上 下
151 / 302

百五十話 お題:内部 縛り:弘法、 幔幕、続編、兆す

しおりを挟む
 親戚の男性の話である。彼は歴史ものに目がなく、お気に入りの時代小説の続編が出るのをいつも心待ちにしているような男なのだが、桜の新芽が兆す頃、素晴らしいものを手に入れたから是非見に来てほしい、と言われたため家を訪ねてみることにした。
「よく来てくれたね、さぁ見てくれ、これなんだけれども」
 それはお寺にかけられているような五色の幔幕で、なんでも弘法大師が直々に名前を書いたものなのだという。
「友達から借金の担保として預かっていたものなんだが、借金を返せなくなったと言ってきたんでそのままもらったんだ。最初は本物かどうか疑っていたんだが幔幕に書かれた字を見た瞬間に疑いは吹き飛んでしまったよ。流石弘法にも筆の誤りと諺になるだけのことはある」
 正直私はその幔幕が本物だとは思えなかったのだが、部屋に幔幕を張り巡らせて悦に入る彼にそんなことは言えず、その日は適当に話をして退散した。それから一月ほどして、突然彼が亡くなったと連絡が入った。なんでも幔幕 を部屋に張り巡らせてから日に日に彼の体調は悪くなっていったそうで、病院で検査をしたところ体内のあちこちに異物が見つかり、手術で可能な限り除去したものの既に手遅れだったという。なおその異物というのは骨でできた小さな仏像だったそうだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

我慢できないっ

滴石雫
大衆娯楽
我慢できないショートなお話

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

生意気な女の子久しぶりのお仕置き

恩知らずなわんこ
現代文学
久しくお仕置きを受けていなかった女の子彩花はすっかり調子に乗っていた。そんな彩花はある事から久しぶりに厳しいお仕置きを受けてしまう。

おむつオナニーやりかた

rtokpr
エッセイ・ノンフィクション
おむつオナニーのやりかたです

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

処理中です...