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四 照魔の鏡
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ドン!! ドン!! ドン!! ドン!! ドン!! ドン!!
――音は一定のリズムで、部屋の外から聞こえてきた。それが階段を踏み鳴らす音だと気づいた時には、音は既に部屋の扉のすぐ側まで来ていた。
(今日、真奈さんのご両親は二人とも帰りが遅くなるはずだ。家の中には僕達の他には誰もいない。泥棒の類だとしたら、こんな馬鹿げた大きさの足音を立てるはずがない。何より――)
「――あ、あ、あ」
真奈さんの反応を見て、確信する。今、この部屋の外までトカゲが来ているのだと。
カチャリ、と静かに部屋の扉が開き、そこで僕は初めて、自分が真奈さんを連れて部屋から逃げることすら思いつかなかったことに気がついた。
(――諦めてるのか、僕は!!)
真奈さんを助けたいと、見捨てたくないと言っておきながら、本当はどうしようもないと諦めていたのか。
(いや、まだだ、まだ間に合う!)
「真奈さん、逃げ――」
青ざめた顔をした真奈さんの手を取り、窓に視線をやると――それは、既に部屋の中にいた。
一見すると、それは人間の形に近かった。だが人間にしては体のあらゆる箇所の凹凸が少なかった。衣服の類は身に着けておらず、徹底的に簡略化されたマネキン、という印象を受けた。それは僕が見ていることに気づいたのか、自身の胴体に手を突っ込むと、そこから、人間の顔の鼻から下の部分を取り出した。
――僕の見ている前で、それが動き、喋り出す。
「おい、お前、逃げるって、言ってたな」
「……僕、は」
――体が宙に浮く。トカゲが僕の胸倉を掴み、片腕一本で持ち上げたのだ。
――音は一定のリズムで、部屋の外から聞こえてきた。それが階段を踏み鳴らす音だと気づいた時には、音は既に部屋の扉のすぐ側まで来ていた。
(今日、真奈さんのご両親は二人とも帰りが遅くなるはずだ。家の中には僕達の他には誰もいない。泥棒の類だとしたら、こんな馬鹿げた大きさの足音を立てるはずがない。何より――)
「――あ、あ、あ」
真奈さんの反応を見て、確信する。今、この部屋の外までトカゲが来ているのだと。
カチャリ、と静かに部屋の扉が開き、そこで僕は初めて、自分が真奈さんを連れて部屋から逃げることすら思いつかなかったことに気がついた。
(――諦めてるのか、僕は!!)
真奈さんを助けたいと、見捨てたくないと言っておきながら、本当はどうしようもないと諦めていたのか。
(いや、まだだ、まだ間に合う!)
「真奈さん、逃げ――」
青ざめた顔をした真奈さんの手を取り、窓に視線をやると――それは、既に部屋の中にいた。
一見すると、それは人間の形に近かった。だが人間にしては体のあらゆる箇所の凹凸が少なかった。衣服の類は身に着けておらず、徹底的に簡略化されたマネキン、という印象を受けた。それは僕が見ていることに気づいたのか、自身の胴体に手を突っ込むと、そこから、人間の顔の鼻から下の部分を取り出した。
――僕の見ている前で、それが動き、喋り出す。
「おい、お前、逃げるって、言ってたな」
「……僕、は」
――体が宙に浮く。トカゲが僕の胸倉を掴み、片腕一本で持ち上げたのだ。
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