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百七十四話 お題:閉め出す 縛り:三竦み、火山、紐革、怯懦
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人を殺した時の話をしようと思う。私には特別仲はよくないがつきあいだけは長い女の知り合いが二人いた。仮にAとBとしよう。私達三人の関係はちょうど三竦みの関係で、Aは私に強いがBに弱い、BはAに強いが私に弱い、私はAに弱いがBに強い、という具合だった。そんな私達だが、三人そろって山登りをすることが稀にあった。私達は共通する趣味がそれしかなかった。そしてある火山に登った際、不運なことにその火山が噴火した。火山弾が降り注ぐ中、私とBはなんとか避難小屋に辿り着いた。私達から少し離れたところにいたAはまだ辿り着けていなかった。その時、魔が差したのだ。私はBに言った。
「避難小屋の扉を閉めろ」
Bはそれを実行した。Aは避難小屋に入れず、火山弾で全身を砕かれて死んだ。警察には逃げる時にパニックになり、思わず避難小屋の扉を閉めてしまったと説明した。警察はそれをあっさりと信じた。その一件からしばらくして、私とBは二人で紐革を食べた。お互いにやつれていた。二人とも本来は怯懦な性格なので、当然だと思われた。Bが私に言った。
「……私達、一生のつきあいになるね」
私は返事をせず、味もよくわからない紐革を啜った。
「避難小屋の扉を閉めろ」
Bはそれを実行した。Aは避難小屋に入れず、火山弾で全身を砕かれて死んだ。警察には逃げる時にパニックになり、思わず避難小屋の扉を閉めてしまったと説明した。警察はそれをあっさりと信じた。その一件からしばらくして、私とBは二人で紐革を食べた。お互いにやつれていた。二人とも本来は怯懦な性格なので、当然だと思われた。Bが私に言った。
「……私達、一生のつきあいになるね」
私は返事をせず、味もよくわからない紐革を啜った。
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