文明トカゲ

ペン牛

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六 完全の家

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 トカゲに支配されているだろうこの場所でありえないことなどない、とわかっていたはずなのに、それでも思考が目の前の女性の存在を否定する。
(何故、一体なんのために、彼女を、彼女は――)
 女性は僕のことを認識すると目を見開いて、駆け寄ってきた。そして、
「――やった! やっと、人に会えた……!」
 歓喜の叫びを上げた。
「……あの、あなたは」
「あ、っと、そうだ、ごめんなさい。いきなりこんなこと言われたらびっくりしますよね。私――笹岩楓っていいます。気がついたらこの場所にいて、ずっと出口を探してたんです。ここには私以外誰もいないと思ってたから、人に会えて本当に嬉しくて、つい叫んじゃいました」
「そう……だったんですか」
 懸命に眩暈を堪えて返事をする。この女性は今なんと名乗った? 笹岩楓、と、そう名乗らなかったか?
「そうだ! よかったら名前教えてもらえませんか? せっかくこうして会えたんだし、これからは二人で協力した方がいいと思うんです。どうでしょう?」
 名前を教える――本来なら自然なことだが、正直に教えてしまえば偶然居合わせたはずの二人の人間が同姓同名という極めて不自然な状況が出現することになる。百歩譲ってごくありふれた名前であればまだ可能性はあるのかもしれないが、僕の名前はそこまで一般的というわけでもない。
「……海野です。海野、雪子」
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