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guerrilla2

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 ゲリラライブ用の特設ステージからは、ファンの姿がよく見える。にしても、こいつらの何人が俺らの音楽を聞きに来てんだか。
 最前列に詰めかける女どもを一瞥して、スタンドにセットされたギターを手にした。優士、シローと順に見やれば二人ともいつでもオッケーらしい。そんじゃ、さっさと始めるか。
 伴奏なしで歌い始めた瞬間、今までの比じゃないくらいの歓声。続くギターの音色は、やまない叫び声にかき消された。糞ったれ、ここのトレモロが見せ場だったっつーの。
 曲にドラムとベースが加わっちまえば、ギターの出番はほとんどなし。つまんねぇんだよこんな曲。愛だの恋だの叫ぶばっかで、ちゃっちいことこのうえねーし。こんな曲に熱を上げる奴等も、全員つまんねぇんだよ。
 一曲目が終わるころには、そのつまんねぇ奴等で路上が埋め尽くされていた。YUSHI、SATSUKI、と名前を呼ばれてもMCの邪魔にしか思えない。まじうぜぇ。
 でも、苛ついた表情のままシローと視線を合わせるたび、申しわけなさそうに微笑まれるのはイイ。
 シローはこの反吐が出そうな現状を「自分がデビューしたがったせいだ」って思ってるからな。そのまま一生罪悪感にまみれてろ。俺たちを裏切ろうなんて考えるなよ。そのために俺らは、こんな糞ったれた世界で生きていこうと決めたんだから。
 俺も優士も、シロー、おまえがいれば他はすべてどうなってもいいんだ。
 結局ライブは、三曲やったとこで警官が来て中止になった。今日の仕事終了。警察の奴ら、いい仕事してんじゃねぇか。おかげで予定より早く、家に向かってる。
「あんたたち、三人一緒に住んでるから送迎楽でいいわあ。前担当してたアッシュなんて、売れてないくせにみんな一人暮らししてたから大変だったのよお」
 車を運転しながら、マネージャーの中嶋がうぜぇこと言い始めた。シローを見れば、驚いた顔で「へぇ!」とか返してやがる。いつもはびびってろくに返事しねぇくせに。おまえ、俺たちのとこから離れて一人暮らしでもしたいわけ? んなこと絶対ぇさせねえよ。そんなこと言ったが最後、犯しまくって俺たちなしじゃいらんねーくらい、セックス漬けにしてやる。むかついたから、シローの肩を抱いてこめかみに噛みついた。
「痛っ、なっ何するの!」
「別に?」
「別にって何さ……うわっ、やめて……あっ」
 歯形のついた箇所をひと舐め、ふた舐め。狭い車内だから、逃げきれずに鳴いている。はっ、煽んじゃねーよ、マジで犯すぞ。
「優士ぃ……皐月、止めさせてー……」
「ん? 皐月、シロー痛がってる」
「ふんっ」
 シローにすがりつかれた優士が、イイ奴ぶって俺を引き離す。シローはこいつのこと救世主とでも思ってるんだろーけどな……視線が合えば、優士が小さく微笑んだ。歪んだ笑顔。ほらな、こいつだっておんなじこと考えてやがるんだよ。
 シロー、おまえのこと、二人がかりで逃がすつもりはねぇからな? 一生俺らのもとに縛りつけてやる。
 芸能界も同じ家も、そのための鳥かごでしかねぇんだから。
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