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friend
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鳴宮に声をかけられたのは、春先くらいのことだから……もう三ヶ月以上前か。やたら絡みたがってきてうぜえからシカトし続けていたが、竹松とかいうクソ女のせいでシローが機嫌悪くなった時、たまたまコイツから着信があって、初めて飲みの場に合流した。そこには鳴宮と同じアイドルグループの早川と俳優の黒峰がいて、仲のいいオトモダチだと紹介された。
(へー)
三人ともしょっちゅう週刊誌にすっぱ抜かれてる奴等だ。つまり、俺も同類だと思われてたってことだ。
(どーりで優士にはあんま声かけてなかったわけか)
優士は腹黒だからな、パッと見スキャンダルとは無縁だ。
「俺にもビール」
「お? 皐月クン、未成年じゃなかったっけえ?」
スキャンダルを楽しんでるような悪趣味な奴等のつまんねー冗談は聞くだけ無駄だ。
三人の面白がるような視線を無視して、俺はその場に座る。今日は家に帰る気しねえ。潰れるまで飲んでやる。
金づるが三人もいて、俺も気がでかくなっていたらしい。本当に飲みすぎて―――飲んでた間の記憶がない。気が付いたら鳴宮の家で、大の字になって寝ていた。
なんでも、酔いつぶれた俺を三人がかりで介抱したんだとか。以来、恩着せがましくその話を持ち出され、事あるごとに飲み会や合コンに呼び出されている。
優士と二人で向かったのは、もう馴染みになっている新宿のバー。芸能人御用達らしく、裏手に目立たないお忍び専用の扉がある。
入ってすぐ右の扉が、鳴宮たちのよく使うVIPルームだ。鳴宮が廊下の壁にもたれて携帯をいじっていたが、俺たちの気配を感じてふと顔を上げた。細い垂れ目をますます細く、にんまりとさせながら、愛想良く手を振ってくる。
「やあ、遅かったじゃん。先に女のコたち来てるよー」
「女のために早く来てやる義理もなかったからな」
「あー、その考えかた若いねえ。皐月クンわかーーい!」
(うっぜ)
だいたい、鳴宮たちとは三つくらいしか違わないはずだ。パチパチと手を叩いて喜ぶ鳴宮を睨むと、それすら面白がって余計笑うから、さらに腹が立つ。と、コイツは思い出したように話題を変えた。
「そーいえば、優士クン狙いの子きてるよお? 大人しそうで、女子力高い子! おっぱいおっきいから黒峰がその子気に入ってたんだけど、その子は優士クンと遊びたいんだってー」
「黒峰振られたのかよ」
ハッと笑ってやる。そーそーとうなずく鳴宮も楽しげだ。
「だからさ、みんなでヤろーよー」
「またかよ」
どうやらその話がしたくてわざわざ部屋の外で俺たちのことを待っていたらしい。ふうん、と、心のなかでつぶやきながら、優士に後を託す。優士は眉を寄せて少し考えるそぶりを見せてから、口を開いた。
「男女比五、三ですもんね……それだったら二人きりでセックスしたいんですけど……」
「えー! そんなこと言わないでよー! 俺もぶっちゃけ清楚な子好みなのー! 独り占めダメだよ!」
好みらしいが、名前は知らないらしい。そんなもんだ。一晩過ごすだけなら、名前も肩書きも必要ない。その場の快楽を共有できればそれでいい。好きとか、そんな感情はここにはない。
「だけど、前回は僕全然楽しめませんでしたし」
(こいつ根に持ってやがる)
前回、早川の知り合いとヤッたとき、女が足りなくて、っつーか鳴宮がやたら長くて、優士が結局ろくにヤれないまま終わったのだ。
「わーかったよ! 今回は絶対優士クンも楽しめるように、とっておきを出すから! 二人ともきっとびっくりするよ?」
「……へー、せいぜいがっかりさせんなよ?」
このときの俺らは、鳴宮の言う『とっておき』に気を取られて、シローへの連絡を忘れていた。
(へー)
三人ともしょっちゅう週刊誌にすっぱ抜かれてる奴等だ。つまり、俺も同類だと思われてたってことだ。
(どーりで優士にはあんま声かけてなかったわけか)
優士は腹黒だからな、パッと見スキャンダルとは無縁だ。
「俺にもビール」
「お? 皐月クン、未成年じゃなかったっけえ?」
スキャンダルを楽しんでるような悪趣味な奴等のつまんねー冗談は聞くだけ無駄だ。
三人の面白がるような視線を無視して、俺はその場に座る。今日は家に帰る気しねえ。潰れるまで飲んでやる。
金づるが三人もいて、俺も気がでかくなっていたらしい。本当に飲みすぎて―――飲んでた間の記憶がない。気が付いたら鳴宮の家で、大の字になって寝ていた。
なんでも、酔いつぶれた俺を三人がかりで介抱したんだとか。以来、恩着せがましくその話を持ち出され、事あるごとに飲み会や合コンに呼び出されている。
優士と二人で向かったのは、もう馴染みになっている新宿のバー。芸能人御用達らしく、裏手に目立たないお忍び専用の扉がある。
入ってすぐ右の扉が、鳴宮たちのよく使うVIPルームだ。鳴宮が廊下の壁にもたれて携帯をいじっていたが、俺たちの気配を感じてふと顔を上げた。細い垂れ目をますます細く、にんまりとさせながら、愛想良く手を振ってくる。
「やあ、遅かったじゃん。先に女のコたち来てるよー」
「女のために早く来てやる義理もなかったからな」
「あー、その考えかた若いねえ。皐月クンわかーーい!」
(うっぜ)
だいたい、鳴宮たちとは三つくらいしか違わないはずだ。パチパチと手を叩いて喜ぶ鳴宮を睨むと、それすら面白がって余計笑うから、さらに腹が立つ。と、コイツは思い出したように話題を変えた。
「そーいえば、優士クン狙いの子きてるよお? 大人しそうで、女子力高い子! おっぱいおっきいから黒峰がその子気に入ってたんだけど、その子は優士クンと遊びたいんだってー」
「黒峰振られたのかよ」
ハッと笑ってやる。そーそーとうなずく鳴宮も楽しげだ。
「だからさ、みんなでヤろーよー」
「またかよ」
どうやらその話がしたくてわざわざ部屋の外で俺たちのことを待っていたらしい。ふうん、と、心のなかでつぶやきながら、優士に後を託す。優士は眉を寄せて少し考えるそぶりを見せてから、口を開いた。
「男女比五、三ですもんね……それだったら二人きりでセックスしたいんですけど……」
「えー! そんなこと言わないでよー! 俺もぶっちゃけ清楚な子好みなのー! 独り占めダメだよ!」
好みらしいが、名前は知らないらしい。そんなもんだ。一晩過ごすだけなら、名前も肩書きも必要ない。その場の快楽を共有できればそれでいい。好きとか、そんな感情はここにはない。
「だけど、前回は僕全然楽しめませんでしたし」
(こいつ根に持ってやがる)
前回、早川の知り合いとヤッたとき、女が足りなくて、っつーか鳴宮がやたら長くて、優士が結局ろくにヤれないまま終わったのだ。
「わーかったよ! 今回は絶対優士クンも楽しめるように、とっておきを出すから! 二人ともきっとびっくりするよ?」
「……へー、せいぜいがっかりさせんなよ?」
このときの俺らは、鳴宮の言う『とっておき』に気を取られて、シローへの連絡を忘れていた。
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