王子様は悪徳令嬢を溺愛する!

リカ

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「やあ。アリー珍しく可愛い恰好をしているね」

ドアを開ければ、まるで自分の家みたいにくつろいでいるマリク。こんな最悪な気分の日に、ただ一人アパートメントで過ごすだなんて御免だった。だから、いつもどうりのふてぶてしい彼を見るとなんだか安心した。

「ええ、まあ野暮用があったのよ」

「そうか」

そう微笑むと、女の子は陥没しそうになっちゃうくらいの色気を放出する。ああ、そんな色気の無駄遣いなんかしちゃって、女の子たちが沢山いる、例えばパーティーとかでそんな風に笑ったらいいのに。
と思ったところでなぜか、胸がチクと痛む。嫉妬かしら。まあ、そうかもしれない。
毎日これだけ一緒に居れば、彼が離れようとしたなら少しは虚しさだってあるだろう。
いつだって離れていく方に罪悪感はあったとしても虚無感は、離れられた方にしか存在しないのだ。

「今日はね、国王陛下と少し話したんだ」

「へえ、陛下に謁見できるなんて。あなた実はすごい人?」

「内緒にしておく」

そういったマリクは、人差し指を唇に当てた。

「それでね、君をくださいって言ったんだ」

キミをクダサイ
つまり、陛下に私との交際を認知してもらおうとした?いや私達つきあってすらないけれど。

「それで、陛下は?」

「君さえよければ。と」

「は?意味が理解できない」

「理解してよ」

本当に色気の無駄遣い。
そんな表情されてときめかない女性なんてこの世に存在するのかしら。
憂鬱そうな、ほんの少し気だるげでけれどその瞳には、あふれ出るほどの恋慕の情。その瞳の先に私がいるのだとしたら、私はこれから逆上せながら生活していくことになりそうだ。

「僕は君に交際を申し込みたいんだ。結婚を前提に」

「ダメかな」

私は迷っていた。
だって、前の彼はあんな感じで。ただの馬鹿だった。今も馬鹿だけど。
彼も、馬鹿も顔はよくて、それって女の子がそれだけで群がるじゃない。

「君だけが好きなんだ」

「分からないわ」

「何が」

彼は、眉間にしわを寄せた。

「全部。馬鹿王子が、元婚約者なのよ。人間不信にだって陥るわ」

「そうだね。けどさ、前の彼のせいで、僕自身が見てもらえないっていうのは不服だな。」

彼は不敵に笑う。

「だってさ、アリーは僕のこと嫌いじゃないだろう?
嫌いだったら、もうとっくに僕はこの部屋に入れてすらないだろう?」

その通りだ。私は嫌いなものには関心すら抱かないし、自分のテリトリーに入れるなんてもってのほかだ。こうして彼と言葉を交わしている時点で私は彼の事が好きになっているのかもしれない。

「そうか、そうだね」

「僕はさ君が僕を振ったとしても絶対に君に問題があったとは考えない。僕自身に問題があったんじゃないかって考えるよ。」

ああ、あの馬鹿王子とは全然違う。

「分かったわ。私マリクの事を見るよ。ちゃんとね。だからちゃんと見極めさせてね」

「ありがとう」

そういって抱き付いてきた、マリクの頭を叩き「近いのよ!」と私は照れながら言った。
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