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オワリ
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新しい生活が始まる前の日。
私はそれなりの人間達に囲まれ、出発する事ができるらしい。
両親、使用人、友達、ボランティア精神で救った元奴隷。意外と思っていたよりは、私は人に好かれていたらしかった。
もうきっとおいそれと、私がここにやってくることはないのだろう。
慣れ親しんだ景色だ、それなりに感傷に浸ったって誰も責めはしない。
「お人好しだよね、意外と」
「私が?」
一番気心の知れた、スラム街の友人が言った。彼と会うのはこれで最後。もしかしたらもう1度くらい会えるかも知れない。けれどその1度に縋らないのが私だ。未練は残さない。
「まあ、そのまま突っ走れば?」
きっと彼なりのエールだ。私はそれを受け取った。
「そうね、私の名が歴史に残るぐらいには私は私の道を突き進むわ」
「本当にやりそうだ」
じゃあな、と言って彼は皆の渦に巻き込まれて行った。そうして私は別れを告げていく。
私は泣いて笑って送り出そうとしてくれる、彼らの子供たちが幸せを感じられるような世界にしたい。
そのために王妃というのは、便利な道具になるだろう。
ロマンは民を幸せに出来るのだろうか。幸せに出来ないのであれば、私は勝手に貴方の物を取り上げちゃうよ。そして、私が幸せにしてしまう。そんな事にはならないといいな。
馬車へ乗り込む。馬が走り出すと、王都が段々と離れていった。
マリクが、私の手を握りしめて言った。
「不安かい?」
「まさか、私が?」
そう言うと思っていたと、彼は笑った。不安を感じない人間はいない筈だけど、私は不思議と不安と共に楽しみでもあった。
「幸せにできるかしら」
「きっとできるさ」
彼は私の言いたいことをすぐに理解してくれる。頭の回転が速い人だ。
「幸せにならないと」
「そうね。貴方に幸せにしてもらわないと」
彼は私を甘やかすようなキスをした。触れた唇からドロドロに溶けてしまいそう。
「何よりも愛するよ」
私を愛せる彼なら、これから出来る子供だって心の底から愛してくれるだろう。
全ての人に幸福を願う。
「死ぬまでずっとね」
「ああ、そのつもりさ」
私はそれなりの人間達に囲まれ、出発する事ができるらしい。
両親、使用人、友達、ボランティア精神で救った元奴隷。意外と思っていたよりは、私は人に好かれていたらしかった。
もうきっとおいそれと、私がここにやってくることはないのだろう。
慣れ親しんだ景色だ、それなりに感傷に浸ったって誰も責めはしない。
「お人好しだよね、意外と」
「私が?」
一番気心の知れた、スラム街の友人が言った。彼と会うのはこれで最後。もしかしたらもう1度くらい会えるかも知れない。けれどその1度に縋らないのが私だ。未練は残さない。
「まあ、そのまま突っ走れば?」
きっと彼なりのエールだ。私はそれを受け取った。
「そうね、私の名が歴史に残るぐらいには私は私の道を突き進むわ」
「本当にやりそうだ」
じゃあな、と言って彼は皆の渦に巻き込まれて行った。そうして私は別れを告げていく。
私は泣いて笑って送り出そうとしてくれる、彼らの子供たちが幸せを感じられるような世界にしたい。
そのために王妃というのは、便利な道具になるだろう。
ロマンは民を幸せに出来るのだろうか。幸せに出来ないのであれば、私は勝手に貴方の物を取り上げちゃうよ。そして、私が幸せにしてしまう。そんな事にはならないといいな。
馬車へ乗り込む。馬が走り出すと、王都が段々と離れていった。
マリクが、私の手を握りしめて言った。
「不安かい?」
「まさか、私が?」
そう言うと思っていたと、彼は笑った。不安を感じない人間はいない筈だけど、私は不思議と不安と共に楽しみでもあった。
「幸せにできるかしら」
「きっとできるさ」
彼は私の言いたいことをすぐに理解してくれる。頭の回転が速い人だ。
「幸せにならないと」
「そうね。貴方に幸せにしてもらわないと」
彼は私を甘やかすようなキスをした。触れた唇からドロドロに溶けてしまいそう。
「何よりも愛するよ」
私を愛せる彼なら、これから出来る子供だって心の底から愛してくれるだろう。
全ての人に幸福を願う。
「死ぬまでずっとね」
「ああ、そのつもりさ」
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