sandwich

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lonely

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(遅いな……)
 テーブルの上には、すっかり冷えたカレー。
 優士も皐月も、今日は帰って来るって言ってたのに。
 なんとなく点けたテレビでは、僕たちが新曲を演奏してる。皐月がたくさんアップで映っていて――これを皐月が見てたら怒るんだろうなあなんて考える。ギター弾いてる手元はどーでもいいのかよって、また言うんだろう。皐月はもともとギターが好きで音楽をやり始めたんだから。優士はそれを笑ってなだめるんだ。
 合間に映り込む僕は、優士や皐月と目があうたびぎこちなさそうに瞳を伏せている。テレビ用に笑ってはいるものの、二人が楽しくなさそうだったから、気まずくて。
 3moonがデビューしてから、二人への申し訳ない気持ちでいっぱいで、いつもうつむきがちになっていたのだけど……客観的に見るとこんなにあからさまだったんだ。
 だけどきっと、今よりはマシ。
 時たま、皐月のほうに視線をやったり、サビの前に優士と息を合わせたりする、画面のなかの僕を眺めながら思う。今はそんなさりげないバンドのやりとりすら、できそうにない。
 ここ一ヶ月、テレビの収録がないのが救いだ。
(もう、本当に、愛想をつかされちゃったのかな……)
 言葉にしないで避けていたのは僕だけで、二人は少なくとも、ご飯のこととか、仕事のこととか、話そうとしてくれていたのに。
 ……あと三十分、待ってみよう。九時ぐらいから思い続けていたそれを、結局日付が変わるまで繰り返したのだった。

 そして、次の日。
 ホームルーム開始五分前になって、田中くんが教室に飛び込んできた。
「よーっす!」
「あ、おはよう」
「卯月元気ねえなあ!! 一発シコればすっきりするぜ!!」
「何を言ってるの!!」
「なんならオナニーマスターの俺が手伝ってやるぜ?!」
「……!!」
 その言葉に、皐月と優士にされていることを思い出して、一瞬顔が引きつってしまった。それを見た田中くんは、慌てたように顔の前で手を振る。
「おいおい卯月、そこはツッコめよ! マジにとんなよ!!」
「わ、わかってるよ……!!」
 普通はそんなの冗談と言って笑い飛ばすところだ。やっぱり、僕がされてることは普通じゃない。普通に戻るためには、このまま二人と距離を置いたほうがいいのかもしれないけど……でも、僕は二人と他人になりたいわけじゃない。性欲処理の相手なんかじゃなくて、元の友達に戻りたいんだ。
 また二人のことを思い出して、気持ちが沈む。
「ねえ、田中くん。実は……」

「はっはっは!! あの派手な先輩たちが一晩家に帰って来なかったからってそんな悩むもんかー? っつーか今まで無断外泊とかしなかったことのが驚きだぜ?! ちょー遊んでそーだもん、特に皐月先輩!」
 ホームルームのあと、思い切って二人が昨日家に帰ってこなかったことを相談したら、勢い良く笑い飛ばされた。田中くんは部活も一緒で、皐月と優士のこと、デビューする前から知ってるから言ってみたんだけど……。失礼だけど、相談する相手を間違えたかもしれない。
 これまでは何かあったら優士に相談して、皐月に茶化されて、それで解決してきた。だけど今はその二人のことで悩んでるから、二人には頼れない。
 そのときふと僕の脳裏をかすめたのは竹松さんだった。
(竹松さんに……連絡してみよう)
 竹松さんになんて説明するんだ、とか、そういうのは頭になくて、ただ、あの優しく笑ってくれる人に悩みを相談したかった。
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