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はじまりの物語

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曰く、王子は血を好む
曰く、女は好きではないらしい。きっと男色家だ
曰く、戦闘狂でありながら勉学もできる
曰く、暗殺計画は数え切れないほど存在する
曰く、
曰く…etc





そんなふうにたくさんの噂話が回ってくる。隣国ですらなく、ただの近隣諸国のウチまでだ。


きっと帝国にとっては、この国など蚊を殺すより簡単に潰してみせるほどの小国であり、私の婚約破棄騒動などは、夕食の時の会話にすらならない些細なことに違いない。


なのにも関わらず、なぜこんな特に特徴のない国の公爵令嬢を捕まえて帰ろうだなんで、また変な噂話が造られしまうよ殿下と言いたい。



しかも私の二つ名は「歩く天災」だし。



そんな私とレイフとは学園の短い期間のみの、フォーリンラブの間柄であったのは否定のできない事実だった。


ただ、キスもしてなければ、もちろんその先もしていない。
手を繋いだのは数回ほどと限りなくクリーンに近い関係ではあったし、なにより結婚までの割り切られた関係に違いないと思っていたのだが。




『ここに帝国の婚姻届がある。それにその他諸々の資料だ』




資料の全てを要約すると2人の婚姻関係を認めないとするなら帝国は全ての力を使ってお前の国を潰すと。
それには帝国に属する国の国王が署名していて、もちろん逃げる事もできない現当主の兄の名も刻まれている。それとこの国の国王陛下の名も。




『これから逃げるにはどうしたらいいのかしら』


『逃げなくてもいいじゃないか。父だって大賛成だった。それに僕ら』




愛し合っているのだし。






そんなことを耳元で告げられれば、顔も赤くなるだろう。だって顔だってカッコイイし。
けれど愛以上に大切なものがある。それは自分の尊厳だ。もっと言うなら人権だ。
私はとにかく、面倒な事が嫌いなのだ。

なにより、レイフは粘着質で独占欲が強くて、どうかと思っていたのだ。付き合っているあいだはいい、結婚するとなれば話は別なのである。


ああ、なんで私たち付き合ってたんだろう。
そんな疑問さえ持つほどだった。

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