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極道との出会い
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磯本千尋は中学3年最後の大会後に、全国でも有数の名門校からサッカー部へのスカウトを受けた。その時、プロサッカー選手への夢を抱き、自分の全てをその目標に捧げようと決意していた。
期待に胸を膨らませて入学して数ヶ月は経過したある日、事件は起こった。いつも通りの練習中に起きた乱闘騒ぎが全てを狂わせた。
数人が重傷を負い、千尋は強制的に退部させられた。サッカーを失った日から人生は暗転していくことになった。
部活を除名されてはいるが、授業料は免除のままで寮にもまだ住めていた。そんな日々が悶々と過ぎていく中、何故自分がここにいるのかわからなくなった。心は虚ろで何もかもが意味を失い、まさしく抜け殻という言葉がしっくりきていた。
「何で俺この学校にいるんだろな…もういる意味ないよな…」
間も無くして千尋は学校を去った。
そして、自らの生活費を稼ぐために盗みや万引きを繰り返し、夜の街で暴力を振るって金を巻き上げるようになった。
皮肉にもサッカーに没頭して鍛え上げた体は、今では街の不良たちとの喧嘩で生かされていた。しかし、その暴力の連鎖は更なる深みに引きずり込んでいった。
噂は噂を呼び、千尋の悪評は広まっていった。地元の喧嘩自慢や半グレの下っ端までも絡んでくる様になった。それでも一人でも多くの敵を返り討ちにし生きるための金を巻き上げていた。
千尋の行動はいつしか極道の人間にも知ることとなり、これまでの行動は更なる危険な状況に陥れることになった。
そんな日々が続いたある日の夜。いつもの様に、街中で不良たちとの喧嘩をしている最中のことだった。
「よっ、兄ちゃん元気いいな!」
千尋は声の主の方向に目を向けた。
その男性は、一般人とは掛け離れた雰囲気をまとっていた。高級そうな黒スーツに身を纏っている男は、千尋のことを知っているようだった。
「最近この辺で暴れている磯本君だろう?」
その返答に少し戸惑いながらも、うなずいた。
その男は身長は190程の高身長。服の上からでもわかるほどに鍛え上げられた筋肉。鼻には横一文字の切り傷。
雰囲気で極道の人間だと察知した。
「何だオッサン?俺今忙しいんだけど」
「それより、君が最近この辺で暴れてる磯本君であってる?」
「あぁそうだけど」
千尋の返答に対して満面の笑みを浮かべるその男。するとポケットからスマホを取り出しどこかへ電話をかけ始めた。
「明智の兄貴、噂の少年見つけました!とりあえず組に連れ帰ります」
「手間かけたな杉山。そのガキ根性ありそうか?」
「ガタイも良いですし喧嘩なれしてそうです。ただ、目上の人間に対する態度ではないっすね」
そう言い、杉山と呼ばれた男は通話を切った。
電話をスピーカーで話していたせいで、内容は丸わかりだ。それに加えて、電話の内容から完全に極道の人間だと確信した。
そして慌てて頭を下げる千尋の姿は、杉山の目には滑稽に映った。
「すみません。けど、俺はアンタ達に迷惑かけてないですよ」
杉山は笑みを消し、冷静な表情で言った。
「確かに君は俺たちに迷惑をかけていない。むしろこの辺の不良を取り締まってくれて助かっている部分もある」
「なら俺は貴方っ」
その反論を遮るように、大きな声で続きを話し始めるその男。
「ただ、ここは俺たちの島だ。君が暴れ回ると、他の人々が怖がって近寄らなくなる。それは困るんだよ」
千尋にとっては初めての体験だった。心の底から恐怖で身体が震え始めた。
「それに君、だいぶ色んな人からお金巻き上げてるよね!そのケジメはつけないと」
あぁ、やばい…完全に敵に回したらいけない人達に目をつけられた。俺死ぬのかな…。
悪い考えが頭をよぎると同時に、杉山と呼ばれた男が凄まじい勢いで千尋に殴り掛ってきた。
「よし、逃げるか」
そう呟き、千尋はその場から猛ダッシュで立ち去った。
期待に胸を膨らませて入学して数ヶ月は経過したある日、事件は起こった。いつも通りの練習中に起きた乱闘騒ぎが全てを狂わせた。
数人が重傷を負い、千尋は強制的に退部させられた。サッカーを失った日から人生は暗転していくことになった。
部活を除名されてはいるが、授業料は免除のままで寮にもまだ住めていた。そんな日々が悶々と過ぎていく中、何故自分がここにいるのかわからなくなった。心は虚ろで何もかもが意味を失い、まさしく抜け殻という言葉がしっくりきていた。
「何で俺この学校にいるんだろな…もういる意味ないよな…」
間も無くして千尋は学校を去った。
そして、自らの生活費を稼ぐために盗みや万引きを繰り返し、夜の街で暴力を振るって金を巻き上げるようになった。
皮肉にもサッカーに没頭して鍛え上げた体は、今では街の不良たちとの喧嘩で生かされていた。しかし、その暴力の連鎖は更なる深みに引きずり込んでいった。
噂は噂を呼び、千尋の悪評は広まっていった。地元の喧嘩自慢や半グレの下っ端までも絡んでくる様になった。それでも一人でも多くの敵を返り討ちにし生きるための金を巻き上げていた。
千尋の行動はいつしか極道の人間にも知ることとなり、これまでの行動は更なる危険な状況に陥れることになった。
そんな日々が続いたある日の夜。いつもの様に、街中で不良たちとの喧嘩をしている最中のことだった。
「よっ、兄ちゃん元気いいな!」
千尋は声の主の方向に目を向けた。
その男性は、一般人とは掛け離れた雰囲気をまとっていた。高級そうな黒スーツに身を纏っている男は、千尋のことを知っているようだった。
「最近この辺で暴れている磯本君だろう?」
その返答に少し戸惑いながらも、うなずいた。
その男は身長は190程の高身長。服の上からでもわかるほどに鍛え上げられた筋肉。鼻には横一文字の切り傷。
雰囲気で極道の人間だと察知した。
「何だオッサン?俺今忙しいんだけど」
「それより、君が最近この辺で暴れてる磯本君であってる?」
「あぁそうだけど」
千尋の返答に対して満面の笑みを浮かべるその男。するとポケットからスマホを取り出しどこかへ電話をかけ始めた。
「明智の兄貴、噂の少年見つけました!とりあえず組に連れ帰ります」
「手間かけたな杉山。そのガキ根性ありそうか?」
「ガタイも良いですし喧嘩なれしてそうです。ただ、目上の人間に対する態度ではないっすね」
そう言い、杉山と呼ばれた男は通話を切った。
電話をスピーカーで話していたせいで、内容は丸わかりだ。それに加えて、電話の内容から完全に極道の人間だと確信した。
そして慌てて頭を下げる千尋の姿は、杉山の目には滑稽に映った。
「すみません。けど、俺はアンタ達に迷惑かけてないですよ」
杉山は笑みを消し、冷静な表情で言った。
「確かに君は俺たちに迷惑をかけていない。むしろこの辺の不良を取り締まってくれて助かっている部分もある」
「なら俺は貴方っ」
その反論を遮るように、大きな声で続きを話し始めるその男。
「ただ、ここは俺たちの島だ。君が暴れ回ると、他の人々が怖がって近寄らなくなる。それは困るんだよ」
千尋にとっては初めての体験だった。心の底から恐怖で身体が震え始めた。
「それに君、だいぶ色んな人からお金巻き上げてるよね!そのケジメはつけないと」
あぁ、やばい…完全に敵に回したらいけない人達に目をつけられた。俺死ぬのかな…。
悪い考えが頭をよぎると同時に、杉山と呼ばれた男が凄まじい勢いで千尋に殴り掛ってきた。
「よし、逃げるか」
そう呟き、千尋はその場から猛ダッシュで立ち去った。
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