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Epilogue~side 4~
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ここ半年のことは記憶が曖昧だ。
僕が所属していた3moonというバンドは、秋を迎えるころに解散した。僕がスキャンダルを起こしたからだ。スキャンダルは嘘だったものの、知り合いにスキャンダルを捏造されたことにショックを受けた僕は、そのまま芸能界を引退することにした。
(その知り合いって誰だったんだろう?)
自分のことなのに、事の顛末が曖昧だ。あのときの僕はもしかしたら、クスリを使っていたんじゃないかと思う。だって、普通に暮らしていてこんなに記憶がとぶことはまずない。
そのころ、実はグラビアアイドルの竹松めいさんとお付き合いしていたはずだけれど、そのこともあまり覚えていないんだ。メールの履歴どころか連絡先すら携帯に入っていないから、妄想だったのかな? だって、竹松さんは優士のファンだって聞いたことがある。
竹松さんとのスキャンダルのほうが捏造で、クスリを服用していたのは本当だったのかもしれない。そうなると、スキャンダルを捏造したのは竹松さんかその関係者なのかな? なんてことを、ふとしたときに、つらつら考える。……考えたところで、すべては過ぎたことなのだけど。
洗濯物をたたむ手を止め、ぼうっとしていると、どこかから笑い声が聞こえてくる。
「」
「」
女の人や、男の人。僕を指差して、写真を撮って、笑っている。怒鳴り声も聞こえる。
(……気のせい、気のせい)
幻聴に幻覚だってわかってる。僕は家のなかにいて、この家には今、僕一人なんだから。
わかってるけど、だめだ。こわい。みんなが僕を笑って、怒って、詰っているように感じる。
頭を抱えてうずくまっていると、今度は皐月の声が聞こえてきた。
「おい、シロー大丈夫か?!」
「シロー?!落ち着いて、きちんと息してる?!」
優士の声もする。身体を起こされた。あれ、夢じゃない?
「何が夢だよ、俺らはここにいんだろーが」
目を見開けば、視界いっぱいに心配そうな顔をした二人が映り込んだ。抱き込まれ、交互に優しくキスをされる。良かった。皐月と優士がいてくれれば、もう大丈夫だ。
気づけばすっかり日が落ちている。いったいどれだけ長いこと、僕は一人震えていたんだろう。情けないけど、皐月と優士がいないとだめなんだ。一人では留守番もままならない。
僕は未だに、皐月と優士と三人で暮らしている。スキャンダルでマスコミに追われ、学校でも好奇の目にさらされた僕は、あれから半年近く経っても外出することが怖くて。皐月と優士の好意に甘えて、居候させてもらっている。
進路希望を「芸能活動」で提出していたため、あと一ヶ月して学校を卒業すれば、僕はニートだ。お父さんとは絶縁しているし、僕には彼らしかいないんだ………。
つけっぱなしだったテレビから、皐月と優士の歌声が聞こえる。アイドルみたいなキラキラした衣装で、形だけ楽器を持ってはいるものの、ほとんど演奏シーンのない曲。だけど、画面の中の二人はニコニコ笑っている。
「シローを養うために稼がないとね」
このあいだ、あまりにも疲れた顔をしていたから「根を詰めないでね」と言ったら、返ってきた言葉。彼ら二人がこれまでになく、柄にもないことをしているのは僕のためなんだ。
二人は僕のために、こんなにがんばってくれてるんだ……。
「ねえ、二人とも……あの、シよ……?」
僕のためにがんばってくれる、優しくて頼もしい二人。僕は彼らがいてくれないとだめで、ずっと一緒にいて欲しくて。彼らと深く繋がって存在を確かめないと、不安で。だから、男同士なのに、つい、二人を求めてしまう。そんな浅ましい僕を、二人はいつも優しく抱いてくれるんだ。
大好きな皐月。大好きな優士。ずっとずっと、そばにいてね。離さないでね。僕は今日も、二人の温もりに甘えて、その温かさにそっと目を閉じた。
僕が所属していた3moonというバンドは、秋を迎えるころに解散した。僕がスキャンダルを起こしたからだ。スキャンダルは嘘だったものの、知り合いにスキャンダルを捏造されたことにショックを受けた僕は、そのまま芸能界を引退することにした。
(その知り合いって誰だったんだろう?)
自分のことなのに、事の顛末が曖昧だ。あのときの僕はもしかしたら、クスリを使っていたんじゃないかと思う。だって、普通に暮らしていてこんなに記憶がとぶことはまずない。
そのころ、実はグラビアアイドルの竹松めいさんとお付き合いしていたはずだけれど、そのこともあまり覚えていないんだ。メールの履歴どころか連絡先すら携帯に入っていないから、妄想だったのかな? だって、竹松さんは優士のファンだって聞いたことがある。
竹松さんとのスキャンダルのほうが捏造で、クスリを服用していたのは本当だったのかもしれない。そうなると、スキャンダルを捏造したのは竹松さんかその関係者なのかな? なんてことを、ふとしたときに、つらつら考える。……考えたところで、すべては過ぎたことなのだけど。
洗濯物をたたむ手を止め、ぼうっとしていると、どこかから笑い声が聞こえてくる。
「」
「」
女の人や、男の人。僕を指差して、写真を撮って、笑っている。怒鳴り声も聞こえる。
(……気のせい、気のせい)
幻聴に幻覚だってわかってる。僕は家のなかにいて、この家には今、僕一人なんだから。
わかってるけど、だめだ。こわい。みんなが僕を笑って、怒って、詰っているように感じる。
頭を抱えてうずくまっていると、今度は皐月の声が聞こえてきた。
「おい、シロー大丈夫か?!」
「シロー?!落ち着いて、きちんと息してる?!」
優士の声もする。身体を起こされた。あれ、夢じゃない?
「何が夢だよ、俺らはここにいんだろーが」
目を見開けば、視界いっぱいに心配そうな顔をした二人が映り込んだ。抱き込まれ、交互に優しくキスをされる。良かった。皐月と優士がいてくれれば、もう大丈夫だ。
気づけばすっかり日が落ちている。いったいどれだけ長いこと、僕は一人震えていたんだろう。情けないけど、皐月と優士がいないとだめなんだ。一人では留守番もままならない。
僕は未だに、皐月と優士と三人で暮らしている。スキャンダルでマスコミに追われ、学校でも好奇の目にさらされた僕は、あれから半年近く経っても外出することが怖くて。皐月と優士の好意に甘えて、居候させてもらっている。
進路希望を「芸能活動」で提出していたため、あと一ヶ月して学校を卒業すれば、僕はニートだ。お父さんとは絶縁しているし、僕には彼らしかいないんだ………。
つけっぱなしだったテレビから、皐月と優士の歌声が聞こえる。アイドルみたいなキラキラした衣装で、形だけ楽器を持ってはいるものの、ほとんど演奏シーンのない曲。だけど、画面の中の二人はニコニコ笑っている。
「シローを養うために稼がないとね」
このあいだ、あまりにも疲れた顔をしていたから「根を詰めないでね」と言ったら、返ってきた言葉。彼ら二人がこれまでになく、柄にもないことをしているのは僕のためなんだ。
二人は僕のために、こんなにがんばってくれてるんだ……。
「ねえ、二人とも……あの、シよ……?」
僕のためにがんばってくれる、優しくて頼もしい二人。僕は彼らがいてくれないとだめで、ずっと一緒にいて欲しくて。彼らと深く繋がって存在を確かめないと、不安で。だから、男同士なのに、つい、二人を求めてしまう。そんな浅ましい僕を、二人はいつも優しく抱いてくれるんだ。
大好きな皐月。大好きな優士。ずっとずっと、そばにいてね。離さないでね。僕は今日も、二人の温もりに甘えて、その温かさにそっと目を閉じた。
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