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shy
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「お疲れ様でーす」
「十分休憩はいりまーす」
五テイクを終えて、スタッフたちが駆け寄ってくる。タオルや上着を次々渡され、俺たちは用意されたパイプ椅子に座った。そして、今撮影したばかりの演奏を確認するため、全員でモニターを向く。
「ここ、この目線いいね!」
「YUSHIくんの手つきえろーい!」
「ここで一回ライト点けたいから、その前のシーンはちょっと暗めに撮ってみたんだけどどう?」
監督、メイクの女、小道具係、それぞれが口を開く。好き勝手な感想を聞いているうち、気がつけばモニターは再生を終えていた。
(ふうん、わりといいんじゃねーの?)
新曲テレビ初披露ということで、番組スタッフも手さぐりなところはあるものの、前回のやたらキラキラした照明と演出よりはだいぶマシ。
「ここ、もう少し画質荒くしてみても面白い気がします」
「そうだねえ、試しにYUSHIくんの言ったようにしてみよっか? SATSUKIくんとUOHくんはそれでオッケー?」
監督に聞かれてうなずく。シローを見れば、シローは何か言いたそうにしていて、うなずくのを少しためらっていた。だけど結局うなずいたから、監督はカメラマンたちに説明しに行った。
休憩時間が延びたので、俺はそのへんにあった雑誌をめくりながらジュースを飲む。周りの連中から話しかけられないためだ。
面倒な奴らとの面倒な会話は優士に任せるに限る。……あ、このブランドこないだ衣装で着たな。このベルトもいい感じだ。今度買うか。
「ね、ねえ、皐月」
椅子の上でもじもじしていたシローが、呟くように俺の名前を呼ぶ。
「あ?」
「さっきのなんだけど、僕、さ……間違えちゃったんだけど……あの、ドラムを」
「ああ、めっちゃ間違えてたよな。Aメロと曲終わりんとこ」
「あ、あと……Bメロも……ダンッじゃなくて、タタンって」
「あぁ? てめっ、そんなとこまで間違えてたのかよ」
「ご、ごめん」
慌てるシローがおかしくてかわいくて、もっといじめてやろうかと睨んでみるものの、シローは監督が消えてったほうに目をやってる。
「どうしたんだっつの」
「監督……も、みんなも、今のテイク良かったって言ってたよね……僕、あれ、すごい失敗しちゃったんだけど……」
「本番失敗しなきゃいーじゃねえか」
「うん、そ、そうなんだけど……緊張するし、本番も今みたいに失敗しちゃったら、か、監督さんたち気づくかな」
(あー……そーゆーこと)
シローの言わんとしてることがやっとわかった。本番でも今みたいに自分のミスを指摘されなかったら、シローはどのタイミングで自己申告したらいいか悩んでいたらしい。
そんなもん今から気にすることかよと思うが、人見知りで口下手なシローには大問題のようだ。よくわかんねえ感覚だけど、二年近く一緒にいりゃーさすがにシローが考えてることくらいわかる。
「言えねえなら俺が言ってやるよ。うちのダメドラマーがすげえミスしてそのままだと泣いちゃいそうなんでやり直しさせてクダサーイって」
「な、泣きはしないよ……っ!」
むっとした表情ながら、その実超ほっとしてるのが伝わってくる。ほんっとに知らねえやつと話すのが苦手なんだよな。
でも、だからこそ俺らはいくらでもおまえの代わりにしゃべってやるよ。だから、おまえは俺たち以外と話すなよ?
俺たちだけを見て、俺らだけと会話して、それで世界を完成させればいい。
「十分休憩はいりまーす」
五テイクを終えて、スタッフたちが駆け寄ってくる。タオルや上着を次々渡され、俺たちは用意されたパイプ椅子に座った。そして、今撮影したばかりの演奏を確認するため、全員でモニターを向く。
「ここ、この目線いいね!」
「YUSHIくんの手つきえろーい!」
「ここで一回ライト点けたいから、その前のシーンはちょっと暗めに撮ってみたんだけどどう?」
監督、メイクの女、小道具係、それぞれが口を開く。好き勝手な感想を聞いているうち、気がつけばモニターは再生を終えていた。
(ふうん、わりといいんじゃねーの?)
新曲テレビ初披露ということで、番組スタッフも手さぐりなところはあるものの、前回のやたらキラキラした照明と演出よりはだいぶマシ。
「ここ、もう少し画質荒くしてみても面白い気がします」
「そうだねえ、試しにYUSHIくんの言ったようにしてみよっか? SATSUKIくんとUOHくんはそれでオッケー?」
監督に聞かれてうなずく。シローを見れば、シローは何か言いたそうにしていて、うなずくのを少しためらっていた。だけど結局うなずいたから、監督はカメラマンたちに説明しに行った。
休憩時間が延びたので、俺はそのへんにあった雑誌をめくりながらジュースを飲む。周りの連中から話しかけられないためだ。
面倒な奴らとの面倒な会話は優士に任せるに限る。……あ、このブランドこないだ衣装で着たな。このベルトもいい感じだ。今度買うか。
「ね、ねえ、皐月」
椅子の上でもじもじしていたシローが、呟くように俺の名前を呼ぶ。
「あ?」
「さっきのなんだけど、僕、さ……間違えちゃったんだけど……あの、ドラムを」
「ああ、めっちゃ間違えてたよな。Aメロと曲終わりんとこ」
「あ、あと……Bメロも……ダンッじゃなくて、タタンって」
「あぁ? てめっ、そんなとこまで間違えてたのかよ」
「ご、ごめん」
慌てるシローがおかしくてかわいくて、もっといじめてやろうかと睨んでみるものの、シローは監督が消えてったほうに目をやってる。
「どうしたんだっつの」
「監督……も、みんなも、今のテイク良かったって言ってたよね……僕、あれ、すごい失敗しちゃったんだけど……」
「本番失敗しなきゃいーじゃねえか」
「うん、そ、そうなんだけど……緊張するし、本番も今みたいに失敗しちゃったら、か、監督さんたち気づくかな」
(あー……そーゆーこと)
シローの言わんとしてることがやっとわかった。本番でも今みたいに自分のミスを指摘されなかったら、シローはどのタイミングで自己申告したらいいか悩んでいたらしい。
そんなもん今から気にすることかよと思うが、人見知りで口下手なシローには大問題のようだ。よくわかんねえ感覚だけど、二年近く一緒にいりゃーさすがにシローが考えてることくらいわかる。
「言えねえなら俺が言ってやるよ。うちのダメドラマーがすげえミスしてそのままだと泣いちゃいそうなんでやり直しさせてクダサーイって」
「な、泣きはしないよ……っ!」
むっとした表情ながら、その実超ほっとしてるのが伝わってくる。ほんっとに知らねえやつと話すのが苦手なんだよな。
でも、だからこそ俺らはいくらでもおまえの代わりにしゃべってやるよ。だから、おまえは俺たち以外と話すなよ?
俺たちだけを見て、俺らだけと会話して、それで世界を完成させればいい。
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