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僕は国交上の交流のため、南東の方からやって来た留学生だ。
そして僕は今、国交上の交流を断ち切ってしまうかもしれない問題を抱えて王宮へやって来た。
「王太子殿下に謁見を願いたい」
「今すぐに」
城の従者は僕の姿を見るなり、すぐに駆け寄ってきた。そして、次に現れた時は王子を連れて。
「なんだい。マリク。何か問題でもあったかな」
白々しい笑みを浮かべて。ロマンは問う。
名前の通りの女々しいロマンチストという事を僕は知っていた。
「ああ、大いなる問題がな。」
僕は懐から、ピンク色の開いた封筒を差し出した。
「貴様!何でそれを持っている!!」
「何でかは、ロマン。お前がよく知っているんじゃあないか?」
「アリエノールを知っているのか?」
「ああ、知っているさ。途方もない程、沢山ね」
そんなに知らない。けれど、少なくともロマンよりは理解している。
「あいつは私の妻となる女だ。手を出すんじゃない」
「それは、約束しかねるな。それに彼女はお前の妻となることを了承していないようだが?」
美しい男は顔を醜く歪める。ただでさえ、顔だけなのに顔も醜くなってしまうとは、可哀想だ。
「アリエノールは照れているだけなのだ。少し私を焦らして、了承するつもりなのだろう。可愛い女だ」
ぞっとする、妄想もここまで入っているのか。あんな手紙を受け取って、照れる女なんて同類だけだろうに。
「何の騒ぎかね、マリク君」
「国王陛下」
そこまで騒いでいるつもりは無かったが、この広い城だ、どれだけ騒いだって端から端まで声が届くことも無い。これは険しい顔をしている僕達の比喩だろう。
「アリエノールの事で少し」
「ロマンは、まだアリエノールにこだわっているのか、もうそろそろ諦めろと言っているだろう。彼女はお前が受け止められる器ではないのだ」
ロマンは拳を握りしめた。ここは良いタイミングだと思い、国王陛下と僕は声を掛けた。
「では、私ではいかがでしょうか。」
「ほう?」
「彼女を受け止められる器かどうか判断してください。陛下」
「な!にいってるんだ」
何だかよく分からないことをほざくロマンは放置して、僕は国王陛下の目をじっと見つめた。
厳しい目をしていた陛下は、段々と顔を緩めた。
「君は面白い事を言うね。」
「結構本気ですよ」
「君は彼女をどう思っているの」
僕は思ったままを答えた。まるでお義父さんから、尋問を受けているみたいだ、きっと彼はアリエノールを娘みたいに思っている。
「面白い女性です、話をしているだけで飽きない。危なっかしい所もあって、可愛らしい。自分でどこまでも突き進んで行ってしまう人だ。
僕もそういう人間です。彼女について行くことは出来ないけれど、一緒に隣を歩いていくことは出来る。
僕は彼女を受け止める器ではない、けれど僕の器を。例え僕の国に連れていったとしても彼女はなにがあったって生きていける。僕はそれをサポートとしたい。」
「なるほどね。」
僕は言いたいことを言った。後はこの人がどう言うかだ。
「まあ、いいんじゃないかな。最終的な判断は君のお父さんと、アリエノールが下すだろうし。」
ほっとした。とりあえず、国王陛下の了承は得られたようだ。
「ありがとうございます」
国王陛下は僕から、視線を外し、自分の息子へ視線を向ける。
「そういう事だから。ロマン、お前はアリエノールとマリク君の恋路の邪魔をするんじゃないよ」
彼は顔を歪めて、拳から血を流しながら、答えた。
「はい」
これで嫌がらせが、終わるとは限らない。むしろ激化するだろう。
けれど、それは僕がずっとアリーの隣にいて跳ね返せば良い。その分だけ、国王陛下の公認という何よりの特権を得られたのだ。
あの人は狸だ。何を考えているかわからない。これからこの国と付き合っていく上で、彼は要注意だなとマークした。
その頃アリエノールは敵地である、王太子取り巻き令嬢達とお茶会をしていた。
そして僕は今、国交上の交流を断ち切ってしまうかもしれない問題を抱えて王宮へやって来た。
「王太子殿下に謁見を願いたい」
「今すぐに」
城の従者は僕の姿を見るなり、すぐに駆け寄ってきた。そして、次に現れた時は王子を連れて。
「なんだい。マリク。何か問題でもあったかな」
白々しい笑みを浮かべて。ロマンは問う。
名前の通りの女々しいロマンチストという事を僕は知っていた。
「ああ、大いなる問題がな。」
僕は懐から、ピンク色の開いた封筒を差し出した。
「貴様!何でそれを持っている!!」
「何でかは、ロマン。お前がよく知っているんじゃあないか?」
「アリエノールを知っているのか?」
「ああ、知っているさ。途方もない程、沢山ね」
そんなに知らない。けれど、少なくともロマンよりは理解している。
「あいつは私の妻となる女だ。手を出すんじゃない」
「それは、約束しかねるな。それに彼女はお前の妻となることを了承していないようだが?」
美しい男は顔を醜く歪める。ただでさえ、顔だけなのに顔も醜くなってしまうとは、可哀想だ。
「アリエノールは照れているだけなのだ。少し私を焦らして、了承するつもりなのだろう。可愛い女だ」
ぞっとする、妄想もここまで入っているのか。あんな手紙を受け取って、照れる女なんて同類だけだろうに。
「何の騒ぎかね、マリク君」
「国王陛下」
そこまで騒いでいるつもりは無かったが、この広い城だ、どれだけ騒いだって端から端まで声が届くことも無い。これは険しい顔をしている僕達の比喩だろう。
「アリエノールの事で少し」
「ロマンは、まだアリエノールにこだわっているのか、もうそろそろ諦めろと言っているだろう。彼女はお前が受け止められる器ではないのだ」
ロマンは拳を握りしめた。ここは良いタイミングだと思い、国王陛下と僕は声を掛けた。
「では、私ではいかがでしょうか。」
「ほう?」
「彼女を受け止められる器かどうか判断してください。陛下」
「な!にいってるんだ」
何だかよく分からないことをほざくロマンは放置して、僕は国王陛下の目をじっと見つめた。
厳しい目をしていた陛下は、段々と顔を緩めた。
「君は面白い事を言うね。」
「結構本気ですよ」
「君は彼女をどう思っているの」
僕は思ったままを答えた。まるでお義父さんから、尋問を受けているみたいだ、きっと彼はアリエノールを娘みたいに思っている。
「面白い女性です、話をしているだけで飽きない。危なっかしい所もあって、可愛らしい。自分でどこまでも突き進んで行ってしまう人だ。
僕もそういう人間です。彼女について行くことは出来ないけれど、一緒に隣を歩いていくことは出来る。
僕は彼女を受け止める器ではない、けれど僕の器を。例え僕の国に連れていったとしても彼女はなにがあったって生きていける。僕はそれをサポートとしたい。」
「なるほどね。」
僕は言いたいことを言った。後はこの人がどう言うかだ。
「まあ、いいんじゃないかな。最終的な判断は君のお父さんと、アリエノールが下すだろうし。」
ほっとした。とりあえず、国王陛下の了承は得られたようだ。
「ありがとうございます」
国王陛下は僕から、視線を外し、自分の息子へ視線を向ける。
「そういう事だから。ロマン、お前はアリエノールとマリク君の恋路の邪魔をするんじゃないよ」
彼は顔を歪めて、拳から血を流しながら、答えた。
「はい」
これで嫌がらせが、終わるとは限らない。むしろ激化するだろう。
けれど、それは僕がずっとアリーの隣にいて跳ね返せば良い。その分だけ、国王陛下の公認という何よりの特権を得られたのだ。
あの人は狸だ。何を考えているかわからない。これからこの国と付き合っていく上で、彼は要注意だなとマークした。
その頃アリエノールは敵地である、王太子取り巻き令嬢達とお茶会をしていた。
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