王子様は悪徳令嬢を溺愛する!

リカ

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そうして、私達は正式に婚約者になった。私の親への挨拶も終わらせた。母は涙ぐんで、本当に私で良いのかマリクに何度も確認をしていた。失礼な母だ。
父は好きにしろと、もはや呆れている。娘が一国の王子を射止めたんだよ、もっと喜んでくれたっていいじゃないか。
あと1ヶ月で、私はマリクの国へ嫁入りの準備をするために行く。
そうなれば、私はもうこの国においそれと近寄る事など叶わなくなる。こんな風に気楽には。

そうなる前に私は片付けなければならない問題がいくつかある。私が仲良くしていた友人との別れ、そしてロマンの件だろう。スラムの子達は、最後の日にちょっと挨拶する程度でいい。彼らは彼らの生活がある。噂ではもう知っているだろうし、ロマンは私がどうにかしなければならない。どこぞの令嬢といつ何をしたって構わないけれど、ああ付きまとわられるのは御免だ。最近はご無沙汰だけれど、彼のお付きの執事が泣きに私のアパートメントにやって来る。何年かは一緒の屋根の下で眠っていた仲だ。どうにかしてあげる位の甲斐性は持ち合わせている。
私は朝早くにアパートメントを抜け出して、彼が眠る寝室にやってきた。

「おはよう、ロマン」

「なぜ、君がここに」

起き上がった彼は、ギョロギョロとした目を見開いた。前に見かけた時より骨と皮みたいになっている。

「なあに、幽霊でも見た顔しちゃって」

「ごめん」

「可哀想な貴方を救ってあげに来たのよ」

「婚約を考え直してくれたのか」

「いいえ、婚約は断るわ」

「なぜ、僕は君がいないと生きていけないというのに」

「生きていけたじゃない。ほら私がこの空間にいようがいないが、貴女は空気を吸ってはいているわ」

「それでもだめだ。」

彼は私の手を縋るように取った。惨めね。遊び人として名を馳せていたのが懐かしいわ。

「貴方じゃ私を受け止められないの」

「なぜ、」

「私は貴方を愛していないもの」

彼は酷く傷ついた顔をした。そうか、私が貴方を愛していないと言うことはハッキリと言っていなかったかも知れない。だから付け上がるのか。

「そうか。君は僕を愛してはくれないのか」

「そうよ、私はあなたを愛していないのよ」

私は彼の寝室を出る。最後に小さな声で「、ありがとう」と呟いたのは聞かなかったことにしてあげる。せいぜい幸せになりなよ、おバカさん。
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