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「デビュー半年にして、若い女性から圧倒的な支持を得ている人気バンド、3moon(スリームーン)のみなさんです!」
そのかけ声を合図に、スタジオ内が熱気に包まれた。ひぇー! 気後れする僕の手を引っ張って、皐月と優士はさっさとセットへ出てしまう。わあ、観覧席は女の人だらけだ!
「こんにちはー」
柔らかい笑顔で迎えてくれたのは、グラビアアイドルの竹松めいさん。超清純派ってことで最近人気が出てきたみたいで、春から深夜枠のこのトーク番組で司会を担当してる。か、かわいい!
ちょっとぽっちゃりしてて、丸い顔、大きな目、大きい口、サラサラの黒髪、……おっきい胸。芸能人の女の人って初めて見るから、ものすごくドキドキしてしまう。
「こちらへどうぞー」
案内されて、セットの中央に置かれた真っ赤なソファに腰掛ける。移動の並び順から考えたら僕が竹松さんの横に座るはずだったんだけど、あいだにスルリと優士が滑り込んできた。どうしたんだろう? とは思ったけど、緊張しちゃうから助かった。……そっか、きっと気を遣ってくれたんだな。
『メイルーム』って番組名のとおり、セット全体が女の子の部屋みたいな仕様で落ちつかないし。(ソファの上にもハートのクッションがいっぱい並んでるんだ)
「わたし、3moonの大ファンなんですっ! ですから今日はいろいろ質問させてください! よろしくお願いしますっ」
竹松さんの明るい挨拶で、トークは始まった。
(すごい……!)
僕はもともと人前で話すのは苦手だから、聞き役に徹してるんだけど。優士はいろんな人に見られてて、スポットライトもいっぱい浴びてて、カメラだってたくさん回ってるのに、すごく自然に竹松さんと話せているんだ。確かに以前から人当たり良かったけど、すごすぎる! トーク番組初めてだなんて思えないよ。
でも、それよりさらにすごいのが皐月だ。基本的には足組んでつまらなさそうに座ってるだけなのに、ちょっとした言動がみんなを惹きつける。
「ところで、YUSHIさん! すっごく気になってる噂があるんですけど、是非解答をお願いしますっ」
「はいどうぞ」
「あの、3moonの皆さんが一緒に住んでるって……本当ですか? 会場のみんなも気になってると思うんですけど。ねぇ?」
竹松さんが観覧席に話題を振った。すると、口々に「気になるう!」という返事。
「本当です」
優士が即答したら、観覧席から歓声があがった。それを見て、皐月は背もたれから身を起こし、ニヤリと笑う。
「YUSHIママの作る飯は超うまいんすよ。俺もうYUSHIがいなきゃ生きてけねぇわ」
途端。
「キャァアア!!」
絶叫。
竹松さんも嬉しげにキャアキャア言っている。皐月は周りを巻き込むのが本当にうまい。カリスマ性があるんだと思う。
「僕、こんなに愛されてるなんて知りませんでした」
「いちいち言わねえと伝わんないのかよ」
「キャー! み、みなさん、なんだかこのへん急にアダルトな雰囲気ですっ!」
優士、皐月、竹松さん。三人のおかげで番組は大盛り上がりだ。スタッフさんたちも満足そう。良かった。
「ところでUOHさん。お二人はこう言ってますけど、実際YUSHIさんのごはんはおいしいんですか?」
「……えっ?!」
突然、竹松さんから話題を振られて、僕はすっとんきょうな声をあげてしまった。
(まずい!)
そう思うのと同時に口を開いていた。
「はいっ」
―――失敗した!!
焦って早口な返事になってしまった。しかも強張った顔で、たぶん不機嫌に見えてる。仕事をしてる以上、ずっと気を張ってなくちゃいけなかったんだ。突然だなんて、言い訳でしかない。
(僕のバカっ!)
でも、竹松さんはちょっと戸惑った表情を浮かべたあと、ニコッと満面の笑みを咲かせた。
「あ、あーやっぱりそうなんですねぇ! メンバーみんなから認められる料理上手、ってことですね」
「全員って二人しかいねぇけどな」
「二人においしいって言ってもらえたら十分だよ」
(……あ、)
みんなが自然に会話を続けてくれたから、何事もなかったように収録は進む。ホッとしたけど、同時に罪悪感。
やっぱり僕にタレントみたいな仕事は向いてないみたいだ。
そのかけ声を合図に、スタジオ内が熱気に包まれた。ひぇー! 気後れする僕の手を引っ張って、皐月と優士はさっさとセットへ出てしまう。わあ、観覧席は女の人だらけだ!
「こんにちはー」
柔らかい笑顔で迎えてくれたのは、グラビアアイドルの竹松めいさん。超清純派ってことで最近人気が出てきたみたいで、春から深夜枠のこのトーク番組で司会を担当してる。か、かわいい!
ちょっとぽっちゃりしてて、丸い顔、大きな目、大きい口、サラサラの黒髪、……おっきい胸。芸能人の女の人って初めて見るから、ものすごくドキドキしてしまう。
「こちらへどうぞー」
案内されて、セットの中央に置かれた真っ赤なソファに腰掛ける。移動の並び順から考えたら僕が竹松さんの横に座るはずだったんだけど、あいだにスルリと優士が滑り込んできた。どうしたんだろう? とは思ったけど、緊張しちゃうから助かった。……そっか、きっと気を遣ってくれたんだな。
『メイルーム』って番組名のとおり、セット全体が女の子の部屋みたいな仕様で落ちつかないし。(ソファの上にもハートのクッションがいっぱい並んでるんだ)
「わたし、3moonの大ファンなんですっ! ですから今日はいろいろ質問させてください! よろしくお願いしますっ」
竹松さんの明るい挨拶で、トークは始まった。
(すごい……!)
僕はもともと人前で話すのは苦手だから、聞き役に徹してるんだけど。優士はいろんな人に見られてて、スポットライトもいっぱい浴びてて、カメラだってたくさん回ってるのに、すごく自然に竹松さんと話せているんだ。確かに以前から人当たり良かったけど、すごすぎる! トーク番組初めてだなんて思えないよ。
でも、それよりさらにすごいのが皐月だ。基本的には足組んでつまらなさそうに座ってるだけなのに、ちょっとした言動がみんなを惹きつける。
「ところで、YUSHIさん! すっごく気になってる噂があるんですけど、是非解答をお願いしますっ」
「はいどうぞ」
「あの、3moonの皆さんが一緒に住んでるって……本当ですか? 会場のみんなも気になってると思うんですけど。ねぇ?」
竹松さんが観覧席に話題を振った。すると、口々に「気になるう!」という返事。
「本当です」
優士が即答したら、観覧席から歓声があがった。それを見て、皐月は背もたれから身を起こし、ニヤリと笑う。
「YUSHIママの作る飯は超うまいんすよ。俺もうYUSHIがいなきゃ生きてけねぇわ」
途端。
「キャァアア!!」
絶叫。
竹松さんも嬉しげにキャアキャア言っている。皐月は周りを巻き込むのが本当にうまい。カリスマ性があるんだと思う。
「僕、こんなに愛されてるなんて知りませんでした」
「いちいち言わねえと伝わんないのかよ」
「キャー! み、みなさん、なんだかこのへん急にアダルトな雰囲気ですっ!」
優士、皐月、竹松さん。三人のおかげで番組は大盛り上がりだ。スタッフさんたちも満足そう。良かった。
「ところでUOHさん。お二人はこう言ってますけど、実際YUSHIさんのごはんはおいしいんですか?」
「……えっ?!」
突然、竹松さんから話題を振られて、僕はすっとんきょうな声をあげてしまった。
(まずい!)
そう思うのと同時に口を開いていた。
「はいっ」
―――失敗した!!
焦って早口な返事になってしまった。しかも強張った顔で、たぶん不機嫌に見えてる。仕事をしてる以上、ずっと気を張ってなくちゃいけなかったんだ。突然だなんて、言い訳でしかない。
(僕のバカっ!)
でも、竹松さんはちょっと戸惑った表情を浮かべたあと、ニコッと満面の笑みを咲かせた。
「あ、あーやっぱりそうなんですねぇ! メンバーみんなから認められる料理上手、ってことですね」
「全員って二人しかいねぇけどな」
「二人においしいって言ってもらえたら十分だよ」
(……あ、)
みんなが自然に会話を続けてくれたから、何事もなかったように収録は進む。ホッとしたけど、同時に罪悪感。
やっぱり僕にタレントみたいな仕事は向いてないみたいだ。
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