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目の見えない少女と従者

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「どうでした?彼の方の死体は」


エレインは、自慢の庭園で紅茶を飲みながら、微笑んだ。婚約者が亡くなったというのにという感情はどうしてもジェシカの中からは消えなかった。ただ、彼女が婚約者を想って混乱し、錯乱する姿は想像もやはりできなかった。ジェシカとレイは誘われるがままに、椅子へ座り、紅茶を飲んだ。


「ええ、とても綺麗なものだったわ。ただやっぱり、犯人についてはまだ分からないわ」


「だと思ったの。だから今日来ている使用人たちを集めたわ」


エレインが手を叩くと、陰から二人のメイドと、一人の執事が出てきた。

一人は妙齢のベテランのメイドと言われるような貫禄のある人。アリッサだ。ただ少し、疲れたような顔をしていたけど。
もう一人のメイドは若くかわいらしい女性だ。おどおどしていて、顔を少し青くさせている。メアリーという名前だ。

残りの執事の名は、コンバート。いつでも浮かべている笑顔を今でも浮かべている。たとえどんなことがあっても空気のようにそこへ存在しているべきであるという、執事の本質を体現している。先程は主人の婚約者が死んだところを目撃したということでかなり取り乱していたのだろう。今は普段の様子とあまり変わらないように見えた。


「両親と弟は?珍しいのね。」

ジェシカは今ここにいるべき人間が三人いなかったことに気付き質問をした。


「三日ほど家を空けているの。バカンスがてら彼らの趣味の買い出しよ。だから使用人も少ないの。」


「エレインはついていかなかったの?」


「ええ。丁度一日目に体調を崩してしまったの。私ももう赤ん坊ではないからお家でお留守番くらいできるわ」


「なるほどね。個別にお話を聞いて行ってもいいかしら」


エレインはカップをソーサーへ置いた。そして、指を絡め胸元で組む。


「なんだか、小説の登場人物になったみたいでわくわくするわ。ジェシカ様の好きにして頂戴。ただ、私の隣にはキルシュナーはいても問題ないかしら?」


「ええ、問題ないわ」



ジェシカはそこで一つ気が付いたことがあった。エレインの姓について。



エレイン・マーレン



ここにも一つ、『M』のイニシャルがあったわけだ。ジェシカは考えることを放棄しても良いだろうか、そんなことをふと思ってしまっていた。
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