sandwich

文字の大きさ
上 下
34 / 47

friend

しおりを挟む
 鳴宮に声をかけられたのは、春先くらいのことだから……もう三ヶ月以上前か。やたら絡みたがってきてうぜえからシカトし続けていたが、竹松とかいうクソ女のせいでシローが機嫌悪くなった時、たまたまコイツから着信があって、初めて飲みの場に合流した。そこには鳴宮と同じアイドルグループの早川と俳優の黒峰がいて、仲のいいオトモダチだと紹介された。
(へー)
 三人ともしょっちゅう週刊誌にすっぱ抜かれてる奴等だ。つまり、俺も同類だと思われてたってことだ。
(どーりで優士にはあんま声かけてなかったわけか)
 優士は腹黒だからな、パッと見スキャンダルとは無縁だ。
「俺にもビール」
「お? 皐月クン、未成年じゃなかったっけえ?」
 スキャンダルを楽しんでるような悪趣味な奴等のつまんねー冗談は聞くだけ無駄だ。
 三人の面白がるような視線を無視して、俺はその場に座る。今日は家に帰る気しねえ。潰れるまで飲んでやる。
 金づるが三人もいて、俺も気がでかくなっていたらしい。本当に飲みすぎて―――飲んでた間の記憶がない。気が付いたら鳴宮の家で、大の字になって寝ていた。
 なんでも、酔いつぶれた俺を三人がかりで介抱したんだとか。以来、恩着せがましくその話を持ち出され、事あるごとに飲み会や合コンに呼び出されている。
 優士と二人で向かったのは、もう馴染みになっている新宿のバー。芸能人御用達らしく、裏手に目立たないお忍び専用の扉がある。
 入ってすぐ右の扉が、鳴宮たちのよく使うVIPルームだ。鳴宮が廊下の壁にもたれて携帯をいじっていたが、俺たちの気配を感じてふと顔を上げた。細い垂れ目をますます細く、にんまりとさせながら、愛想良く手を振ってくる。
「やあ、遅かったじゃん。先に女のコたち来てるよー」
「女のために早く来てやる義理もなかったからな」
「あー、その考えかた若いねえ。皐月クンわかーーい!」
(うっぜ)
 だいたい、鳴宮たちとは三つくらいしか違わないはずだ。パチパチと手を叩いて喜ぶ鳴宮を睨むと、それすら面白がって余計笑うから、さらに腹が立つ。と、コイツは思い出したように話題を変えた。
「そーいえば、優士クン狙いの子きてるよお? 大人しそうで、女子力高い子! おっぱいおっきいから黒峰がその子気に入ってたんだけど、その子は優士クンと遊びたいんだってー」
「黒峰振られたのかよ」
 ハッと笑ってやる。そーそーとうなずく鳴宮も楽しげだ。
「だからさ、みんなでヤろーよー」
「またかよ」
 どうやらその話がしたくてわざわざ部屋の外で俺たちのことを待っていたらしい。ふうん、と、心のなかでつぶやきながら、優士に後を託す。優士は眉を寄せて少し考えるそぶりを見せてから、口を開いた。
「男女比五、三ですもんね……それだったら二人きりでセックスしたいんですけど……」
「えー! そんなこと言わないでよー! 俺もぶっちゃけ清楚な子好みなのー! 独り占めダメだよ!」
 好みらしいが、名前は知らないらしい。そんなもんだ。一晩過ごすだけなら、名前も肩書きも必要ない。その場の快楽を共有できればそれでいい。好きとか、そんな感情はここにはない。
「だけど、前回は僕全然楽しめませんでしたし」
(こいつ根に持ってやがる)
 前回、早川の知り合いとヤッたとき、女が足りなくて、っつーか鳴宮がやたら長くて、優士が結局ろくにヤれないまま終わったのだ。
「わーかったよ! 今回は絶対優士クンも楽しめるように、とっておきを出すから! 二人ともきっとびっくりするよ?」
「……へー、せいぜいがっかりさせんなよ?」
 このときの俺らは、鳴宮の言う『とっておき』に気を取られて、シローへの連絡を忘れていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!

灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。 何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。 仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。 思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。 みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。 ※完結しました!ありがとうございました!

鬼ごっこ

ハタセ
BL
年下からのイジメにより精神が摩耗していく年上平凡受けと そんな平凡を歪んだ愛情で追いかける年下攻めのお話です。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

病んでる愛はゲームの世界で充分です!

書鈴 夏(ショベルカー)
BL
ヤンデレゲームが好きな平凡男子高校生、田山直也。 幼馴染の一条翔に呆れられながらも、今日もゲームに勤しんでいた。 席替えで隣になった大人しい目隠れ生徒との交流を始め、周りの生徒たちから重い愛を現実でも向けられるようになってしまう。 田山の明日はどっちだ!! ヤンデレ大好き普通の男子高校生、田山直也がなんやかんやあってヤンデレ男子たちに執着される話です。 BL大賞参加作品です。よろしくお願いします。 11/21 本編一旦完結になります。小話ができ次第追加していきます。

平凡くんと【特別】だらけの王道学園

蜂蜜
BL
自分以外の家族全員が美形という家庭に生まれ育った平凡顔な主人公(ぼっち拗らせて表情筋死んでる)が【自分】を見てくれる人を求めて家族から逃げた先の男子校(全寮制)での話。 王道の転校生や生徒会、風紀委員、不良に振り回されながら愛されていきます。 ※今のところは主人公総受予定。

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

執着攻めと平凡受けの短編集

松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。 疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。 基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)

処理中です...