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第四話 強者
しおりを挟む「この私と勝負しろ!!」
ドアを蹴破ってダイナミックに入室してきた女性は俺を見つけるや否や大剣の剣先をこちらに向け勝負を仕掛けてくる。
「いきなりどうしたんですかフレアさん?!」
「どうしたもこうしたもねぇぜ!こいつオーバーランクの魔力の持ち主だぜ!」
「オーバーランク!?本当ですか?!何かの間違えじゃ?!」
「何だ?そのオーバーランクって?」
「あ、あのねぇ・・ヤマトくん・・オーバーランクは世界でも極めて少ない魔力量の持ち主のことを言うの・・」
「へぇ~、教えてくれてありがとう。ボロ雑巾さん」
「マリアです・・・」
まあ、転生者ならあり得ない話でもないよな。
むしろここまではテンプレじゃない?
しかし、どうしたもんかな?
おそらくこのフレアって人ギルドマスターだよな。
いくら魔力量が多いからって強いってわけじゃないと思うんだよな~
現に俺は魔法の使い方がわからないわけだし?
このまま戦ったら俺もボロ雑巾の仲間入りだよ。
「さあ!私と戦えカンザキ・ヤマト!」
「え~と、フレアさんですよね?俺記憶喪失なんで戦い方がちょっとわからな」
「ルナから聞いたぞ!お前溶岩龍のブレスを素手でかき消したらしいじゃないか!そんな奴が弱いわけがねぇ!」
そうだね、普通の人はブレスを殴らないね。
やっぱりあれか、あそこで選択肢間違えてたのか。
最初の選択肢間違えたら後のイベント全部悪い方向に進むとかどんなクソゲーだよ。
エンディングはあれか?デッドエンドしか用意されてないのか?
「ヤマトさん無理ですよ、フレアさんは一度決めたら絶対に曲げません。大人しく戦いましょう」
いや、元はと言えばお前が蒔いた種だよ!!
お前が余計な事まで報告しなければこうはならなかったよ!
溶岩龍倒しました~!ぐらいでよかったじゃん!
有名な狩ゲーだって討伐するまでの手順は誰も気にしてないよ!!
「それとあれな!ここで私と戦わないならギルドの登録させねぇから。もちろん他所にも登録させないように連絡しとくぜ!」
「卑怯者!!」
「ハッハッハ!何とでも言いやがれ」
こっちに来てから碌な大人に合わねぇな!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「二人とも準備はいいかしら?」
「おう!私はいいぞ!」
「あ、ちょっと待ってください」
「なんだよ、早くやろうぜ!」
「すいません、武器貸してもらうだけなんで」
「ルナ!剣を貸してくれ!」
「は~い、投げますよ~!」
ルナは鞘から剣を抜き剣を投げる構えを取る
「おい待て!鞘から抜く必要はないだろ!」
「えっ?鞘が邪魔になるかなって」
「いや!全然邪魔にならないから、むしろ鞘も貸して欲しいね!!」
「そうですか?それじゃあ鞘も投げますね!」
そう言ってルナは鞘と剣を別々に投げてきた
「危ねぇな!!」
「すいません、ヤマトさんなら取れると思って」
あいつさっきから俺の事潰しにきてない?
フレアさんに殺られる前に殺られるよ。
「なあ~、もういいだろ?早くおっ始めようぜ!」
うるせぇな、あの戦闘狂
「それじゃあもういい?始めるよ、始めちゃうよ!」
「いいぜ!」
「俺も大丈夫です」
「OK!それじゃあルール説明しまーす、ルールは即死級の魔法を使わなければ良し。後なるべく相手は殺さないようにね!回復に時間がかかるから!」
「それじゃあバトルスタート!!」
「先手貰うぜ!!」
「ッ!!はやっ!!」
フレアさんはスタートの合図と共に弾丸のような速さでこちらに斬りかかってくる。
俺は少し反応が遅れた為、回避はせず、剣で受け止めようとする。
「吹き飛べ!!」
「うおっ!?」
だが、相手はそれを予想していたのか、剣がぶつかると同時に大剣から炎を放出させる。
俺は炎を避けきれず、壁際に吹き飛ばされる。
(チッ!!相手の思う壺ってことかよ!!)
「オラオラ!!止まってるとやられちまうぜ!!」
フレアさんはさらに追撃をかけようと物凄い勢いで間を詰めてくる。
「そう易々とやられるかよ!!」
俺は剣を左手に持ち替え、地面を思っ切り殴った。
「ッ!!おもしれぇことしやがる!!」
地面は砕け、フレアさんの足場が破壊される。
攻撃が不可能と判断したフレアさんは砕けた地面を足場にしながら元の位置に跳んで戻っていく。
「まさか、地面を砕くとは思わなかったぜ」
「そうでもしないと暴走列車は止まらないと思ってな!」
「確かに、その通りだなッ!!」
フレアさんは会話が終わる前に再び俺に斬りかかってくる。
「次の一撃は少しばかり痛てェぞ!!」
そういうとフレアさんの大剣から再び炎が放出される。
フレアさんの動きは一層早くなった。
「炎を推進力にしてるのか!!」
「地面を割られる前に叩き斬ってやるよ!!」
フレアさんは一瞬にして距離を縮めてくる。
(これは流石にやばいな、せめて一瞬でも動きを止めてくれば・・・)
俺は覚悟を決め攻撃の衝撃に備える。
しかし、
(あれ?いつになったら攻撃されるんだ?)
俺は知らぬ間に閉じていた目を開ける。
するとそこには、
今にも斬りかかってきそうな体制でフレアさんが止まっていた・・・・
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「これは・・・・一体?」
俺は状況を確認するために周囲を見渡す。
「時が・・・・止まってる・・・?」
不安そうな顔をしたルナ、
呆れ顔のマリアさん、
そして、目の前で大剣を振りかぶっているフレアさん
「やっぱりそうだ・・・みんな止まってる・・・」
「でも、なんで急に?」
「まあ、そんなことは後でいい!」
「いつ動き出すかわからないからな、今のうちに回避させて貰うぜ!」
俺はフレアさんの前から移動し、地面を砕いた時にできた瓦礫をフレアさんの上に設置した。
「よーし、これでいいだろ!」
「さあ、もう動いていいぜ!」
そう俺が告げると時は再び動き出した。
「よっしゃー!!死ねぇー!!って、いねぇぇ!!どこにいった?!って、なんで瓦礫?!うぼぁ!!」
流石のフレアさんも頭上の瓦礫は回避できず、瓦礫に押し潰されてしまう。
「フレアさ~ん、起きてたら返事してくださ~い!」
「・・・・・・・・・」
「マリアさ~ん!これ俺の勝ちでいいでしょ!」
「ふぇ?!ああ!うん!ヤマトくんの勝ちー!」
「え?え?一体何が起きたの?なんで急にフレアさんは瓦礫に潰されたの?」
自分でやっといてあれだけど、これ説明めんどくさいな。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「よし、お前の実力はよくわかった。ギルドの登録を認めるぜ!」
「長々とありがとうございます」
「まあ、そんな怒るなって!」
「やり返せたんでいいです」
「なら良かった!」
あの後フレアさんは数分で目を覚まし、自ら瓦礫を退かして出てきた。
その後フレアさんの執務室に移動し、現在に至る。
その時、マリアさんとルナはフレアさんにホールで待っているように言われていた。
「それにしても、お前一体私に何をしたんだ?」
「わかりません」
「おう、そうか!ってなる訳ないだろ!」
「でも本当にわからないです」
「気付いたらみんな止まってて、あ、これ時が止まってるんだ!って感じでした」
「時が止まってたか・・・」
「なるほどな、お前は火以外に時属性の魔法が使えるんだな」
「時・・・ですか?」
「ああ、時属性は簡単に言えば時に関する事象に対し、干渉が出来る属性なんだ。時を止めるなんかも勿論含まれるそうだ」
「ただ、余りにも使える人間が少ないからな、余り情報も無ければ、魔法の種類も余り豊富ではない」
「故に希少属性に分類される属性だな」
時属性か話を聞く限り随分とチートな属性だな。
でも、魔法の種類が豊富じゃないのは困ったな・・
自分で考えなきゃいけないじゃん、
めんどくさー
「あれ?そう言えばマナストーンに反映されてました?」
「いや、マナストーンに希少属性は反映されないんだ。飽くまで、七属性だけだ。」
「だから、お前のように自分で持っている事に気付かず、生涯を終える奴も少なくは無いんだよ」
まあ、確かに時をとか、気づく事少ないだろうな。
時間ってのは、人によって感じ方が違う訳だし、
それこそ俺みたいに時が止まらない限りは気付かないんだろうな。
「ああ、それともうひとつ聞いてみたいことがあるんだが」
「何ですか?」
「ルナに聞いた話だが、住む場所がないみたいだな」
「はい、家も無ければ、お金もないです」
「金は後で溶岩龍の討伐報酬が入るさ、それよりも家のことなんだが、ルナの提案から、ルナの家に住むのはどうだ?」
「はい?」
「いや、だからルナの家に住め」
「いやいや、ダメでしょ」
「何を気にしてるか知らないが、安心しろよ、ルナの住んでる家はでかいからな」
「いや、そう意味じゃなくて・・」
「いやいや煩いな、今はギルドの貸し部屋が空いてないんだよ、物置に住むよかマシだろう」
「それじゃあ、自分で部屋借りますよ」
「ダメだ、それじゃあお前学校サボるだろ」
「は?学校?何のことですか?俺、通って無いですよ?」
「ああ、知ってるが?」
「それじゃあ、なんで?」
「いや、何、お前は余りにも知識が少ないからな、学校に行って勉強してこい」
「嫌って言ったら?」
「勿論登録は解除だ」
「えー・・・・」
「それで?学校に行くのか?行かないのか?」
「・・・・・・・行かせていただきます」
異世界に転生しても学校行かなきゃ行けないのかよ・・・
嫌だなぁ、どうせ面倒なイベントばかりなんだろ?
また引きこもろうかな・・・
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