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二百二十七話 お題:ダイニングキッチン 縛り:発酵
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女友達の話である。彼女の家に遊びに行ったところ、ダイニングキッチンに巨大なプラスチックの漬物樽が置いてあったので、漬物を作っているのかと聞いてみると、
「あぁ、あれね。漬物じゃなくて味噌を作ってるのよ」
私は彼女が自家製味噌を作っていることに驚き、味噌作りは大変じゃないのかと聞いた。すると彼女は、
「確かに手間はかかるけど、そこまで難しくはないのよ。仕込みが終わったら後は発酵させるだけだし……でも実はその発酵が上手くいかなくて、それに主人がこの間リストラされて息子は中学の受験に失敗して母は介護が必要になって何もかも上手くいかないの。それで思いついたのよ。私の血を味噌に混ぜたら上手く発酵するんじゃないかって。どんな本にも書いてないけどでも突然閃いたアイデアって案外上手くいったりするでしょう。だから今からやってみせるからそのまま見ててね」
そう言うと彼女は包丁を持ち出し、漬物樽の蓋を開けて中に入っていた味噌の上で手首を切った。彼女が自分の血と味噌を手でかき混ぜ始めたのを見てようやく私は我に返り、救急車を呼んだ。幸い彼女は一命をとりとめ、ノイローゼと診断されて現在治療中である。なお私はこの一件で好物である味噌を使った料理が一切食べられなくなり、非常に辛い日々を送っている。
「あぁ、あれね。漬物じゃなくて味噌を作ってるのよ」
私は彼女が自家製味噌を作っていることに驚き、味噌作りは大変じゃないのかと聞いた。すると彼女は、
「確かに手間はかかるけど、そこまで難しくはないのよ。仕込みが終わったら後は発酵させるだけだし……でも実はその発酵が上手くいかなくて、それに主人がこの間リストラされて息子は中学の受験に失敗して母は介護が必要になって何もかも上手くいかないの。それで思いついたのよ。私の血を味噌に混ぜたら上手く発酵するんじゃないかって。どんな本にも書いてないけどでも突然閃いたアイデアって案外上手くいったりするでしょう。だから今からやってみせるからそのまま見ててね」
そう言うと彼女は包丁を持ち出し、漬物樽の蓋を開けて中に入っていた味噌の上で手首を切った。彼女が自分の血と味噌を手でかき混ぜ始めたのを見てようやく私は我に返り、救急車を呼んだ。幸い彼女は一命をとりとめ、ノイローゼと診断されて現在治療中である。なお私はこの一件で好物である味噌を使った料理が一切食べられなくなり、非常に辛い日々を送っている。
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