恋愛代行業者

ぼたもち。

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再会

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◇◇◇◇◇◇

すごくクラクラする。

「ふふ、地球ってこんなにぐるぐるしてたっけ…」
「もうっ、何言ってんだよっ…!」
「わぁー、勝手に動いてる…!」
「私がおぶってんだよ!」

そうなんだ。…でもなんで僕おんぶされてるの?

「ゔっ…」
「なに」

呆れたようにため息をついて、眉間に皺を寄せた。

「吐きそうれす…」
「はぁ?!」
「うっ…!」

沙織さんは慌てて僕を下ろして、僕は慌てて駅のトイレへ駆け込んだ。
 少し吐いて、楽になってまた吐いての繰り返し。そんなことを続けていると突然、コンコンと扉を叩かれた。

「は、いっ…」
「大丈夫ですか?」

低い男の声。

「はい、だいじょう…ゔっ…」
「辛そうですね…。あ、俺胃薬ありますよ」

ケホケホとむせて、少し考えた。薬って人に貰っちゃダメなんだって。
でも今は楽になりたい。……貰うしかないよね?

「あのっ…欲しいです…」
「わかりました。開けてもらえますか?」

僕は迷わず扉を開けた。

「え」

驚いた声がして振り返ると、そこに立っていたのは葵さん。

「あおいさん…?」
「妖狸さん?」
「確かに…妖狸ですけど僕の名前は狸塚瑠衣です」

言ってそれから、今はそんなことより薬!と心の中で叫んだ。

「ははっ、また会えたね。運命かも」
「ゔっ…く、くすりっ…」
「薬も大事だけど先に水飲もうか」

ティッシュで僕の口元を拭ってペットボトルを取り出した。

「どうぞ」
「ありがとうございます」
「ゆっくりね」

僕は言われた通りゆっくり水を飲んだ。

「ふぅ…」
「落ち着いた?」
「はい。助かりました」

僕を見て、クスッと笑ってから薬が渡された。

「顔赤い」

スル…と頬を撫でられて、ビクッと肩が跳ねた。びっくりした…。夏なのに手が冷たい。きっと僕の頬がそれくらい熱いんだと思う。
僕は葵さんの手を取って頬に当てた。

「きもちいぃ…」

スリ…と頬を寄せる。
目の前で喉がゴクリとなった。

「へへ、飲みすぎました」

葵さんを見上げると、キツイ何かに耐えるように眉間に皺を寄せていた。

「あおいさん…?」
「ホント飲み過ぎ」
「だって沙織さんがいっぱい注ぐから」
「…誰それ」
「仕事の人です。沙織さんは妖狐ですよ」

クスッと笑うと、『それ早く飲んで』って怒られた。
またペットボトルの水をもらって薬を飲んだ。

「ありがとうございました。しばらくしたら落ち着くと思うので。…失礼します」

ホントに飲みすぎちゃった。フラフラして真っ直ぐ歩けない。
そう思ったと同時に、足がもつれてフラッと倒れた。思わずキュッと目を瞑ったけど痛くない。
そっと目を開けると目の前には葵さんが居て、大きな身体に支えられていた。

「あ、ありがとうございます」

重いかなと思って退こうとしたんだけど、ギュッと抱きしめられていて動けない。

「あの…もう大丈夫ですので…それに何から何まで申し訳ないです」
「俺が家まで送るよ」

ニコッと王子様のような笑顔を見せて僕を抱き上げた。
お酒が回っていてボーっとする。眠たい。ふぁ、と欠伸をするとクスッと笑って、『寝てていいよ』って言った。

沙織さんが待ってるのに。

そう思ったけれど睡魔には勝てなくて、気絶するように眠りについた。
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