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目の見えない少女と従者

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マーレン伯爵家、廊下_________________

「無粋なようだけど、犯人の見当はついたかい?」


「さあ?あなたは?」


「いや、現状ではやっぱりメアリーっていうメイドが怪しいけれど」



ジェシカは腕を組んで、壁に寄りかかって先ほどまでは、笑顔だった顔を無表情にして続きを促した。レイはジェシカとは相対的な笑顔を浮かべた。



「現在、エレイン嬢とキルシュナー以外には、犯行が可能だと思う。他の三人がそれぞれが、別々の仕事をしていたからね。ベテランであればあるほど、お互いの仕事を知っているからこそ殺人なんてイレギュラーなこともやりやすい。が、動機が必要だ。殺そうと思えるほどの。けれど、メイドのアリッサにはそれは感じられなかった。執事とは話を聞いていないから、まだ何ともいうことはできないけど。けどアリッサの婚約者への話を聞いて、彼は使用人とは特別親しくするような性格ではなかったんだろうと、そう感じた。
明かな動悸があるだろうと予測されるのはメアリーだ。愛人関係を疑われるほどに、婚約者が親しくしていたのは、相当仲が良かったんだろうと思う。普通であれば、主人から新人へ声を掛ける事も少ないし。」



ジェシカは意地悪を思いついたようで、人の悪い笑みを浮かべた。



「レイは、屋敷外の犯行は疑わないわけ?例えば、強盗として入ったが、ばったり会ってしまったから殺したとか」


「まさか、君だってそんなことを本当に思っているわけじゃないだろ。なら、ダイイングメッセージをどう説明するつもり?」


レイはまた、ジェシカと似たような類の笑みを浮かべた。


「それに、そんな結末は酷くつまらない。君だってそう思うだろう?」


「まあね。こんなドラマティックな殺人よ。つまらないなんてあり得るわけないわ。それになんとなく分かるでしょ?これには、この殺人には溢れきれないほどの愛に溢れてる。楽しい楽しくない、そんな自分の欲なんて介入できないくらいの。だからね、私は誠実にこの事件を見渡すのよ。」



ジェシカはふふんと、鼻歌を歌い始めた。レイはその様子を見て、相当ご機嫌だなと思う。面倒ごとが大嫌いな彼女がこんなにも楽しそうに事件を見ているだなんて、この殺人にはどんな秘密があるのだろうかと、じぶんもたのしくなっていった。



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