扉を開けると、アンカールの女官が居て、食事を運び込んでいいかと聞く。サリーが私のところに来て、食事をするかと聞いた時、扉の方で話し声がして、女官達が立ち去る足音がする。そこには、さっきの黒装束から略装に着替えたカスピアンが立っていた。片手で扉を押さえ、こちらをじっと見ているその姿に、胸がドキンと跳ねる。
「お食事の際はお声をかけてください」
サリーがにっこり微笑んで、すぐに退室する。
その後ろ姿を目で追った後、カスピアンはゆっくりと扉を閉め、また、私を振り返った。
いつになく静かで、悲壮感の漂う表情をしている彼。深い緑色の目に苦悩の記憶を残す影が差していて、強靭で堂々としたその体にそぐわないほど、痛々しかった。
この人をここまで苦しめてしまったのだと、申し訳なさで泣きたくなる。私自身もたくさん泣いて苦しんだけれど、その私に散々振り回された彼は、私を心配するあまり、きっと心休まる日なんてなかっただろう。謝罪の言葉を口にするのは簡単だけど、いくら謝っても到底足りはしない。
話したいこと、聞きたいこともたくさんある。
でも、その前に、もっと大事なことがあった。
勇気を出して、扉の方に立っているカスピアンの方に近づこうと一歩踏み出すと、少しだけ表情を和らげた彼がいつものように両腕を広げてくれた。それを見て、胸が痛いほど嬉しくなり、私はドレスをたくし上げると彼に駆け寄り、思い切り飛びつく。カスピアンはいつもと変わらず、しっかりと私を抱き止めてくれた。
「カスピアン」
昂る感情で声が震えるのも構わず、私は力一杯彼の首にしがみついた。
「愛してる。もう、どこにも行かない。ずっと一緒にいたい」
最初に伝えたかった言葉は、一度もつっかえることはなかった。
私の背を抱いている彼の腕に力がこもるのを感じた。
「おまえが無事でよかった」
独り言のようにそう呟いたカスピアンは、宥めるように私の背を撫でる。
言葉が少ない彼の様子からして、きっと、言いたいことをどう表現すればいいのか、考えあぐねているのだと察する。彼が無口になる時は、何かを言おうとしているが、それをどう言葉にすべきか考えている時だ。私は彼を、それほどまでに傷つけ、悲しませてしまったのだ。自分が彼にした仕打ちの酷さを再認識し、深い自己嫌悪に陥る。
それでも、離れたくない気持ちが何よりも強くて、私は彼の首にしがみつく腕にもっと力をこめた。ぶら下がるように粘っている私のしつこさに、カスピアンが小さく笑う声がした。
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