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九 望遠の楯
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「ごめん……ごめんなさい、楓。私、楓の友達なのに、自分のことしか考えてなかった。自分のためなら、楓が幸せにならなくてもいいって……そのことをずっと隠して、楓が幸せになることを望んでる振りをして、ずっと……ごめんなさい、ごめんなさい……」
梓の告白には心底驚いた。もしかしたら人生で一番驚いたかもしれない。だが、驚いてばかりもいられない。僕には最優先で解決しなければならない問題があるし、それは今目の前で起こっているのだから。
梓の方に体を寄せ、右手を伸ばして頬に触れる。
「梓、まずは泣き止んでくれないかな。梓が泣いていると、辛い」
「か、楓……どうして、どうしてまだ私に優しいの?」
梓は本当に意外そうに僕に言った。僕は梓の涙を拭いながら答える。
「――梓は、自分のことしか考えてなかった、って言ったけど、それは僕も同じなんだ」
「……え?」
そう。梓が僕の幸せを望んでいないというなら、僕だって梓の幸せを望んでいない。トカゲという姿形を具えた理不尽。僕が本当に梓の幸せを望んでいるのなら、僕はとっくの昔に梓の前から消え去っていなければならない。そのことから導き出される僕の本心は、本当に、ヘドロのように、醜い。
――あぁ、そうだ。僕は、梓を不幸にしてでも、側にいたいのだ。
梓の告白には心底驚いた。もしかしたら人生で一番驚いたかもしれない。だが、驚いてばかりもいられない。僕には最優先で解決しなければならない問題があるし、それは今目の前で起こっているのだから。
梓の方に体を寄せ、右手を伸ばして頬に触れる。
「梓、まずは泣き止んでくれないかな。梓が泣いていると、辛い」
「か、楓……どうして、どうしてまだ私に優しいの?」
梓は本当に意外そうに僕に言った。僕は梓の涙を拭いながら答える。
「――梓は、自分のことしか考えてなかった、って言ったけど、それは僕も同じなんだ」
「……え?」
そう。梓が僕の幸せを望んでいないというなら、僕だって梓の幸せを望んでいない。トカゲという姿形を具えた理不尽。僕が本当に梓の幸せを望んでいるのなら、僕はとっくの昔に梓の前から消え去っていなければならない。そのことから導き出される僕の本心は、本当に、ヘドロのように、醜い。
――あぁ、そうだ。僕は、梓を不幸にしてでも、側にいたいのだ。
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