文明トカゲ

ペン牛

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九 望遠の楯

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「……二人とも、お腹、空いてない、かな?」
 僕は恐る恐る尋ねた。二人は正気を疑うような目で僕のことを見た。まぁ無理からぬことだろう。僕だって自分がどうしてこんなことを言ったのかわかりかねている。
「……せんせー、ひょっとして、わざとやってる?」
 真奈さんが血走った目でこちらを睨む。恐ろしいが、少なくともわざとやっているのではない以上、その問いに対しては本当のことを言える。
「――違うよ。本当にお腹が空いて、頭が上手く回らないんだ。何かお腹に入れれば、もっと落ち着いて話ができると思ったから」
 真奈さんからの反論はなかった。しかし黙ってこちらを睨みつけてくる。家にすぐ食べられるものは何かあっただろうか、と記憶を辿る。あぁ、買い置きのカップラーメンが残っていたはずだ。
「……カップラーメン作ってくるけど、真奈さん、食べる?」
 数秒間の沈黙の後、
「……食べる」
 返事が返ってきた。
「何味がいい?」
「……一番カロリー低いやつ」
「わかった。梓は食べる、かな?」
 梓は一瞬僕の方に視線を向けると、
「……うん、食べる」
 と言った。
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