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十 文明と影
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「アタシ、自分のことをずっとどうしようもないバカだと思ってたのよ」
うねり狂う髪に押し潰されそうになっている法山の視線が、銃を持って立ち上がった佐治さんに向けられる。
「どうせ死ぬまで救われないし、オマエへの復讐が終わったらきっと何一つ残ってない。それなのに、どうしてこんな人生を、わざわざ続けてるんだろうって」
ワタリガラスが羽搏くように、佐治さんは暗黒の銃を振り上げ、法山に向ける。上空には腐敗した巨大な右の眼球が顕れ、法山の顔は何へと向けたものなのかもわからぬ憤怒に歪み、佐治さんは真っ直ぐに法山を狙っている。
「やっと。本当にやっと、わかった――オマエのそのツラを見るために、アタシは今日まで地べた這い擦り回って、生きてきたんだ」
「――さああああああああああああああああああああじいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!!!!!!」
引き金が引かれる音。本来なら僕の耳に届くはずのないあまりも些細な音。しかし、それはあらゆる大鐘楼の鐘の音を超えて響いた。法山の頭が弾け飛び、形だけの僕が髪の奔流に飲み込まれる。腐れた顔を引く髪の動きは止まらず、ついに全容を露わにしたその顔が、動かす都度断裂する外眼筋を以て法山を標的に収める。
――瞬きの後、そこにはもう、法山も髪の渦もなく、
(あぁ……これで)
僕の破滅は、終わっていた。
うねり狂う髪に押し潰されそうになっている法山の視線が、銃を持って立ち上がった佐治さんに向けられる。
「どうせ死ぬまで救われないし、オマエへの復讐が終わったらきっと何一つ残ってない。それなのに、どうしてこんな人生を、わざわざ続けてるんだろうって」
ワタリガラスが羽搏くように、佐治さんは暗黒の銃を振り上げ、法山に向ける。上空には腐敗した巨大な右の眼球が顕れ、法山の顔は何へと向けたものなのかもわからぬ憤怒に歪み、佐治さんは真っ直ぐに法山を狙っている。
「やっと。本当にやっと、わかった――オマエのそのツラを見るために、アタシは今日まで地べた這い擦り回って、生きてきたんだ」
「――さああああああああああああああああああああじいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!!!!!!」
引き金が引かれる音。本来なら僕の耳に届くはずのないあまりも些細な音。しかし、それはあらゆる大鐘楼の鐘の音を超えて響いた。法山の頭が弾け飛び、形だけの僕が髪の奔流に飲み込まれる。腐れた顔を引く髪の動きは止まらず、ついに全容を露わにしたその顔が、動かす都度断裂する外眼筋を以て法山を標的に収める。
――瞬きの後、そこにはもう、法山も髪の渦もなく、
(あぁ……これで)
僕の破滅は、終わっていた。
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