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第六章 黄泉つ神々
8 天と地の約束
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黄泉路を引き返し、豊葦原に返っても、若き天津神の嘆きは留まることを知らなかった。
己の過ちにより喪ってしまった愛しい妻を取り戻す術がもうないと絶望しているのだ。
夜明け間近の静かな草原に、ただただ嗚咽が漏れる。
――泣くな、日嗣よ。そなたとともに在る我の心も張り裂けそうだ。
「黄泉国にも妻はおりませんでした。私にはもう、彼女を取り戻す術がないのです」
心優しき天孫の日嗣は、すでに狂気に呑まれかけていた。
それほどに、妻を愛しているのだ。
――否。そなたの妻は、我が妻とともに在る。我にはわかる。
「祖神様……?」
――この豊葦原の何処かに、いずれ黄泉返る。諦めることはない。
「ならば、私も黄泉返ります。禍つ霊の言霊が、私を殺してくれる。姉比売に感謝せねば。私も咲耶を追います」
――黄泉返りを選べば、そなたは神ではなくなる。それでもよいと?
「愛しい者が傍らにおらぬのに、死なぬこの身が何になりましょう。私の愚かさ故に神去った妻と今一度まみえるためならば、この命など捨て去っても構いませぬ。彼女は、私の対の命なのだから」
妻を求める心が、自分と重なる。
憐れな天孫の日嗣は、自分の末でもある。
何故、我らは同じ過ちを繰り返してしまうのか。
――我とともに往くか? 我が妻がそなたの妻を連れて往った。ともに追えば、必ずや視いだせるであろう。
天孫の日嗣の瞳に、僅かに希望が宿る。
「ええ、ええ。仰せの通りに!」
――だが、永い道往きになるであろう。御治を拒めば、禍つ言霊がそなたの命数を食らいつくす。苦しみながら神去ることになる。
「すでに永劫の苦しみを味わっているのです。追って往けるのならば、苦しみも痛みも、喜びとなりましょう」
僅かな希望に縋らねばいられぬほど、壊れかけた心。
憐れだった。
それでも、その心を、神霊を利用してまで己のが妻を追う自分よりは、ましであろう。
今更に追っても、妻は自分を許すだろうか。
愚かな自分を、過ちを、全て忘れ去っていてくれたなら、再びともに在れるのか。
そんな不安が心をよぎる。
もしも許されるなら、神であることを捨て去り、只人として生きていい。
神威も神気も記憶も、永遠に捨て去って、ただ一途に、愛するためだけに傍に在ってみせる。
――ならば、ともに往こう。先の世で、愛しき妻を取り戻すのだ。
そして、それは確かに永い道往きとなった。
「御子様、何処におわしたのですか、何故、祖神様のお身体に――」
宇受売の問いに、慎也の中の日嗣の御子は咲った。
「待てないと、言ったであろう? だから、追いかけたのだ。私も祖神伊邪那岐様の神威をお借りして、伊邪那美様と同じ手妻で現世に潜んでいたのだ。豊葦原に女神達が黄泉返るのを待って、我らも現世に現象した。祖神様の神霊を抜き取られた時点では、私は未だ目覚めることは叶わなかった。真名を喚ばれて、目覚めたのだ」
真っ直ぐに、天孫の日嗣――瓊瓊杵命が美咲の中の木之花咲耶比売をとらえた。
驚きで青ざめたかつての妻を視つめ、それから、その後ろにいる荒ぶる神を視やる。
「我が祖神で在らせられる最後の貴神、建速須佐之男命に奏上致します。暫し、我が妻と語らう暇をお与え下さい」
「許す。祖神伊邪那岐の神霊を取り戻すまで、語らう暇はあろう。神代での悔いを改めるがいい」
荒ぶる神はそう告げて美咲の身体から離れた。
慎也の中の瓊瓊杵が、美咲の中の木之花咲耶比売に近づく。
黄泉日狭女も闇山津見もすでに比売神から離れていた。
「瓊瓊杵様……」
「咲耶……」
愛しさを隠さずに目合う二柱の神。
近づきたいのに、それ以上近づけぬようにどちらも動かない。
「木之花咲耶――それは、そなたの名ではなかったのか?」
瓊瓊杵が躊躇いがちに問う。
木之花咲耶比売は、何故そのようなことを問うのかと訝しみながらも答える。
「婚儀の際に、名を入れ替えたのです。姉からの祝いだと」
「だが、初めて出逢った時も、そなたは名を神阿多都比売と申した。私は、あの日大山津見命に会う予定だったので、その比売の名が木之花咲耶比売だと聞いていたのだ」
「姉に頼まれていたのです。あの日は自分の振りをしてほしいと。久方ぶりの姉と背の君の逢瀬の日だったのです。私の本当の名は、神鹿屋津比売、またの名は木之花知流比売――木之花咲耶比売は、本来、姉の名でございました」
「根の堅州国の八島士奴美殿を知っているか? かの神が、姉比売の連れ合いか」
「は、はい。何故それをご存じなのですか? 父でさえ知らなかったものを」
力無く、瓊瓊杵は嗤った。
「瓊瓊杵様……?」
「初めから、そう、聞けば良かったのだ。私は、何という愚か者なのだ……」
片手で顔を覆う瓊瓊杵は、苦悩を色濃く宿していた。
木之花咲耶比売は、戸惑いながらもさらに近づく。
「瓊瓊杵様……御治を拒まれたのですか……? 貴方様は天津神、しかも天孫の日嗣で在らせられるのに、神去られるなど……何故に……」
「そなたのいない世界に、何の意味がある? だから、そなたを取り戻すべく、黄泉路も越えた。すでにそなたがいないと聞かされ、どれほど私が絶望したか……それでも、諦めることなどできなかった。黄泉返るそなたを待つ暇さえ惜しかった。だから、わたしも祖神伊邪那岐様の神威を借りて、記憶も神威も失うことなくそなたを追ったのだ」
「ああ……何と言うことを……豊葦原を治める日嗣の御子様が私などを追って神去るなど、申し訳ありませぬ。天に対する不敬でございました。お許しください――」
「許しを乞うのは私の方だ。心ない言霊でそなたを傷つけた。そなたを喪って、姉比売に会って、誤解だと気づいたのだ。どんなに自分の愚かさを悔いたことか――」
「もう十分です。私を追って下さったと聞いただけで十分ですのに」
「私を許してくれるのか?」
「滅相もございません。散る花のようにほんの一時しかお傍にいられなかった私こそお許しください。姉のように、強く、気高く、美しく在れればよかったものを。姉であれば、このようなことにならず貴方様をお幸せにできたのにと、いつも悔いておりました」
「何故、そのようなことを言う?」
瓊瓊杵が手を伸ばし、咲耶比売の頬をとらえる。
「私の中のそなたは、いつも咲く花のように美しかった。初めて出逢ったあの時から、私にはそなたしか目に入らなかった。だからこそ、そなたの姉にともにと言われても断ったのだ。
咲耶、逢いたかった……そなたに、とても逢いたかった……」
「ああ……瓊瓊杵様……」
後はもう、言霊にならなかった。
瓊瓊杵が木之花咲耶比売を引き寄せる。
初めて出逢った時のように、唇を奪い、逃げていかぬよう抱きしめる。
抱き合い、触れ合う二柱の神々はかつてのように幸福だった。
「誤解が解けたようだな」
宇受売の傍らの神田比古が咲った。
「ああ、そのような些細な誤解で、お二方が神去らねばならなかったとは……お痛わしいことだ」
「だが、こうして誤解も解け、全ては正された。視ろ、あの幸せそうな日嗣の御子を。よかったではないか」
楽天的な神田比古に、宇受売は息をつく。
「そなたは相変わらずだな」
「俺は変わらんよ。そなたもな。相も変わらず難しく考えすぎる」
「誰のせいだと――!」
思わず荒げた声音に、はっと宇受売はそれ以上の言霊をなくす。
神田比古は、じっとそれを視つめていた。
「俺のせいか? 後悔しているのか? 俺の妻問いを受けたことを。誓約など、しなければよかったと――」
「――そういうそなたはどうなのだ。幸せだったと言いながら、私の処に戻ってくることを拒んだのはそなたではないか。天へ返ると思っただと? もしも神去ったのが私なら、そなたは諦めて別の女神を求めたのか? ならば、そなたは私の愛も己の愛もみくびっていたのだ。御子様のように、地の果て、闇の底まで追いかけてくるほどの気持ちがないのなら、何故私に妻問いしたのだ!?」
「宇受売……」
宇受売は言いながらも、何故このような言霊を向けてしまうのか苛立っていた。
こんな再会を望んでいたのではない。
あの日の誓いに何の意味もなかったら、自分は今ここにいなかった。
伝わらない想いにこれ以上何を語るべきなのかわからない。
「宇受売」
頬に触れる神田比古の手から逃れようと容を背ける。
「触れるな……」
「無理だ。そなたを前に、俺が触れずにいられたことなどあったか? 片時も離れたくはなかった。いつも、そなたを視て、触れていたかった。そなたとて俺をみくびっている。俺がどんな想いで黄泉返ることを諦めたのか、そなたにはわかるまいよ。我々は、きっと自分の想いに囚われすぎて、互いの心など視ていなかったのだろう」
両手で頬を引き寄せられて、宇受売は睨みつけるようにかつての夫を視上げる。
その瞳から、涙が零れた。
「苦しめるつもりなどなかった。だが、ずっと苦しめていたのだな……すまなかった」
「そうだ、そなたのせいで、私はずっと苦しかったのだ。ずっと、ずっとだ――」
神田比古が頬の涙を拭い、優しく宇受売を抱きしめる。
「ああ。全て俺が悪い。泣くな、宇受売」
懐かしい感触に、宇受売は神田比古にしがみついて泣き続けた。
ようやく、戻ってきたと。
己の過ちにより喪ってしまった愛しい妻を取り戻す術がもうないと絶望しているのだ。
夜明け間近の静かな草原に、ただただ嗚咽が漏れる。
――泣くな、日嗣よ。そなたとともに在る我の心も張り裂けそうだ。
「黄泉国にも妻はおりませんでした。私にはもう、彼女を取り戻す術がないのです」
心優しき天孫の日嗣は、すでに狂気に呑まれかけていた。
それほどに、妻を愛しているのだ。
――否。そなたの妻は、我が妻とともに在る。我にはわかる。
「祖神様……?」
――この豊葦原の何処かに、いずれ黄泉返る。諦めることはない。
「ならば、私も黄泉返ります。禍つ霊の言霊が、私を殺してくれる。姉比売に感謝せねば。私も咲耶を追います」
――黄泉返りを選べば、そなたは神ではなくなる。それでもよいと?
「愛しい者が傍らにおらぬのに、死なぬこの身が何になりましょう。私の愚かさ故に神去った妻と今一度まみえるためならば、この命など捨て去っても構いませぬ。彼女は、私の対の命なのだから」
妻を求める心が、自分と重なる。
憐れな天孫の日嗣は、自分の末でもある。
何故、我らは同じ過ちを繰り返してしまうのか。
――我とともに往くか? 我が妻がそなたの妻を連れて往った。ともに追えば、必ずや視いだせるであろう。
天孫の日嗣の瞳に、僅かに希望が宿る。
「ええ、ええ。仰せの通りに!」
――だが、永い道往きになるであろう。御治を拒めば、禍つ言霊がそなたの命数を食らいつくす。苦しみながら神去ることになる。
「すでに永劫の苦しみを味わっているのです。追って往けるのならば、苦しみも痛みも、喜びとなりましょう」
僅かな希望に縋らねばいられぬほど、壊れかけた心。
憐れだった。
それでも、その心を、神霊を利用してまで己のが妻を追う自分よりは、ましであろう。
今更に追っても、妻は自分を許すだろうか。
愚かな自分を、過ちを、全て忘れ去っていてくれたなら、再びともに在れるのか。
そんな不安が心をよぎる。
もしも許されるなら、神であることを捨て去り、只人として生きていい。
神威も神気も記憶も、永遠に捨て去って、ただ一途に、愛するためだけに傍に在ってみせる。
――ならば、ともに往こう。先の世で、愛しき妻を取り戻すのだ。
そして、それは確かに永い道往きとなった。
「御子様、何処におわしたのですか、何故、祖神様のお身体に――」
宇受売の問いに、慎也の中の日嗣の御子は咲った。
「待てないと、言ったであろう? だから、追いかけたのだ。私も祖神伊邪那岐様の神威をお借りして、伊邪那美様と同じ手妻で現世に潜んでいたのだ。豊葦原に女神達が黄泉返るのを待って、我らも現世に現象した。祖神様の神霊を抜き取られた時点では、私は未だ目覚めることは叶わなかった。真名を喚ばれて、目覚めたのだ」
真っ直ぐに、天孫の日嗣――瓊瓊杵命が美咲の中の木之花咲耶比売をとらえた。
驚きで青ざめたかつての妻を視つめ、それから、その後ろにいる荒ぶる神を視やる。
「我が祖神で在らせられる最後の貴神、建速須佐之男命に奏上致します。暫し、我が妻と語らう暇をお与え下さい」
「許す。祖神伊邪那岐の神霊を取り戻すまで、語らう暇はあろう。神代での悔いを改めるがいい」
荒ぶる神はそう告げて美咲の身体から離れた。
慎也の中の瓊瓊杵が、美咲の中の木之花咲耶比売に近づく。
黄泉日狭女も闇山津見もすでに比売神から離れていた。
「瓊瓊杵様……」
「咲耶……」
愛しさを隠さずに目合う二柱の神。
近づきたいのに、それ以上近づけぬようにどちらも動かない。
「木之花咲耶――それは、そなたの名ではなかったのか?」
瓊瓊杵が躊躇いがちに問う。
木之花咲耶比売は、何故そのようなことを問うのかと訝しみながらも答える。
「婚儀の際に、名を入れ替えたのです。姉からの祝いだと」
「だが、初めて出逢った時も、そなたは名を神阿多都比売と申した。私は、あの日大山津見命に会う予定だったので、その比売の名が木之花咲耶比売だと聞いていたのだ」
「姉に頼まれていたのです。あの日は自分の振りをしてほしいと。久方ぶりの姉と背の君の逢瀬の日だったのです。私の本当の名は、神鹿屋津比売、またの名は木之花知流比売――木之花咲耶比売は、本来、姉の名でございました」
「根の堅州国の八島士奴美殿を知っているか? かの神が、姉比売の連れ合いか」
「は、はい。何故それをご存じなのですか? 父でさえ知らなかったものを」
力無く、瓊瓊杵は嗤った。
「瓊瓊杵様……?」
「初めから、そう、聞けば良かったのだ。私は、何という愚か者なのだ……」
片手で顔を覆う瓊瓊杵は、苦悩を色濃く宿していた。
木之花咲耶比売は、戸惑いながらもさらに近づく。
「瓊瓊杵様……御治を拒まれたのですか……? 貴方様は天津神、しかも天孫の日嗣で在らせられるのに、神去られるなど……何故に……」
「そなたのいない世界に、何の意味がある? だから、そなたを取り戻すべく、黄泉路も越えた。すでにそなたがいないと聞かされ、どれほど私が絶望したか……それでも、諦めることなどできなかった。黄泉返るそなたを待つ暇さえ惜しかった。だから、わたしも祖神伊邪那岐様の神威を借りて、記憶も神威も失うことなくそなたを追ったのだ」
「ああ……何と言うことを……豊葦原を治める日嗣の御子様が私などを追って神去るなど、申し訳ありませぬ。天に対する不敬でございました。お許しください――」
「許しを乞うのは私の方だ。心ない言霊でそなたを傷つけた。そなたを喪って、姉比売に会って、誤解だと気づいたのだ。どんなに自分の愚かさを悔いたことか――」
「もう十分です。私を追って下さったと聞いただけで十分ですのに」
「私を許してくれるのか?」
「滅相もございません。散る花のようにほんの一時しかお傍にいられなかった私こそお許しください。姉のように、強く、気高く、美しく在れればよかったものを。姉であれば、このようなことにならず貴方様をお幸せにできたのにと、いつも悔いておりました」
「何故、そのようなことを言う?」
瓊瓊杵が手を伸ばし、咲耶比売の頬をとらえる。
「私の中のそなたは、いつも咲く花のように美しかった。初めて出逢ったあの時から、私にはそなたしか目に入らなかった。だからこそ、そなたの姉にともにと言われても断ったのだ。
咲耶、逢いたかった……そなたに、とても逢いたかった……」
「ああ……瓊瓊杵様……」
後はもう、言霊にならなかった。
瓊瓊杵が木之花咲耶比売を引き寄せる。
初めて出逢った時のように、唇を奪い、逃げていかぬよう抱きしめる。
抱き合い、触れ合う二柱の神々はかつてのように幸福だった。
「誤解が解けたようだな」
宇受売の傍らの神田比古が咲った。
「ああ、そのような些細な誤解で、お二方が神去らねばならなかったとは……お痛わしいことだ」
「だが、こうして誤解も解け、全ては正された。視ろ、あの幸せそうな日嗣の御子を。よかったではないか」
楽天的な神田比古に、宇受売は息をつく。
「そなたは相変わらずだな」
「俺は変わらんよ。そなたもな。相も変わらず難しく考えすぎる」
「誰のせいだと――!」
思わず荒げた声音に、はっと宇受売はそれ以上の言霊をなくす。
神田比古は、じっとそれを視つめていた。
「俺のせいか? 後悔しているのか? 俺の妻問いを受けたことを。誓約など、しなければよかったと――」
「――そういうそなたはどうなのだ。幸せだったと言いながら、私の処に戻ってくることを拒んだのはそなたではないか。天へ返ると思っただと? もしも神去ったのが私なら、そなたは諦めて別の女神を求めたのか? ならば、そなたは私の愛も己の愛もみくびっていたのだ。御子様のように、地の果て、闇の底まで追いかけてくるほどの気持ちがないのなら、何故私に妻問いしたのだ!?」
「宇受売……」
宇受売は言いながらも、何故このような言霊を向けてしまうのか苛立っていた。
こんな再会を望んでいたのではない。
あの日の誓いに何の意味もなかったら、自分は今ここにいなかった。
伝わらない想いにこれ以上何を語るべきなのかわからない。
「宇受売」
頬に触れる神田比古の手から逃れようと容を背ける。
「触れるな……」
「無理だ。そなたを前に、俺が触れずにいられたことなどあったか? 片時も離れたくはなかった。いつも、そなたを視て、触れていたかった。そなたとて俺をみくびっている。俺がどんな想いで黄泉返ることを諦めたのか、そなたにはわかるまいよ。我々は、きっと自分の想いに囚われすぎて、互いの心など視ていなかったのだろう」
両手で頬を引き寄せられて、宇受売は睨みつけるようにかつての夫を視上げる。
その瞳から、涙が零れた。
「苦しめるつもりなどなかった。だが、ずっと苦しめていたのだな……すまなかった」
「そうだ、そなたのせいで、私はずっと苦しかったのだ。ずっと、ずっとだ――」
神田比古が頬の涙を拭い、優しく宇受売を抱きしめる。
「ああ。全て俺が悪い。泣くな、宇受売」
懐かしい感触に、宇受売は神田比古にしがみついて泣き続けた。
ようやく、戻ってきたと。
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