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ほんの少し楽しかった話

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私は珍しくロマンから届いた、手紙に目を通す気になった。女々しい手紙でも見て、私が今いかに幸せか、確かめてあげるような気分だったのだ。
ロマンの手紙はいつからか黒い手紙になっていた。
開くと、そこには女々しい妄想話と、かわいそうなぐらいの脅迫の内容ばかりだった。

『なぜ君は、あんなやつと』

『僕らの赤ちゃんは。。返せ返せ返せ』

『永遠の愛を誓い合ったじゃないか』

『昨日ぼくを想って月を眺めていたね。同じ月を僕も眺めたよ』

『お前の家がどうにかなってもいいのか』

『殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる』

『ああ、分かったよ君はそうして僕の愛をためしてるんだね。僕はこんなことじゃ負けないよ』






「きもちわるいなあ」

私はそっとその手紙を、道の端にあったゴミ箱へ投げ捨てた。
私は気づいてしまった。
私の向かいの無人だった部屋に人が住んでいることに。そしてそれは痩せこけて昔の姿、形をなくしてしまった。王太子様だということに、かれはギョロギョロした目をじっと私に向けていた。

美男子が台無しじゃん。

私はこの前援助したスラムの子に、教えてもらった最大級に相手を侮辱するサインを送ってあげることにした。もちろん、自分が最低だということを理解してね。
親指を立てて私は下に向けた。

「爆ぜろ、ストーカー」

悪魔の笑顔とマリクに評された表情もおまけつきで。
そうしたら、彼は嬉しそうに笑ったのだ。

ああ、やらかしたかな私。

とりあえずお義父さまに、チクってやろう。
そして彼の家に嫌がらせするところからはじめようか。

何がいいかしら。
虫をドア中に張り付けるのも、彼が送ってくれる手紙の燃やした灰を、ポストに入れるのもありかしら。それとも、それとも、それとも。

わたしは今まで人にやった、嫌がらせを思い出しながら。最高のエンターテインメントを開催することを楽しむことにした。

ああ、楽しみ。

王太子が城から出られなくまで、虐めてやろう。

虫を探している途中でマリクに止められるまで、私の愉快な気持ちは消えなかった。
そして数日後、何故か向かいのアパートメントからロメオは消えていた。
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