悪役令嬢は、面倒事が大嫌い!

リカ

文字の大きさ
上 下
5 / 26
はじまりの物語

5

しおりを挟む

『わたくし、今度の婚約はもっとマトモな婚約をしたいの。だからマトモである事を、アピールして欲しいわ』

前のオトコはあんなだったから、と紅茶を啜る。


『なるほど、マトモであること…ね』


マトモであることを、人に証明しようとするのは意外と難しい。
こうしていろんな書状まで用意された上で、こんな言い分は苦しかったか、とジェシカは発言を後悔した。
だから、少し訂正する事にする。





『マトモであることより、重要な事があったわ。レイ貴方、私を守れるだけの器量があるかしら』



『マトモであることの証明の方が簡単そうだ』





器量というのは曖昧でそれを証明しろと言われても、大体の人は承諾しかねるだろう。もしくは、承諾してロマンティックな世迷言をほざくか。

普通の男なら、勿論君のことを守り続けるだの、怪我ひとつさせないよ。そんな事をほざくだろうが、そんな男はジェシカにとっては論外なのだった。
だからこそ、そういう返答が返ってくるレイフの事を恋人にしたのだが。





『あの王子よりは、役に立てると思うよ。それに、結構役に立てる自信はあるんだけどね』


『なら、あと一年で私にその自信をみせてみなさいよ。私たちにはあと一年の猶予があるわ』





ジェシカはそう言うと、冷たくなった紅茶を飲み込んだ。とにかく、よく分からない理屈で一年は、期間を伸ばすことが出来たわ。よし、その間にどこかの国へ亡命しようと、ジェシカは決めた。





「おい聞いているのか!ジェシカ!」



「ええ、勿論」





全然聞いていませんでしたとは言えない。
顔を真っ赤にして、王子は続ける。





「婚約破棄だ!お前とは!」



「さようですか」



「国王直々の勅命だから、撤回もできないんだぞ」





そりゃー、そうでしょうとも。国王陛下だってあの、思い出したくない書状にサインしたのだから。






「では、これからはただクラスメイトとして仲良くして参りましょう」





婚約破棄された人間として、何を声かければ良いのかが分からなかった。




「はっ、貴様とは仲良くはしたくないがな」





激しく同意しかできませんわと、声を大にして言いたくなったが、それはある意味で侮辱だろうと思い口には出さない。
そして、この愚鈍が、何故ここでこんなことを言い出したのかを察する事となる。次に声を上げた男によって。




「ならここで、1つジェシカ様に言っておきたい事があるのだが。」





と声を上げたのは勿論レイフだった。


しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

【完結】悪役令嬢の反撃の日々

アイアイ
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。 「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。 お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。 「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。

悪役令嬢に転生したら手遅れだったけど悪くない

おこめ
恋愛
アイリーン・バルケスは断罪の場で記憶を取り戻した。 どうせならもっと早く思い出せたら良かったのに! あれ、でも意外と悪くないかも! 断罪され婚約破棄された令嬢のその後の日常。 ※うりぼう名義の「悪役令嬢婚約破棄諸々」に掲載していたものと同じものです。

悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。

三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。 何度も断罪を回避しようとしたのに! では、こんな国など出ていきます!

処理中です...