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四 照魔の鏡
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「その子はすごく頭がいいらしいんだけど、テストでわざと0点を取ったりするみたいなのよ。それで怒られると、今度は九十何点とかすごい点を取っちゃうらしくてね。お客さんも本当にどうしたらいいのかわからないって」
「……その話が本当なら、確かに困るでしょうね」
勉強が嫌いで家庭教師をつけても成績が上がらないから困る、というのであればよくある話なのだろうが、テストの点数を0点から百点近い高得点まで好き勝手に取るというのはあまり聞いたことがない。
「でも、それなら余計に僕にできることなんて何も――」
「いいえ、私は楓ちゃんだからこそ可能性があると思ってるわ」
「可能性、ですか?」
「そう。私、知ってる人の中に若くて、しかも優しくて真面目で穏やかな子はいたかな? って考えたの。そういう子に家庭教師をしてもらえば、お客さんのお嬢さんも心を開いてくれるんじゃないかなって。そうしたらすぐに楓ちゃんのことが思い浮かんだのよ。だから楓ちゃんに家庭教師に興味はない? って聞いたんだけど……どう?」
「――そう、ですね」
日頃からお世話になっている雪子さんにここまで言われてしまっては、断ることは難しかった。不安は大きい、というより、不安しかないのだが、それでも雪子さんのためであれば全力を尽くそう、と思える自分がいる。
「わかりました。上手くいくかはわかりませんが、やってみます」
「――嬉しい! ありがとうね、楓ちゃん。もしも上手くいかなくても、何も気にしなくていいからね。あと家庭教師のお給料もなるべく多くもらえるようにお客さんに相談しておくから安心してね」
(……話を聞く限り、勉強を教えるどころか僕が勉強を教わることになってもおかしくないんだけどな)
とはいえ、ただ勉強を教える、という仕事ではない以上、あるいは僕にもできることがあるはずだ――僕は半ば無理矢理にそう信じ込むことにした。
「……その話が本当なら、確かに困るでしょうね」
勉強が嫌いで家庭教師をつけても成績が上がらないから困る、というのであればよくある話なのだろうが、テストの点数を0点から百点近い高得点まで好き勝手に取るというのはあまり聞いたことがない。
「でも、それなら余計に僕にできることなんて何も――」
「いいえ、私は楓ちゃんだからこそ可能性があると思ってるわ」
「可能性、ですか?」
「そう。私、知ってる人の中に若くて、しかも優しくて真面目で穏やかな子はいたかな? って考えたの。そういう子に家庭教師をしてもらえば、お客さんのお嬢さんも心を開いてくれるんじゃないかなって。そうしたらすぐに楓ちゃんのことが思い浮かんだのよ。だから楓ちゃんに家庭教師に興味はない? って聞いたんだけど……どう?」
「――そう、ですね」
日頃からお世話になっている雪子さんにここまで言われてしまっては、断ることは難しかった。不安は大きい、というより、不安しかないのだが、それでも雪子さんのためであれば全力を尽くそう、と思える自分がいる。
「わかりました。上手くいくかはわかりませんが、やってみます」
「――嬉しい! ありがとうね、楓ちゃん。もしも上手くいかなくても、何も気にしなくていいからね。あと家庭教師のお給料もなるべく多くもらえるようにお客さんに相談しておくから安心してね」
(……話を聞く限り、勉強を教えるどころか僕が勉強を教わることになってもおかしくないんだけどな)
とはいえ、ただ勉強を教える、という仕事ではない以上、あるいは僕にもできることがあるはずだ――僕は半ば無理矢理にそう信じ込むことにした。
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