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幼馴染
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耳障りな音が木霊する、夜の公園。私達はブランコを漕いでいた。
大事な話があるのだと、言われ私は公園へやって来た。大好きな幼なじみだ。まるで私のヒーローみたいな人で、私はその敬愛がいつからか恋慕へ変わっていた。彼もそうだと、私は信じている。
「花恋!待った?」
「拓!遅いよ!」
私は頬を膨らませ、自分が不機嫌である事をアピールする。そんな私を彼は、ごめんごめんと謝りながらその大きな手で、私の頭をぐちゃぐちゃにするのだ。
「今日はごめん、相談したいことがあるんだ」
「なあに?」
私は期待半分で聞いた。きっと彼も私を好きでいてくれるはずなのだ。けれど、それは確証のないもので、ただ友達としか思っていないかもしれないと、そうも思うのだ。
「好きな人ができたんだ」
「うん。」
「けれど、その人は恋しちゃいけない人だった」
あ、私じゃない。だって彼は、私の目を見つめながらも、別の人を思い浮かべていた。期待なんかしちゃいけなかった。
「誰にも言ってはいけないのね」
「うん。君だから信用して言うんだ」
「その人はだあれ?」
私は嫉妬と好奇心を混じえながら聞く。私ではない誰か、私が敗けた人。
「新しく担任になった松田先生」
「あぁ、あの美人の」
松田先生は春に赴任してきた新しい先生だった。年齢はわからないが、見た目は若い、そして授業も分かりやすく、美人で優しい人だった。
「どうすればいいかな」
「そうね、どうすればいいんだろう。私、先生に恋したことないもの」
私はずっと貴方が好きだったから。
敗けちゃった。ずっと歳上で人生経験も豊富な、綺麗な人に敗けちゃった。
「けど、応援する。拓のこと応援するよ私」
「ありがとう頑張るよ」
そう言って私に励まされた拓は家へ帰る。公園の目の前にある私の家まで送らなくても良いと考えたのだろう。
ずっと待ち焦がれてた。こんな日を、私の恋が終わる日を、彼女も作らなかった拓に好きな人ができる日を。それが先生だなんて、よりによってあの先生。勝てる要素なんて一つもない。いくら努力したってあんな風になれるのは、人生経験と生きてきた年月というものが必要で、私にそれはない。
私の長かった初恋は静かに終わりを告げた。
「馬鹿だな、お前」
「ショウ。何か用?」
もう一人の近所の幼なじみが何故かやって来た。そうだ、彼は公園を挟んだ向かいの家だ、ちょっと窓から覗けばこっちの様子なんてすぐわかる。
「言えばよかったのに」
「言えると思った?」
本当は涙が出そうで、悲しくて仕方がなかったけれど、それをコイツのまえで出すのは癪だったから、私は必死に堪える。
「馬鹿だよお前。」
「馬鹿ってうるさい」
「そして、俺は大馬鹿だ。」
彼は私にキスをした。唇だった。拓の為に取っておいたファーストキスが消えちゃった。
「お前さ、俺の物になれよ。そうしたら悲しみも憂いもすべて取り除いてやる」
「本当ににアンタは大馬鹿ね」
私はショウが抱きしめる腕を拒めなかった。私の目から涙が1粒零れる。馬鹿みたいな茶番だ。私自身も茶番の一括りにされているのに。
ショウが私を強く抱きしめた。
これがきっと二度目の恋の合図だったんだ。
大事な話があるのだと、言われ私は公園へやって来た。大好きな幼なじみだ。まるで私のヒーローみたいな人で、私はその敬愛がいつからか恋慕へ変わっていた。彼もそうだと、私は信じている。
「花恋!待った?」
「拓!遅いよ!」
私は頬を膨らませ、自分が不機嫌である事をアピールする。そんな私を彼は、ごめんごめんと謝りながらその大きな手で、私の頭をぐちゃぐちゃにするのだ。
「今日はごめん、相談したいことがあるんだ」
「なあに?」
私は期待半分で聞いた。きっと彼も私を好きでいてくれるはずなのだ。けれど、それは確証のないもので、ただ友達としか思っていないかもしれないと、そうも思うのだ。
「好きな人ができたんだ」
「うん。」
「けれど、その人は恋しちゃいけない人だった」
あ、私じゃない。だって彼は、私の目を見つめながらも、別の人を思い浮かべていた。期待なんかしちゃいけなかった。
「誰にも言ってはいけないのね」
「うん。君だから信用して言うんだ」
「その人はだあれ?」
私は嫉妬と好奇心を混じえながら聞く。私ではない誰か、私が敗けた人。
「新しく担任になった松田先生」
「あぁ、あの美人の」
松田先生は春に赴任してきた新しい先生だった。年齢はわからないが、見た目は若い、そして授業も分かりやすく、美人で優しい人だった。
「どうすればいいかな」
「そうね、どうすればいいんだろう。私、先生に恋したことないもの」
私はずっと貴方が好きだったから。
敗けちゃった。ずっと歳上で人生経験も豊富な、綺麗な人に敗けちゃった。
「けど、応援する。拓のこと応援するよ私」
「ありがとう頑張るよ」
そう言って私に励まされた拓は家へ帰る。公園の目の前にある私の家まで送らなくても良いと考えたのだろう。
ずっと待ち焦がれてた。こんな日を、私の恋が終わる日を、彼女も作らなかった拓に好きな人ができる日を。それが先生だなんて、よりによってあの先生。勝てる要素なんて一つもない。いくら努力したってあんな風になれるのは、人生経験と生きてきた年月というものが必要で、私にそれはない。
私の長かった初恋は静かに終わりを告げた。
「馬鹿だな、お前」
「ショウ。何か用?」
もう一人の近所の幼なじみが何故かやって来た。そうだ、彼は公園を挟んだ向かいの家だ、ちょっと窓から覗けばこっちの様子なんてすぐわかる。
「言えばよかったのに」
「言えると思った?」
本当は涙が出そうで、悲しくて仕方がなかったけれど、それをコイツのまえで出すのは癪だったから、私は必死に堪える。
「馬鹿だよお前。」
「馬鹿ってうるさい」
「そして、俺は大馬鹿だ。」
彼は私にキスをした。唇だった。拓の為に取っておいたファーストキスが消えちゃった。
「お前さ、俺の物になれよ。そうしたら悲しみも憂いもすべて取り除いてやる」
「本当ににアンタは大馬鹿ね」
私はショウが抱きしめる腕を拒めなかった。私の目から涙が1粒零れる。馬鹿みたいな茶番だ。私自身も茶番の一括りにされているのに。
ショウが私を強く抱きしめた。
これがきっと二度目の恋の合図だったんだ。
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