70 / 266
四 照魔の鏡
26
しおりを挟む
「お前、お前えええええええええええええええええ、何をしいいいいいい、違う。違う違う違う違う違う違うう、俺は、俺は違う、俺は、俺は人間じゃねえ、俺は人間なんかじゃねえ、女なんかじゃねえ、俺は、俺は笹岩楓なんて名前じゃねえええええええええええええええええ」
それを聞いて、僕は自分の力を、そして僕がトカゲに何をしたのかを理解した。
(――そうか。僕はこのトカゲを、無理矢理僕に作り変えているのか)
「嫌だああ、嫌だああああ、許せ、許して、許してください、俺は、俺は、僕になりたくないんです、僕になんかなりたくない! 僕になんかなりたくないいいい! 僕は俺のままで! 僕は、僕は、僕はあああああああああああああああ!! あーあああああ、ああああ、あー、ああああああ、あ」
――絶叫が終わる。着実に僕へと近づいていたトカゲの体は変化に耐えられなかったのか、ある地点を境に急速に実体を薄れさせ、やがて何も存在していなかったかのように消え去った。
生き延びられたという安堵から、その場に膝をつきたくなるが、僕にはまだやらなければならないことがあった。
まだ何が起こったのかわからず放心している真奈さんに歩み寄る。そして片膝をつき、彼女を抱き締めた。
「――もう大丈夫だよ。今まで辛かったね、真奈さん」
梓にしてもらったように真奈さんの頭を撫でる。頭を撫で始めてから少しして、腕の中から、大きな大きな泣き声が聞こえてきた。
その泣き声が終わるまで、僕はずっと、少女の苦しみで張り詰めた、風のような感触の黒髪を撫で続けた。
四 照魔の鏡 終了
※次回の更新は10月を予定しています。
それを聞いて、僕は自分の力を、そして僕がトカゲに何をしたのかを理解した。
(――そうか。僕はこのトカゲを、無理矢理僕に作り変えているのか)
「嫌だああ、嫌だああああ、許せ、許して、許してください、俺は、俺は、僕になりたくないんです、僕になんかなりたくない! 僕になんかなりたくないいいい! 僕は俺のままで! 僕は、僕は、僕はあああああああああああああああ!! あーあああああ、ああああ、あー、ああああああ、あ」
――絶叫が終わる。着実に僕へと近づいていたトカゲの体は変化に耐えられなかったのか、ある地点を境に急速に実体を薄れさせ、やがて何も存在していなかったかのように消え去った。
生き延びられたという安堵から、その場に膝をつきたくなるが、僕にはまだやらなければならないことがあった。
まだ何が起こったのかわからず放心している真奈さんに歩み寄る。そして片膝をつき、彼女を抱き締めた。
「――もう大丈夫だよ。今まで辛かったね、真奈さん」
梓にしてもらったように真奈さんの頭を撫でる。頭を撫で始めてから少しして、腕の中から、大きな大きな泣き声が聞こえてきた。
その泣き声が終わるまで、僕はずっと、少女の苦しみで張り詰めた、風のような感触の黒髪を撫で続けた。
四 照魔の鏡 終了
※次回の更新は10月を予定しています。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
隣の人妻としているいけないこと
ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。
そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。
しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。
彼女の夫がしかけたものと思われ…
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
ピアノ教室~先輩の家のお尻たたき~
鞭尻
大衆娯楽
「お尻をたたかれたい」と想い続けてきた理沙。
ある日、憧れの先輩の家が家でお尻をたたかれていること、さらに先輩の家で開かれているピアノ教室では「お尻たたきのお仕置き」があることを知る。
早速、ピアノ教室に通い始めた理沙は、先輩の母親から念願のお尻たたきを受けたり同じくお尻をたたかれている先輩とお尻たたきの話をしたりと「お尻たたきのある日常」を満喫するようになって……
【R18】僕の筆おろし日記(高校生の僕は親友の家で彼の母親と倫ならぬ禁断の行為を…初体験の相手は美しい人妻だった)
幻田恋人
恋愛
夏休みも終盤に入って、僕は親友の家で一緒に宿題をする事になった。
でも、その家には僕が以前から大人の女性として憧れていた親友の母親で、とても魅力的な人妻の小百合がいた。
親友のいない家の中で僕と小百合の二人だけの時間が始まる。
童貞の僕は小百合の美しさに圧倒され、次第に彼女との濃厚な大人の関係に陥っていく。
許されるはずのない、男子高校生の僕と親友の母親との倫を外れた禁断の愛欲の行為が親友の家で展開されていく…
僕はもう我慢の限界を超えてしまった… 早く小百合さんの中に…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる