王子様は悪徳令嬢を溺愛する!

リカ

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なぜこんなことになったのだろうか、私はトランクケースがリビングで転がっている部屋と、何人も座れる大きなソファに座りつつ、優雅に紅茶を飲むマリクを見ながら思う。

私は約束通りの時間にやってきた。
そして、この前と一緒でマリクは時間前にやって来ていた。そしてショッピングに付き合わせながら、この国について知ってもらおうと思ったのだ。
彼は一つ一つ、私が話す全てをまるで、熱心な生徒みたいに言葉を拾ってくれる。それが楽しくて、何だか帰るときには話さなくても、いい事を沢山話してしまったような気分になってしまう。

広場で待ち合わせるのは5度目位になった頃のことだった。
ポロリと、言ったのだ。

「あの馬鹿の元から離れて、アパートメントで一人暮らしをしているの」

と、言ってしまったのだ。
なんで言っちゃったんだろう。と今は本当に思っている。
彼は言葉巧に私をこのアパートメントに招待した。そして気がつけば彼はいる。

もはや広場で約束はしていない。ノック3回をして、彼は勝手に入ってくる。意外と図々しい。

「また、鍵かけてなかったね」

「つい、忘れちゃうのよ」

「僕が帰るときにはちゃんと掛けるんだよ」

アンタみたいに、不法侵入してくる奴がいるからね!
という文句は何も言わない。
だって彼とても料理が上手なのだ。私は一応、貴族の令嬢だから、家事は一切できない。1日に1回家政婦がやってくるぐらい。

彼は料理だけは出来るのだという。
そして、色々私が食べたことのない美味しい料理を作ってくれた。
そして、私は今とんでもなく暇なのだ。一日中本を読んで勉強するか、買い物をするか、お茶会に参加するかしかしていない。何だか事業でもはじめようかしらと、思っているだけで行動しない。だからマリクが来るのはいい暇つぶしになっているのだ。

「ねえ、マリク。貴方勉強しないの?留学生でしょ」

「してるさ」

「してるように見えないわ。ほとんど毎日来てるじゃない」

「僕は、授業中に全部勉強を完結させてるんだ」

「へえ」

とまあ、くだらない話に花を咲かせるのだ。ああ、つまらない日々。

「ねえ、アリー。」

彼はアパートメントに通うようになってから、私を愛称で呼ぶようになった。
彼は薄いピンク色の封筒を取り出した。

「こんなのが、ポストに入っていたよ」

私は受け取って、ひっくり返した。赤い封蝋とロマンと書いてある。
私はマリクに返す

「燃やして」

「読んであげないのかい?」

「読む気も起きないわ。せいぜい世界の塵となればいいの。どうせ女々しいラブレターでしょ?
そんなの胸焼けがするわ。」

「そう」

扱いが酷いのだろう。マリクは手紙を眺めながら、かわいそうな顔をした。元婚約者の女々しい懺悔文なんて、読む気が起きるだろうか。

「読んでもいいわよ」

その言葉を聞くと、彼は封蝋を開け手紙を取り出した。そしてその顔が段々と歪んでいくのを、私は面白いなと思いながら眺める。

「確かに胸焼けが起きるな」

「酷いものでしょう?」

私だって1枚目は読んだのだ。それを読んだ私は、バルコニーに出て手紙を塵にした。半分も読めなかった。女々しい女々しいラブレター、見ているとイライラしてくる。
そして何より、段々と妄想も入っているのだ恐ろしい。

『僕らの子供はとても可愛いだろうね』

『君のことは全てわかってる』

『昨日は、モリターナのいちごのショートケーキを食べていたね。僕も好きなんだ』

ああ、寒気がする。あの顔でこんなの書いてるなんて想像すると気持ち悪い。

「これ、放置してると、ヤバイんじゃないの?」

「そうねえ」

「そのうち、、」

マリクは考え込んでいるようだ。私は紅茶を注ぎ飲み込む。

「とりあえずここに来る頻度多くするからね」

「え?」

「何ならこの下の階のフロア借りようかな。」

「え?何言ってんの?」

「よしそうしよう。」

彼は下の階の住民になりました。エドバートご夫妻どこに行ったんだろう
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