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八章
貴公子の素顔
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昨日は深い自己嫌悪に陥ったまま眠ったせいか、夢見は最悪だった。
迂闊にもルシア王子の前で泣き慰めてもらうという、自尊心の欠片もない過ちを犯してしまったからだ。あまりにも突然に多くの事が重なり、自分の心の内を誰にも明かすことが出来ないままラベロア王宮を出てしまった私。挙句に、ルシア王子に遭遇するという、全く想定外の状況に陥ったところに、その王子に、私の抱えている問題の核心をグサリと刺されてしまい、完全に自分のコントロールが出来なくなってしまった。
せっかく封印しようとしていた悲しみという箱を、勝手に開けられてしまったら、それはもう、吹き出すように溢れ出し、止まらなくなってしまった。散々泣いてようやく落ち着きを取り戻し、部屋に戻り鏡を見たら、目が兎のように赤くなっていた。
その後はずっと部屋に閉じ篭り、ジョセフィが軽い夕食を運んで来てくれた後は、疲れて眠ってしまった。
今朝は、悪夢にうなされた疲労が取れていないけれど、割と気持ちは落ち着いていた。理性を取り戻してくると、直面している現実を思い出し、そっちのほうが心配になる。
エリオットに預けていた黄色のカバーの絵本は部屋におかれていたものの、彼とはぐれてしまったのは間違いなさそうだった。わざわざ騒ぎ立てて、エリオットを私のごたごたに巻き込むのもよくないと判断し、彼の事はもう口にしないと決める。つまり、これからは自分でなんとかしなければならないのだ。
まるで当たり前のことのように、ジョセフィが女官達を従えて朝の身支度をやってくれているが、ここはエティグス王国。目下の問題は、以前も、ヴォルガの河の側の離宮で直面していたことと同じ。つまり、ここを出て、どうやって生きて行くか……
いくら考えたところで、辿り着く答えはただひとつ。
この離宮の主である、ルシア王子に話すしか、手段はない。
昨日、恋の病だのといきなり言い出され当惑したが、どうせまたラベロアに揺さぶりをかけようとか画策しようとしているのだろう。彼には、そういう用途に私を使うことは出来ないと、はっきり説明しなければならない。その後、ルシア王子が信用出来そうだったら、ここを出してもらう際に、可能なら、働き先を紹介してもらうとか、サポートをお願いしてみるのも有りかもしれない。何と言っても、他に頼れる人なんていないのだから。
ともかく、ちゃんと話さねば。
「セイラ様、そんな難しいお顔をされて、どうしたのですか」
ジョセフィに聞かれて、ハッと我に返る。鏡に映る自分と目が合い、気がつけば、随分とフォーマルなドレスを着せられているのに気がついた。
光沢のあるベルベット生地の衣装は、チョコレート色。胸の真下がキュッと締まっているエンパイアドレスで、ワインレッドのファーがぐるりと襟周りを囲んでいる。髪は金色のリボンを編み込むようにして結い上げられていた。ピンク色の真珠と金細工のヘッドドレスが、編み込まれた髪を留めるように差し込まれている。
湯浴みが終わった後、とにかく簡易な衣服をとお願いしたので、ちゃんと希望は伝わっているだろうと油断していたらこの有様。考え事をしていた私も悪いのだが、全然こちらの希望が伝わっておらず落胆する。
「ジョセフィ、どうしてこんな格好になっているの?私、ここに長々お世話になるつもりはないから、今日、ちゃんとルシア王子に話をしようと思ってたのに」
がっかりしてそう言うと、ジョセフィが鏡の中の私に笑いかける。
「今日はお出かけのご予定ですから」
「お出かけ?私が?」
驚いて目を見開くと、別の女官が私の耳にピンク色の真珠の耳飾りをかけるのが鏡に映る。ジョセフィは、私の左腕の包帯を巻き直しながら、ご機嫌な様子。
「エヴァールの港町の市場です。セイラ様の気晴らしになるだろうと、殿下のご配慮で、ご視察にご一緒されることになりました」
「港町の市場……」
「エヴァールは、交易船が来る街なので、市場には外国産の珍しいものも多いのですよ。観光名所で、とても活気があります」
まさか観光まがいの外出に連れて行かれることになるとは思っておらず、面食らってしまうが、当然ながら私に拒否権などはない。どちらにせよ、ルシア王子には会わねばならなかったので、断る理由もなかった。
私が黙っているので、どうやら、行きたくないとごねないらしいと気づいたジョセフィが喜んでいる様子だった。
部屋に運び込まれた朝食を軽くいただいて、まるで観光旅行にでも来ているかのような変な気分で、部屋を出る。ここには、護衛も監視兵もおらず、私はただ、ジョセフィと二人の女官に同行されているだけ。見方によっては、いつでも逃げ出せそうなほど緩い警備で気抜けしてしまう。
離宮の中をぐるりと回り、海とは反対側へ来ると、衛兵が左右に立つ大きな扉が開いていた。乳白色の大理石の階段を下りると、屋根が無いタイプの馬車が目に入る。藍色の馬車には金色で塗られた波模様の彫刻が施されていた。大柄で栗色に白い模様が交じった馬が一頭。足の下から蹄のところまで、白く長い距毛が生えて、えらく力持ちに見えた。
既に御者は乗っており、前に2名、後方には6名の護衛の騎士が、馬に乗って並んでいる。
これに乗るのか、と複雑な気持ちで馬車を眺めていると、私の手を持っていたジョセフィがその手を放す。見れば、隣にルシア王子が立っていた。紺色のシャツの上に、丈の長いワインレッドの上着を羽織っている。袖周りや、襟から胸に掛けて金の刺繍がいかにも王子様っぽい上着は、やっぱり宝塚の男役を連想させた。黒っぽいパンツにダークブラウンのロングブーツを履き、長いブロンドの髪はオールバックで後ろに流している。珍しく、マントは着用していなかったが、儀礼用のものかと見間違うような美しい装飾のついた剣を携えていた。
まるでディズニー映画に出てくる典型的な王子様だ。でも、感情の読み取れないポーカーフェイスは相変わらずだから、研ぎ澄まされた美貌がますます生身の人間に見えない。真っ青な目は笑ってはいないが、穏やかな表情で私を見下ろしている。
一応形式に乗っ取ってお辞儀をした後、何よりも先に絶対に言わねば、と思っていたことを口にする。
「昨日は、お見苦しいところをお見せして失礼しました。今日は、今後のことで、話を」
そこまで言いかけたところで、いきなり横抱きにされ、あっと思った時にはそのまま馬車に乗り込み、座席に下ろされる。すぐに王子が御者に手合図を送り、馬車が動き出す。
「いってらっしゃいませ」
ジョセフィや他、数人の見送りの女官がお辞儀をした。後方をついてくる護衛の騎士達を一度振り返って見た後、私はため息をついておとなしく座席に座り直す。
どうしても、ルシア王子のペースに巻き込まれ、思うように話さえ出来ない。
ゆったりと背もたれに寄りかかる王子が、風になびく髪を軽く掻き上げる。
「今日はこれから、エヴァールの街の様子を見せてやろう。ここは交易が盛んな港だ。きっとおまえが興味を持つようなものもあるだろう」
眩しそうに目を細めたルシア王子が、隣の私に笑いかける。ぎこちなく笑い返し、黙って前を見た。この、緊張感のないルシア王子の雰囲気が、不思議でしょうがない。以前はもっと、こちらの様子を見張っているような鋭い眼差しでヒヤヒヤさせられていたが、今回の彼は、随分とリラックスしているように見える。
沈黙しているのも居心地悪く、気を紛らわせようと無難な質問をぶつけてみた。
「視察はお好きなのですか」
私の質問に、ルシア王子は頷き、穏やかな笑みを向ける。
「年明け以降は、これまでのようにはいかなくなるが」
「年が明けたら、何かが変わるのですか」
「父王が退位するからだ」
それを聞いて、つまり、第一王子である彼が即位するのだと理解する。国王になったら王都でやるべきことが増えて、気軽にあちらこちらへ行く事ができないのだろう。
そう言えば、お妃教育の際にエティグス王国のことを学んだが、王子には、5人の兄弟が居たはずだ。そのうち3人が王女で、2人が王子。ルシア王子の父も、エスタスと同じく3人のお妃様がいると聞く。
「おまえに兄弟はいるのか」
私が考えていたことを逆に質問され、びっくりしたが、特に聞かれても困るようなことではないと思い、素直に答える。
「兄が一人います」
7歳上の年が離れた兄は、私が高校生の時に地方公務員になって家を出たので、年末年始くらいしか会えなかった。私がこの世界に戻ってくる少し前に、長年付き合っていた人と結婚し、もうすぐ赤ちゃんも生まれるはずだ。
私がここに居る限り、もう、会えないのだなと思い返し、急に寂しくなる。こんな気持ちになるのなら、いっその事、竪琴を壊してもとの世界に戻った方がよかったのかもしれない。
暗い気持ちになっていると、ルシア王子が注意深く私を眺めながら、更に質問してきた。
「おまえの生みの親は、遥か遠くの異国にいるのだろう。そこへ帰る事も考えたのか」
「はい。でも、遠すぎて、そう簡単には戻れないので……」
あまり詳しく聞かれると、異世界のことまで気付かれる恐れがあるので、このあたりで私の話は止めてもらわないとまずいと思い、話題を逸らした。
「ルシア王子のご兄弟は皆さん、王都にいらっしゃるんですか」
「いや。姉や妹は既に嫁ぎ、弟達はそれぞれの領地を治めさせている。王都に残るのは私だけだ。父も退位すれば、地方へ移り住むことになる」
「そうなのですか……」
そこで会話が途切れる。特に質問も思いつかず、黙っていると、ふいにルシア王子が私に問いかけた。
「新しい竪琴が納められたと聞いたが、置いてきたのか」
そんなことまで知っているんだと驚きながら、頷くだけに留める。魔法の竪琴であることを気付かれては困るので、この話題はあまり続けたくない。
「おまえがヴォルガの河からラベロアに戻った時、置いて行った竪琴だが……」
焼けて壊れかけていたという、ライアーのことだと気づき、ルシア王子の顔色を見る。あれが原因で、私が消えた後は戦争まであったと聞いた。
ルシア王子は、真っ青な目をまっすぐにこちらに向けた。
「あの竪琴が海を渡り、ラベロアの王都ルシュカの海域に入ったところで、軍船と見間違われ、ラベロアの監視船から火矢が放たれたと聞いた」
「えっ?」
「無事消火されたが、竪琴を梱包していた箱が傷んだため、新しい箱に移し替えてラベロア王宮へ届けたとの報告だった。だが、実際は、損壊していたと抗議文が届き、交戦となってしまったが……」
「それでは、港の側で船が火事になり、竪琴が壊れたということですか?」
エティグス王国で既に一部燃やすなどのダメージを与えた上で、送り返して来たと聞いていた私は、びっくりして聞き返した。ルシア王子は美しい眉をひそめ、苦笑する。
「おまえの奏でる竪琴の音色は美しかった。罪の無い竪琴を壊して送り返すなど、質の悪い指示はしておらぬ」
澄んだその青い目には陰りがなく、嘘を言っているようには見えない。
確かに、楽器を燃やし送り返すなど、ヒステリックな女性がやりそうな行動だし、冷静さの塊みたいなルシア王子が、そんな子供染みた嫌がらせをするとは思えなかった。
そんな事実を知らされると、ルシア王子に対しての拒否反応も和らいでくる。依然として、油断のならない相手なのには変わりないが、冷酷とか腹黒と決めつけていたことを、少し反省した。
誰だって、善悪の両方を持ち合わせている。よほど精神的に狂ってしまわない限り、悪魔みたいな人はいないはずだ。そして、正しい事だけ行い、その一生を終える人間なんていうのも、絶対に存在しないだろう。私自身、自分の黒い部分の存在くらい自覚している。
人は、きちんと向き合って話をしない限り、理解出来ないものだ、と心の中で呟いた。
ルシア王子も、所詮は一人の人間。
感情の読み取れない、人間味の欠けた人だと、頭から決めつけていたけれど、そんな彼の仮面の下を垣間見た気がした。
離宮から市街への整備された林道を通り、しばらくすると、一様に外壁を白く塗られた建物が密集している港町が見えてきた。先導している騎士の馬達に気がついたのか、通りにいた人々が端に寄り、こちらを見ている。
街の中に入って行くと、馬車を追いかけてくる子供達がたくさんいた。
ラベロア王国では、アンリとヘレンの幌馬車に隠れて青空市場に行った事しかなかったから、こうして街を見るのは初めての経験だった。たくさんの人々が、ルシア王子の名を呼んだり、手を振ったりしている。どうやらスターの登場を待ち構えていたファンの集団と言ってもいいくらい、彼の人気は確かなものらしい。
エティグス王国は敵国、と思っていたから、どうしてもルシア王子は悪者という印象だったが、彼も、この国では国民を守り国を繁栄させるという重要な役目を負う、王室の人間。当然、国民にとっては憧れ、尊敬の対象なのだ。女性達の黄色い声があちこちであがるのも、この容姿なら当たり前だろう。
やがて港が見えてくる。
たくさんのカラフルなテントが並び、買い物客で賑わっている様子。
そういえば、ラベロア王国で初めてルシア王子に会ったのも、青空市場だった。
馬車が止まると、一斉に人々が群がって来たので狼狽えてしまう。こんな至近距離まで一般庶民が近づくのを許されるのかと、国によって本当に文化が違うことに驚かされる。ラベロア王国では、一般庶民は絶対にカスピアンに近づくことは許されないだろう。そういう意味では、エティグス王国の治安はかなり良いということなのだろうか。
馬車の周りに詰め寄り、歓迎の声をあげる人々に圧倒されていると、王子が私に笑いかけた。
「ここからは歩く」
「えっ?」
この人ごみの中を歩くのかと驚いていると、ルシア王子は先に馬車を下り、私を振り返った。この高さからドレスで飛び降りるわけにもいかない。御者が台を出すのだろうと思い、端に立って御者を見ようとしたら、ルシア王子が私の腰を抱え上げ、赤い煉瓦畳の通路へ下ろす。
「……ありがとう、ございます」
エスコートされるのが当たり前になってしまっていることに焦るが、だからといってどうするわけにもいかないため、仕方なくお礼を述べた。
「お姫様!」
「お花をどうぞ!」
ドキンとして声の方を見ると、護衛に指示された距離のところに、大勢の子供達が集まっていた。手には色とりどりの花を持って、頬を紅潮させ、かなり興奮した様子。
私が外国からの客人だと思われているのは確からしい。まさか、自分がこんな歓迎を受けるとは思っていなかったため困惑する。だが、子供達相手に冷たい態度をとるわけにもいかない。私の事情なんて知らないわけだから、彼等の好意を突き放すわけにもいかず、呼びかけに応じ、微笑み返す。
「お花を!」
沢山の子供達が手に持った花をこちらへ差し出しているが、どうしたものか分からずにいると、ルシア王子が彼等のほうへ歩く。沸き上がる歓声を一身に浴びながら、その集団に近づくと、身を屈め、5、6歳くらいの男の子を抱き上げた。
その子を片腕に抱え、何か一言、二言、話しかけた王子が、私のほうへ戻ってくる。赤毛にそばかすで、歯の抜け替わり時期なのか、上下とも前歯がない、可愛らしい子だ。真っ赤な大輪のダリアを一本、小さな手に持っている。アクアマリンのような水色の瞳をキラキラさせて、私に向かってその花を差し出してくれた。お花を受け取って、ありがとう、と微笑んでみせると、その子は恥ずかしそうに首をすくめる。あまりの可愛さに、その手を取って、握手した。
「本物のお姫様?」
子供がルシア王子に問うと、王子は、くすりと笑った。その子の頬にくっついていたパン屑を払い落としながら、こちらを見る。
「本物かどうかは、自分で考えてみろ。おまえはどう思うのだ」
静かに問い返した王子に、子供は少し恥ずかしそうに私を見た後、大きく頷いた。
「うん、本物のお姫様!初めて見た!すごく、奇麗なお姫様!」
無邪気に答える子供の頭を撫でたルシア王子が、集団の方へと戻っていき、その子の父親らしき男性に子供を返す。護衛が子供達の持っていた花を集め、ひとつの大きな花束にまとめていた。その花束を受け取った王子が、こちらへ戻ってくる。
「しばらく持ってやれば、やつらも喜ぶだろう」
その言葉に迷ったが、子供達皆が、嬉しそうな笑顔でこちらを見ているので、当然、断るわけにもいかず、腕いっぱいの花束に手を伸ばした。王子は私が持っていた真っ赤なダリアの花を取り、茎を短めに折ると、私の髪に差した。
きゃぁ!という黄色い声が上がり、思わず赤面する。
何故、こんな状況になっているのだ。
髪に花を差されるなんてキザなことをされ、拒否しようにも、両手に余る花束を抱えているから、手は使えない。それに、さっきの赤毛の子供が、自分の花だけ私の髪にあるのが嬉しいのか、しきりに私の方を指差して笑顔を振りまいているのが見えて、今更取ってがっかりさせるのも可哀想だ。
完全に場の空気に流されてしまっている自分の状態に当惑し、花束の影で深いため息をついた。
「なぜ顔を隠す。見せてみろ」
花束で顔を半分くらい隠しているのを咎められ、仕方なく花束を胸元に抱いて顔をあげた。ルシア王子がじっと私を見下ろした後、満足そうな笑みを浮かべると、そっと私の熱い頬に触れた。
「まことに愛らしい姫君だ」
お世辞ともつかぬ褒め言葉に、不本意にもさらに頬が熱くなり、思わず目を逸らした。
こういう言葉は、からかい上手な生粋のプレイボーイ、ユリアスから聞く分は笑って流せるが、この人が口にすると様になりすぎて、ストレートな口説き文句に聞こえてしまう。
私の背に手を回しエスコートする王子。
意志に反して動揺している自分が忌々しくて、気づかれないように小さくため息をついた。
客人として丁重に扱ってもらっているのには恐縮するけれど、ルシア王子と馴れ合うつもりは全然ないのに、完全に相手のペースに引き込まれてしまっている。しかも、これだけの人々、無邪気な子供達がいるところで、一応、命の恩人であるルシア王子に失礼なことは出来やしない。
八方塞がりとはまさにこのことだ。
爽やかな笑みを浮かべゆっくりと歩き出すルシア王子。促されその隣を歩きながら、歓声の渦巻く市場へと目を向けた。
迂闊にもルシア王子の前で泣き慰めてもらうという、自尊心の欠片もない過ちを犯してしまったからだ。あまりにも突然に多くの事が重なり、自分の心の内を誰にも明かすことが出来ないままラベロア王宮を出てしまった私。挙句に、ルシア王子に遭遇するという、全く想定外の状況に陥ったところに、その王子に、私の抱えている問題の核心をグサリと刺されてしまい、完全に自分のコントロールが出来なくなってしまった。
せっかく封印しようとしていた悲しみという箱を、勝手に開けられてしまったら、それはもう、吹き出すように溢れ出し、止まらなくなってしまった。散々泣いてようやく落ち着きを取り戻し、部屋に戻り鏡を見たら、目が兎のように赤くなっていた。
その後はずっと部屋に閉じ篭り、ジョセフィが軽い夕食を運んで来てくれた後は、疲れて眠ってしまった。
今朝は、悪夢にうなされた疲労が取れていないけれど、割と気持ちは落ち着いていた。理性を取り戻してくると、直面している現実を思い出し、そっちのほうが心配になる。
エリオットに預けていた黄色のカバーの絵本は部屋におかれていたものの、彼とはぐれてしまったのは間違いなさそうだった。わざわざ騒ぎ立てて、エリオットを私のごたごたに巻き込むのもよくないと判断し、彼の事はもう口にしないと決める。つまり、これからは自分でなんとかしなければならないのだ。
まるで当たり前のことのように、ジョセフィが女官達を従えて朝の身支度をやってくれているが、ここはエティグス王国。目下の問題は、以前も、ヴォルガの河の側の離宮で直面していたことと同じ。つまり、ここを出て、どうやって生きて行くか……
いくら考えたところで、辿り着く答えはただひとつ。
この離宮の主である、ルシア王子に話すしか、手段はない。
昨日、恋の病だのといきなり言い出され当惑したが、どうせまたラベロアに揺さぶりをかけようとか画策しようとしているのだろう。彼には、そういう用途に私を使うことは出来ないと、はっきり説明しなければならない。その後、ルシア王子が信用出来そうだったら、ここを出してもらう際に、可能なら、働き先を紹介してもらうとか、サポートをお願いしてみるのも有りかもしれない。何と言っても、他に頼れる人なんていないのだから。
ともかく、ちゃんと話さねば。
「セイラ様、そんな難しいお顔をされて、どうしたのですか」
ジョセフィに聞かれて、ハッと我に返る。鏡に映る自分と目が合い、気がつけば、随分とフォーマルなドレスを着せられているのに気がついた。
光沢のあるベルベット生地の衣装は、チョコレート色。胸の真下がキュッと締まっているエンパイアドレスで、ワインレッドのファーがぐるりと襟周りを囲んでいる。髪は金色のリボンを編み込むようにして結い上げられていた。ピンク色の真珠と金細工のヘッドドレスが、編み込まれた髪を留めるように差し込まれている。
湯浴みが終わった後、とにかく簡易な衣服をとお願いしたので、ちゃんと希望は伝わっているだろうと油断していたらこの有様。考え事をしていた私も悪いのだが、全然こちらの希望が伝わっておらず落胆する。
「ジョセフィ、どうしてこんな格好になっているの?私、ここに長々お世話になるつもりはないから、今日、ちゃんとルシア王子に話をしようと思ってたのに」
がっかりしてそう言うと、ジョセフィが鏡の中の私に笑いかける。
「今日はお出かけのご予定ですから」
「お出かけ?私が?」
驚いて目を見開くと、別の女官が私の耳にピンク色の真珠の耳飾りをかけるのが鏡に映る。ジョセフィは、私の左腕の包帯を巻き直しながら、ご機嫌な様子。
「エヴァールの港町の市場です。セイラ様の気晴らしになるだろうと、殿下のご配慮で、ご視察にご一緒されることになりました」
「港町の市場……」
「エヴァールは、交易船が来る街なので、市場には外国産の珍しいものも多いのですよ。観光名所で、とても活気があります」
まさか観光まがいの外出に連れて行かれることになるとは思っておらず、面食らってしまうが、当然ながら私に拒否権などはない。どちらにせよ、ルシア王子には会わねばならなかったので、断る理由もなかった。
私が黙っているので、どうやら、行きたくないとごねないらしいと気づいたジョセフィが喜んでいる様子だった。
部屋に運び込まれた朝食を軽くいただいて、まるで観光旅行にでも来ているかのような変な気分で、部屋を出る。ここには、護衛も監視兵もおらず、私はただ、ジョセフィと二人の女官に同行されているだけ。見方によっては、いつでも逃げ出せそうなほど緩い警備で気抜けしてしまう。
離宮の中をぐるりと回り、海とは反対側へ来ると、衛兵が左右に立つ大きな扉が開いていた。乳白色の大理石の階段を下りると、屋根が無いタイプの馬車が目に入る。藍色の馬車には金色で塗られた波模様の彫刻が施されていた。大柄で栗色に白い模様が交じった馬が一頭。足の下から蹄のところまで、白く長い距毛が生えて、えらく力持ちに見えた。
既に御者は乗っており、前に2名、後方には6名の護衛の騎士が、馬に乗って並んでいる。
これに乗るのか、と複雑な気持ちで馬車を眺めていると、私の手を持っていたジョセフィがその手を放す。見れば、隣にルシア王子が立っていた。紺色のシャツの上に、丈の長いワインレッドの上着を羽織っている。袖周りや、襟から胸に掛けて金の刺繍がいかにも王子様っぽい上着は、やっぱり宝塚の男役を連想させた。黒っぽいパンツにダークブラウンのロングブーツを履き、長いブロンドの髪はオールバックで後ろに流している。珍しく、マントは着用していなかったが、儀礼用のものかと見間違うような美しい装飾のついた剣を携えていた。
まるでディズニー映画に出てくる典型的な王子様だ。でも、感情の読み取れないポーカーフェイスは相変わらずだから、研ぎ澄まされた美貌がますます生身の人間に見えない。真っ青な目は笑ってはいないが、穏やかな表情で私を見下ろしている。
一応形式に乗っ取ってお辞儀をした後、何よりも先に絶対に言わねば、と思っていたことを口にする。
「昨日は、お見苦しいところをお見せして失礼しました。今日は、今後のことで、話を」
そこまで言いかけたところで、いきなり横抱きにされ、あっと思った時にはそのまま馬車に乗り込み、座席に下ろされる。すぐに王子が御者に手合図を送り、馬車が動き出す。
「いってらっしゃいませ」
ジョセフィや他、数人の見送りの女官がお辞儀をした。後方をついてくる護衛の騎士達を一度振り返って見た後、私はため息をついておとなしく座席に座り直す。
どうしても、ルシア王子のペースに巻き込まれ、思うように話さえ出来ない。
ゆったりと背もたれに寄りかかる王子が、風になびく髪を軽く掻き上げる。
「今日はこれから、エヴァールの街の様子を見せてやろう。ここは交易が盛んな港だ。きっとおまえが興味を持つようなものもあるだろう」
眩しそうに目を細めたルシア王子が、隣の私に笑いかける。ぎこちなく笑い返し、黙って前を見た。この、緊張感のないルシア王子の雰囲気が、不思議でしょうがない。以前はもっと、こちらの様子を見張っているような鋭い眼差しでヒヤヒヤさせられていたが、今回の彼は、随分とリラックスしているように見える。
沈黙しているのも居心地悪く、気を紛らわせようと無難な質問をぶつけてみた。
「視察はお好きなのですか」
私の質問に、ルシア王子は頷き、穏やかな笑みを向ける。
「年明け以降は、これまでのようにはいかなくなるが」
「年が明けたら、何かが変わるのですか」
「父王が退位するからだ」
それを聞いて、つまり、第一王子である彼が即位するのだと理解する。国王になったら王都でやるべきことが増えて、気軽にあちらこちらへ行く事ができないのだろう。
そう言えば、お妃教育の際にエティグス王国のことを学んだが、王子には、5人の兄弟が居たはずだ。そのうち3人が王女で、2人が王子。ルシア王子の父も、エスタスと同じく3人のお妃様がいると聞く。
「おまえに兄弟はいるのか」
私が考えていたことを逆に質問され、びっくりしたが、特に聞かれても困るようなことではないと思い、素直に答える。
「兄が一人います」
7歳上の年が離れた兄は、私が高校生の時に地方公務員になって家を出たので、年末年始くらいしか会えなかった。私がこの世界に戻ってくる少し前に、長年付き合っていた人と結婚し、もうすぐ赤ちゃんも生まれるはずだ。
私がここに居る限り、もう、会えないのだなと思い返し、急に寂しくなる。こんな気持ちになるのなら、いっその事、竪琴を壊してもとの世界に戻った方がよかったのかもしれない。
暗い気持ちになっていると、ルシア王子が注意深く私を眺めながら、更に質問してきた。
「おまえの生みの親は、遥か遠くの異国にいるのだろう。そこへ帰る事も考えたのか」
「はい。でも、遠すぎて、そう簡単には戻れないので……」
あまり詳しく聞かれると、異世界のことまで気付かれる恐れがあるので、このあたりで私の話は止めてもらわないとまずいと思い、話題を逸らした。
「ルシア王子のご兄弟は皆さん、王都にいらっしゃるんですか」
「いや。姉や妹は既に嫁ぎ、弟達はそれぞれの領地を治めさせている。王都に残るのは私だけだ。父も退位すれば、地方へ移り住むことになる」
「そうなのですか……」
そこで会話が途切れる。特に質問も思いつかず、黙っていると、ふいにルシア王子が私に問いかけた。
「新しい竪琴が納められたと聞いたが、置いてきたのか」
そんなことまで知っているんだと驚きながら、頷くだけに留める。魔法の竪琴であることを気付かれては困るので、この話題はあまり続けたくない。
「おまえがヴォルガの河からラベロアに戻った時、置いて行った竪琴だが……」
焼けて壊れかけていたという、ライアーのことだと気づき、ルシア王子の顔色を見る。あれが原因で、私が消えた後は戦争まであったと聞いた。
ルシア王子は、真っ青な目をまっすぐにこちらに向けた。
「あの竪琴が海を渡り、ラベロアの王都ルシュカの海域に入ったところで、軍船と見間違われ、ラベロアの監視船から火矢が放たれたと聞いた」
「えっ?」
「無事消火されたが、竪琴を梱包していた箱が傷んだため、新しい箱に移し替えてラベロア王宮へ届けたとの報告だった。だが、実際は、損壊していたと抗議文が届き、交戦となってしまったが……」
「それでは、港の側で船が火事になり、竪琴が壊れたということですか?」
エティグス王国で既に一部燃やすなどのダメージを与えた上で、送り返して来たと聞いていた私は、びっくりして聞き返した。ルシア王子は美しい眉をひそめ、苦笑する。
「おまえの奏でる竪琴の音色は美しかった。罪の無い竪琴を壊して送り返すなど、質の悪い指示はしておらぬ」
澄んだその青い目には陰りがなく、嘘を言っているようには見えない。
確かに、楽器を燃やし送り返すなど、ヒステリックな女性がやりそうな行動だし、冷静さの塊みたいなルシア王子が、そんな子供染みた嫌がらせをするとは思えなかった。
そんな事実を知らされると、ルシア王子に対しての拒否反応も和らいでくる。依然として、油断のならない相手なのには変わりないが、冷酷とか腹黒と決めつけていたことを、少し反省した。
誰だって、善悪の両方を持ち合わせている。よほど精神的に狂ってしまわない限り、悪魔みたいな人はいないはずだ。そして、正しい事だけ行い、その一生を終える人間なんていうのも、絶対に存在しないだろう。私自身、自分の黒い部分の存在くらい自覚している。
人は、きちんと向き合って話をしない限り、理解出来ないものだ、と心の中で呟いた。
ルシア王子も、所詮は一人の人間。
感情の読み取れない、人間味の欠けた人だと、頭から決めつけていたけれど、そんな彼の仮面の下を垣間見た気がした。
離宮から市街への整備された林道を通り、しばらくすると、一様に外壁を白く塗られた建物が密集している港町が見えてきた。先導している騎士の馬達に気がついたのか、通りにいた人々が端に寄り、こちらを見ている。
街の中に入って行くと、馬車を追いかけてくる子供達がたくさんいた。
ラベロア王国では、アンリとヘレンの幌馬車に隠れて青空市場に行った事しかなかったから、こうして街を見るのは初めての経験だった。たくさんの人々が、ルシア王子の名を呼んだり、手を振ったりしている。どうやらスターの登場を待ち構えていたファンの集団と言ってもいいくらい、彼の人気は確かなものらしい。
エティグス王国は敵国、と思っていたから、どうしてもルシア王子は悪者という印象だったが、彼も、この国では国民を守り国を繁栄させるという重要な役目を負う、王室の人間。当然、国民にとっては憧れ、尊敬の対象なのだ。女性達の黄色い声があちこちであがるのも、この容姿なら当たり前だろう。
やがて港が見えてくる。
たくさんのカラフルなテントが並び、買い物客で賑わっている様子。
そういえば、ラベロア王国で初めてルシア王子に会ったのも、青空市場だった。
馬車が止まると、一斉に人々が群がって来たので狼狽えてしまう。こんな至近距離まで一般庶民が近づくのを許されるのかと、国によって本当に文化が違うことに驚かされる。ラベロア王国では、一般庶民は絶対にカスピアンに近づくことは許されないだろう。そういう意味では、エティグス王国の治安はかなり良いということなのだろうか。
馬車の周りに詰め寄り、歓迎の声をあげる人々に圧倒されていると、王子が私に笑いかけた。
「ここからは歩く」
「えっ?」
この人ごみの中を歩くのかと驚いていると、ルシア王子は先に馬車を下り、私を振り返った。この高さからドレスで飛び降りるわけにもいかない。御者が台を出すのだろうと思い、端に立って御者を見ようとしたら、ルシア王子が私の腰を抱え上げ、赤い煉瓦畳の通路へ下ろす。
「……ありがとう、ございます」
エスコートされるのが当たり前になってしまっていることに焦るが、だからといってどうするわけにもいかないため、仕方なくお礼を述べた。
「お姫様!」
「お花をどうぞ!」
ドキンとして声の方を見ると、護衛に指示された距離のところに、大勢の子供達が集まっていた。手には色とりどりの花を持って、頬を紅潮させ、かなり興奮した様子。
私が外国からの客人だと思われているのは確からしい。まさか、自分がこんな歓迎を受けるとは思っていなかったため困惑する。だが、子供達相手に冷たい態度をとるわけにもいかない。私の事情なんて知らないわけだから、彼等の好意を突き放すわけにもいかず、呼びかけに応じ、微笑み返す。
「お花を!」
沢山の子供達が手に持った花をこちらへ差し出しているが、どうしたものか分からずにいると、ルシア王子が彼等のほうへ歩く。沸き上がる歓声を一身に浴びながら、その集団に近づくと、身を屈め、5、6歳くらいの男の子を抱き上げた。
その子を片腕に抱え、何か一言、二言、話しかけた王子が、私のほうへ戻ってくる。赤毛にそばかすで、歯の抜け替わり時期なのか、上下とも前歯がない、可愛らしい子だ。真っ赤な大輪のダリアを一本、小さな手に持っている。アクアマリンのような水色の瞳をキラキラさせて、私に向かってその花を差し出してくれた。お花を受け取って、ありがとう、と微笑んでみせると、その子は恥ずかしそうに首をすくめる。あまりの可愛さに、その手を取って、握手した。
「本物のお姫様?」
子供がルシア王子に問うと、王子は、くすりと笑った。その子の頬にくっついていたパン屑を払い落としながら、こちらを見る。
「本物かどうかは、自分で考えてみろ。おまえはどう思うのだ」
静かに問い返した王子に、子供は少し恥ずかしそうに私を見た後、大きく頷いた。
「うん、本物のお姫様!初めて見た!すごく、奇麗なお姫様!」
無邪気に答える子供の頭を撫でたルシア王子が、集団の方へと戻っていき、その子の父親らしき男性に子供を返す。護衛が子供達の持っていた花を集め、ひとつの大きな花束にまとめていた。その花束を受け取った王子が、こちらへ戻ってくる。
「しばらく持ってやれば、やつらも喜ぶだろう」
その言葉に迷ったが、子供達皆が、嬉しそうな笑顔でこちらを見ているので、当然、断るわけにもいかず、腕いっぱいの花束に手を伸ばした。王子は私が持っていた真っ赤なダリアの花を取り、茎を短めに折ると、私の髪に差した。
きゃぁ!という黄色い声が上がり、思わず赤面する。
何故、こんな状況になっているのだ。
髪に花を差されるなんてキザなことをされ、拒否しようにも、両手に余る花束を抱えているから、手は使えない。それに、さっきの赤毛の子供が、自分の花だけ私の髪にあるのが嬉しいのか、しきりに私の方を指差して笑顔を振りまいているのが見えて、今更取ってがっかりさせるのも可哀想だ。
完全に場の空気に流されてしまっている自分の状態に当惑し、花束の影で深いため息をついた。
「なぜ顔を隠す。見せてみろ」
花束で顔を半分くらい隠しているのを咎められ、仕方なく花束を胸元に抱いて顔をあげた。ルシア王子がじっと私を見下ろした後、満足そうな笑みを浮かべると、そっと私の熱い頬に触れた。
「まことに愛らしい姫君だ」
お世辞ともつかぬ褒め言葉に、不本意にもさらに頬が熱くなり、思わず目を逸らした。
こういう言葉は、からかい上手な生粋のプレイボーイ、ユリアスから聞く分は笑って流せるが、この人が口にすると様になりすぎて、ストレートな口説き文句に聞こえてしまう。
私の背に手を回しエスコートする王子。
意志に反して動揺している自分が忌々しくて、気づかれないように小さくため息をついた。
客人として丁重に扱ってもらっているのには恐縮するけれど、ルシア王子と馴れ合うつもりは全然ないのに、完全に相手のペースに引き込まれてしまっている。しかも、これだけの人々、無邪気な子供達がいるところで、一応、命の恩人であるルシア王子に失礼なことは出来やしない。
八方塞がりとはまさにこのことだ。
爽やかな笑みを浮かべゆっくりと歩き出すルシア王子。促されその隣を歩きながら、歓声の渦巻く市場へと目を向けた。
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