sandwich

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love you

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「……っ、何?」
 リビングは悲惨な状態だった。
 ローテーブルは引き倒され、PCや楽譜や食器が散らばっている。その中心に立つ皐月は、僕の姿を見とめるなり、足が傷つくのも厭わずズカズカと近くまでやって来た。
(え?!)
 逸れない視線が怖い。
 と、突然壁に体を押し付けられた。吐息を感じるくらいすぐ近くに、皐月の顔が迫る。
 皐月は眉間に皺を寄せ、眼光を鋭くさせた表情で一言、
「ざけんなよ」
 吐き捨てたと思ったら――唇に噛みついてきた。何、何どうして視界が真っ暗で、何も見えない、皐月どうして、怒ってるの? なんで?!
「ん! ん、ぅ」
 違う、これは噛みつかれてるんじゃない。キスだ。さっきまでの竹松さんとのキスとは全然違う。荒々しくて苦しい!
 胸板を叩いても、皐月は離れるどころか角度を変えてさらに僕の深いところを食いつくそうとする。
(嫌だなんでこんなことに、苦しい離して!)
「……竹松さんとのデートは楽しかった?」
 カタンという音とともに、聞いたこともない優士の無機質な声がした。それを契機に皐月の顔が離れたので、肩で息をしながら、僕の携帯を拾い上げる優士に視線を向ける。
(……今、なんて?)
 酸欠の頭はクラクラして、よく聞き取れなかった。そんな僕を察したみたいで、優士はもう一度、ゆっくりと繰り返す。
「竹松さんと一緒にいたんでしょう?」
(なんでそんなこと、知ってる――携帯を、見たのかな?)
 ダンッッ!
 皐月が壁を殴った。ヒッと息を飲んだ僕の胸ぐらをつかみ上げる。爪先が浮いた。息が詰まる。
「てめぇ何してんだよ! あのクソビッチと何してたんだよ!」
「皐月……やめ、竹松さんを悪く言わなっ……!」
 皐月は再び僕の背中を壁に打ちつけた。咳き込む僕に構いもせず、睨み上げてくる。
「んだよ、あの女庇って彼氏ヅラか? とんだ茶番だな、てめえは俺たちのモンなんだよ勘違いしてんじゃねーよっ」
「この手も、」
 近づいてきた優士が、皐月の拳に乗せた僕の手のひらを取ってなぞる。その指先はつぅと腕をすべって頬、瞳、そして唇に移る。
「目も何もかも全部、何一つだってあの女にやったつもりはないよ、シロー。」
 指が下唇に触れたあと、優士にそっとキスをされた。
 暗い笑顔を浮かべる優士も、凶悪な顔つきで睨んでくる皐月も、怖い。
(俺たちのもの? 僕たちのもの? どういうこと?)
 二人が怖い。何を言ってるのかわからない。だって、僕は二人のものじゃない。竹松さんは僕の彼女で、なんだか突然ひどいことを言われて……――どうしてこんなことに。
 唖然としながらまた、二度、三度咳き込む。そんな僕を鼻で笑って、皐月はパッと手を離した。
 鈍い音とともに、僕はその場に崩れ落ちる。立ち上がる前にしゃがみこんだ優士に手を引かれた。
「ねえ、シロー。僕たちは君のことが好きなんだ。好きでしかたないんだよ」
「僕だって……」
 二人が好きだ。なのにどうして、すれ違ってる気がするんだろう。僕の好きは、こんなに乱暴じゃない。もっと笑顔で、あたたかい気持ちで語れるものだ。
 でも、二人の表情は笑ってるのにどこか怖い。緊張感と、険しいまなざしと――どこか危ういもろさを感じる。
「シローも俺たちのことが好きだろ?」
 素直にうなずいていいんだろうか。
 口を閉ざして座り込んだままの僕を皐月が覗きこんだ。そして、優士に取られたのとは反対の手を取り、薬指の付け根に口づけを落とす。
「愛してんぜ」
 その言葉とともに、ベッドまで連れていかれた。そこで、二人の言葉の意味を知った。
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