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cares
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皐月と優士と会話をしなくなってから、もう二週間くらいが経つ。もちろん、仕事のときや、家事についてとか、必要最低限の話はするけど……。
「おい、シロー。シロー!」
テレビの前から、皐月が僕を呼ぶ。
「てめえ、シカトしてんなよ?」
「して……ないよ、なに?」
嘘だ。今だって、実は三度くらい呼ばれるまで気づかないふりをしていた。僕はキッチンのカウンターから顔をあげて、いかにも普通な表情で皐月を見た。
皐月はテーブルに肘をつきながら、僕を睨んでいる。
「俺と優士、明日はメシいらねえから」
「あ……う、うん。わかった」
そのあとも皐月は何かしゃべろうとしていたけど、気づかなかったことにして、僕はまた手元に視線を落とす。
(最近、こういうこと多いな………)
優士は今日もいない。昨日は皐月がいなかった。帰るのはたいてい明け方で、煙草臭いことが増えた。
どこに行ってるんだろう? 誰といるのかな? 僕がこの部屋にいるから、二人とも帰ってこないのかな?
どうしてこんなことになっちゃったんだろう。
(ううん、わかってるよ。竹松さんを悪く言う二人を、僕が許せないんだ)
いい人なのに、言いがかりであそこまで悪口を言うなんて。
それに、あんなふうに喧嘩したのに、何事もなかったように接しようとする二人を受け入れられなかった。……二人からしたら、この間の言い合いは喧嘩ですらないのかもしれないけど。
ジンっと、鈍い痛みが走る。
「痛っ!」
ハッと我に帰った。そうだ、キャベツを切っていたところで――考え事をしていたから指先まで切ってしまった。
「おい!」皐月が立ち上がって近づいてくる。
「何してんだよおまえ! ったく見せてみろ」
「……っ、いい! だい、じょうぶ……!」
とっさに取られた腕を払った。瞬間、皐月の表情が(もともと険しかったけど)これまでの比じゃないくらい鋭くなる。
「……そーかよ! っ、くそ!」
冷蔵庫に拳をぶつけて、そのまま部屋を出て行ってしまう。………皐月も、今日も帰ってこないのかな。
喧嘩って、どうやって終わらせるんだろう。この間のことは、なかった話にすればいいのかな。そしたら、少し前の僕たちに戻れるんだろうか。
指先ににじむ血を独りで洗い流しながら、僕は小さくため息をついた。
「おい、シロー。シロー!」
テレビの前から、皐月が僕を呼ぶ。
「てめえ、シカトしてんなよ?」
「して……ないよ、なに?」
嘘だ。今だって、実は三度くらい呼ばれるまで気づかないふりをしていた。僕はキッチンのカウンターから顔をあげて、いかにも普通な表情で皐月を見た。
皐月はテーブルに肘をつきながら、僕を睨んでいる。
「俺と優士、明日はメシいらねえから」
「あ……う、うん。わかった」
そのあとも皐月は何かしゃべろうとしていたけど、気づかなかったことにして、僕はまた手元に視線を落とす。
(最近、こういうこと多いな………)
優士は今日もいない。昨日は皐月がいなかった。帰るのはたいてい明け方で、煙草臭いことが増えた。
どこに行ってるんだろう? 誰といるのかな? 僕がこの部屋にいるから、二人とも帰ってこないのかな?
どうしてこんなことになっちゃったんだろう。
(ううん、わかってるよ。竹松さんを悪く言う二人を、僕が許せないんだ)
いい人なのに、言いがかりであそこまで悪口を言うなんて。
それに、あんなふうに喧嘩したのに、何事もなかったように接しようとする二人を受け入れられなかった。……二人からしたら、この間の言い合いは喧嘩ですらないのかもしれないけど。
ジンっと、鈍い痛みが走る。
「痛っ!」
ハッと我に帰った。そうだ、キャベツを切っていたところで――考え事をしていたから指先まで切ってしまった。
「おい!」皐月が立ち上がって近づいてくる。
「何してんだよおまえ! ったく見せてみろ」
「……っ、いい! だい、じょうぶ……!」
とっさに取られた腕を払った。瞬間、皐月の表情が(もともと険しかったけど)これまでの比じゃないくらい鋭くなる。
「……そーかよ! っ、くそ!」
冷蔵庫に拳をぶつけて、そのまま部屋を出て行ってしまう。………皐月も、今日も帰ってこないのかな。
喧嘩って、どうやって終わらせるんだろう。この間のことは、なかった話にすればいいのかな。そしたら、少し前の僕たちに戻れるんだろうか。
指先ににじむ血を独りで洗い流しながら、僕は小さくため息をついた。
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