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SS No.2 旅立ちし乙女
母娘、いっしょに
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さて、助けられたヤカミ妃は、娘のシコメ姫をつれてヨモツ国から他国への脱出を試みることになった。
シコメ姫は、松明をもち、ぴんと腕を伸ばしてヤカミ妃の手をひき、くちかけた扉の前に連れていった。
そのとき、母娘らしくお互いの顔を確かめ合うように見つめていた。
シコメ姫は、ヤカミ妃と一緒に、いもむしのごとく身体を動かし、くちかけた扉に開けた穴から牢獄の通路に出てきた。
そこで、
「お母様。この先の出口で、牢獄にいる人間がでられへんよう、ハイドが四六時中見張ってまんねんわ。それ以外の方法を考えまひょよ。」
シコメ姫は、背中に長槍を背負いながら、真剣な顔つきで牢屋の出口の方向を指差し、ヤカミ妃に話をした。
その話は、ハイドの警戒が及ぶ出口以外で探せないかというものであった。
これを受け、ヤカミ妃は、頭を少し前に下げ、右手の指をあごにつかませた状態で、これから行なう脱出作戦について考えをめぐらせた。
そして、
「わてが天女になって、能力使うて天井に穴を開ける。ほんで、わてがシコメのこと背負ってその穴から地上に出るいうもんやけど、どうや?」
ヤカミ妃は、頭に閃光がついたかのような表情を見せ、自慢げに編み出した脱出作戦をシコメ姫に提案した。
「お母様。その作戦、ええね。うちも協力しまんねん。」
シコメ姫は、にこにことした娘らしい顔でヤカミ妃を見つめ、ヤカミ妃の提案を受け入れた。
これにより、ヤカミ妃・シコメ姫の二人による脱出作戦が本格的に決行された。
まず、
「宇宙に浮かぶ星、母なる大地を潤す水。そして煌きを与える火、八百万の神々や天女の守り神たちよ。我がすばる王朝の猛き天女に力を与えたまえ。」
ヤカミ妃は、代々すばる王朝に伝えられてきた『天つ乙女のまじない』というものを唱え、まばゆい紺地の色の光に包まれた。
彼女は、そのとき、剣などの鍛冶に取り組む職人のように真剣な表情でいた。
光につつまれた彼女は、その中でタキリと色違い、茶色い髪と紺色の目、うさぎの肌を思わせる色の肌、紺色の冠・飾りもの・羽衣・着衣、また国王や王妃にしかつけることがゆるされない身分を示す黄金色の腰帯を身につけていた。
また、右側にシコメ姫の身長よりも長いであろうぴかぴかと光るくろがねの剣をもち、それを持つ手に布を巻いていた。
このとき、ヤカミは、かつてすばるの防衛天女隊とよばれる特殊な国防集団において一番に強いといわれた鉄剣の能力を持つ天女に姿を変えた。
「お母様の天女の姿、めっちゃ可愛ええ。一瞬、目の前に神様が降り立ったかと思うてしもうたわ。」
シコメ姫は、一瞬意外そうな顔つきでヤカミ妃を見つめた後、ほめの言葉をかけた。
このとき、シコメ姫は、ヤカミ妃の天女としての姿を見て、そのうつくしさなどに自らあこがれを抱いた。
「シコメ、おおきに。」
ヤカミ妃は、やさしさあふれる目でシコメ姫を見つめ、うれしそうに言葉を返していた。
ヤカミ妃は、シコメ姫を五〇寸ほど離れた場所に移動させ、剣の先を地面につけ、二回ほど鼻に空気を吸い込んだ。
見る限りでは、彼女は脱出を前にして、呼吸を整えて気持ちを落ち着かせているようだった。
「いっくで!!」
ヤカミ妃は、天上に届かんばかりの気合が込められた叫び声とともに、剣を上方向にむけて力を込めた。
剣からは、紺青にかがやく光が発せられ、彼女はそれを円形に振り回した。
またたく間に、光は天井に達し、その真上にある石積みや土をちりやほこりに変えていった。
やがて、剣の紺青の光は収束し、天井には目測の直径で五尺ほどの穴が開いていて、その先には、非常に小さくぼんやりとはしているものの、地上に開いた出口を確認できた。
「シコメ、早よう行くで。」
ヤカミ妃は、慣れた手つきで剣を左腰の鞘にしまい、しゃがみ顔を後ろに向かせた上で、移動させていたシコメ姫に声をかけた。
「あぁ、お母様!? 待ってや。」
五〇寸ほど離れた所でボーッと立っていたシコメ姫は、声を掛けられるなり、あたふたした様子でヤカミ妃の元に急いだ。
シコメ姫は、しゃがんでいたヤカミ妃の元におもむき、両腕をその首にくぐらせ、脚を腰の部分に置き、お腹を背中につけた。
それは、さながら、赤ちゃんが母親におぶってもらうおんぶをおもわせた。
そして、ヤカミ妃は、シコメ姫を背中に負ぶり、ひらひらと風になびく羽衣を操り、身体を浮かせて開けた穴に入った。
ヤカミ妃は、シコメ姫をおんぶし、はやぶさどりのような速さで風をきりながら、穴の中を進んだ。
しばらくヤカミ妃たちが穴を進むなり、小さく見えていた地上の出口が次第に大きくなっていった。
まもなく、風を切る音とともに、ヤカミ妃とシコメ姫は、穴から星空の広がる地上に出てきた。
シコメ姫は、松明をもち、ぴんと腕を伸ばしてヤカミ妃の手をひき、くちかけた扉の前に連れていった。
そのとき、母娘らしくお互いの顔を確かめ合うように見つめていた。
シコメ姫は、ヤカミ妃と一緒に、いもむしのごとく身体を動かし、くちかけた扉に開けた穴から牢獄の通路に出てきた。
そこで、
「お母様。この先の出口で、牢獄にいる人間がでられへんよう、ハイドが四六時中見張ってまんねんわ。それ以外の方法を考えまひょよ。」
シコメ姫は、背中に長槍を背負いながら、真剣な顔つきで牢屋の出口の方向を指差し、ヤカミ妃に話をした。
その話は、ハイドの警戒が及ぶ出口以外で探せないかというものであった。
これを受け、ヤカミ妃は、頭を少し前に下げ、右手の指をあごにつかませた状態で、これから行なう脱出作戦について考えをめぐらせた。
そして、
「わてが天女になって、能力使うて天井に穴を開ける。ほんで、わてがシコメのこと背負ってその穴から地上に出るいうもんやけど、どうや?」
ヤカミ妃は、頭に閃光がついたかのような表情を見せ、自慢げに編み出した脱出作戦をシコメ姫に提案した。
「お母様。その作戦、ええね。うちも協力しまんねん。」
シコメ姫は、にこにことした娘らしい顔でヤカミ妃を見つめ、ヤカミ妃の提案を受け入れた。
これにより、ヤカミ妃・シコメ姫の二人による脱出作戦が本格的に決行された。
まず、
「宇宙に浮かぶ星、母なる大地を潤す水。そして煌きを与える火、八百万の神々や天女の守り神たちよ。我がすばる王朝の猛き天女に力を与えたまえ。」
ヤカミ妃は、代々すばる王朝に伝えられてきた『天つ乙女のまじない』というものを唱え、まばゆい紺地の色の光に包まれた。
彼女は、そのとき、剣などの鍛冶に取り組む職人のように真剣な表情でいた。
光につつまれた彼女は、その中でタキリと色違い、茶色い髪と紺色の目、うさぎの肌を思わせる色の肌、紺色の冠・飾りもの・羽衣・着衣、また国王や王妃にしかつけることがゆるされない身分を示す黄金色の腰帯を身につけていた。
また、右側にシコメ姫の身長よりも長いであろうぴかぴかと光るくろがねの剣をもち、それを持つ手に布を巻いていた。
このとき、ヤカミは、かつてすばるの防衛天女隊とよばれる特殊な国防集団において一番に強いといわれた鉄剣の能力を持つ天女に姿を変えた。
「お母様の天女の姿、めっちゃ可愛ええ。一瞬、目の前に神様が降り立ったかと思うてしもうたわ。」
シコメ姫は、一瞬意外そうな顔つきでヤカミ妃を見つめた後、ほめの言葉をかけた。
このとき、シコメ姫は、ヤカミ妃の天女としての姿を見て、そのうつくしさなどに自らあこがれを抱いた。
「シコメ、おおきに。」
ヤカミ妃は、やさしさあふれる目でシコメ姫を見つめ、うれしそうに言葉を返していた。
ヤカミ妃は、シコメ姫を五〇寸ほど離れた場所に移動させ、剣の先を地面につけ、二回ほど鼻に空気を吸い込んだ。
見る限りでは、彼女は脱出を前にして、呼吸を整えて気持ちを落ち着かせているようだった。
「いっくで!!」
ヤカミ妃は、天上に届かんばかりの気合が込められた叫び声とともに、剣を上方向にむけて力を込めた。
剣からは、紺青にかがやく光が発せられ、彼女はそれを円形に振り回した。
またたく間に、光は天井に達し、その真上にある石積みや土をちりやほこりに変えていった。
やがて、剣の紺青の光は収束し、天井には目測の直径で五尺ほどの穴が開いていて、その先には、非常に小さくぼんやりとはしているものの、地上に開いた出口を確認できた。
「シコメ、早よう行くで。」
ヤカミ妃は、慣れた手つきで剣を左腰の鞘にしまい、しゃがみ顔を後ろに向かせた上で、移動させていたシコメ姫に声をかけた。
「あぁ、お母様!? 待ってや。」
五〇寸ほど離れた所でボーッと立っていたシコメ姫は、声を掛けられるなり、あたふたした様子でヤカミ妃の元に急いだ。
シコメ姫は、しゃがんでいたヤカミ妃の元におもむき、両腕をその首にくぐらせ、脚を腰の部分に置き、お腹を背中につけた。
それは、さながら、赤ちゃんが母親におぶってもらうおんぶをおもわせた。
そして、ヤカミ妃は、シコメ姫を背中に負ぶり、ひらひらと風になびく羽衣を操り、身体を浮かせて開けた穴に入った。
ヤカミ妃は、シコメ姫をおんぶし、はやぶさどりのような速さで風をきりながら、穴の中を進んだ。
しばらくヤカミ妃たちが穴を進むなり、小さく見えていた地上の出口が次第に大きくなっていった。
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