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SS No.2 旅立ちし乙女
オオグラの池にて
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場所は変わり、宇宙に広がる無限のパラレルワールドの一つ。
そこには、人間のいる銀河系と対をなす世界、そして太陽系と同じ、かつ人間に瓜二つの知的生命体の存在する惑星が存在した。
惑星は、そこに住む知的生命の人間から、天つ神と八百万の神が住まうという意味の「アマツホシ」とよばれ、広くてターコイズブルーの宝石のような大海原、そしてアキツカミシマ・アキツノシマ・エヒメノシマ・ツクシノシマの四つの列島を中心として周辺に数多の群島が存在し、七つの国に分かれていた。
そのうちのひとつ、アキツシモジマの中部付近に、タキリの拉致および地球侵攻をたくらむヨモツ国があった。
ここの国の支配者は、ミタマとよばれる国王、そして館山にてタキリの目の前に姿を表した王妃のクイーンの二人であるが、これは表向きのもの。
実際には、その下に仕えるハイドが国王・王妃に代わり、ものごとなどを決める傀儡国家そのものである。
また、他国との同盟などの連携を嫌い、そのうえ、無理難題を突き付けるがゆえ、周辺国から経済的制裁を課され、つねに物資が不足していた。
そのため、積極的に戦争という喧嘩をふっかけ、技術やものを強奪する人の道からはずれたあくどい国家でもあった。
さて、まばゆいばかりの太陽がりんごあめのごとく赤くなって沈み、紺色の夜空にきらきらな星や銀河が現れる頃。
ヨモツ国の領内、本拠地・アラガミに近い、ウハリのオオグラ池。
池の水面に、ぐるぐると渦がまきはじめ、地球の春一番に相当する突風が渦中でふいた後、黒々とした穴があいた。
その中から王妃クイーン、彼女たちの下僕でヨモツ国の天女・ナミ、最後にハイドが二人ほど出てきた。
どうやら、この一同は、タキリ・トヨタマとの戦いを終え、館山の街から引き上げてきたようだった。
「ようやく、帰ってこられたわな。」
クイーンは、顔を左右九〇度動かして景色を確認し、身体を宙に浮かせ、ほっとむねを撫で下ろした様子でいた。
「クイーン様、そうですね。」
ナミは、同じく宙に身体をふわふわと浮かせ、クイーンに対して語りかけた。
彼女は、このとき、感情すらこめられていない棒読みな口調でクイーンに語っていた。
すると、
「クイーン様、これらの失敗は、われわれの至らぬことにより起きたことであります。罪を認めますので、どうかお許しいただけませんでしょうか?」
池のほとりに足をつけた二人のハイドが、土下座をしながらクイーンに言葉を掛けてきた。
ハイドたちは、顔が青くして身体をびくびくとさせ、いかにも処分を怖がっているように見えた。
それに対し、
「それ、うちの考えで判断でけへんことやさかい。改めて、ミタマやゲアシオらの目前で話し合い、処分を言い渡させてもらいますわ。」
クイーンは、気持ちのこもっていないさらりとした話し方でハイドらに答えていた。
下僕のナミと二人のハイドを引き連れたクイーンは、オオグラ池を発ち、本拠地のアラガミに向けてウハリ街道を北上した。
そこには、人間のいる銀河系と対をなす世界、そして太陽系と同じ、かつ人間に瓜二つの知的生命体の存在する惑星が存在した。
惑星は、そこに住む知的生命の人間から、天つ神と八百万の神が住まうという意味の「アマツホシ」とよばれ、広くてターコイズブルーの宝石のような大海原、そしてアキツカミシマ・アキツノシマ・エヒメノシマ・ツクシノシマの四つの列島を中心として周辺に数多の群島が存在し、七つの国に分かれていた。
そのうちのひとつ、アキツシモジマの中部付近に、タキリの拉致および地球侵攻をたくらむヨモツ国があった。
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また、他国との同盟などの連携を嫌い、そのうえ、無理難題を突き付けるがゆえ、周辺国から経済的制裁を課され、つねに物資が不足していた。
そのため、積極的に戦争という喧嘩をふっかけ、技術やものを強奪する人の道からはずれたあくどい国家でもあった。
さて、まばゆいばかりの太陽がりんごあめのごとく赤くなって沈み、紺色の夜空にきらきらな星や銀河が現れる頃。
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池の水面に、ぐるぐると渦がまきはじめ、地球の春一番に相当する突風が渦中でふいた後、黒々とした穴があいた。
その中から王妃クイーン、彼女たちの下僕でヨモツ国の天女・ナミ、最後にハイドが二人ほど出てきた。
どうやら、この一同は、タキリ・トヨタマとの戦いを終え、館山の街から引き上げてきたようだった。
「ようやく、帰ってこられたわな。」
クイーンは、顔を左右九〇度動かして景色を確認し、身体を宙に浮かせ、ほっとむねを撫で下ろした様子でいた。
「クイーン様、そうですね。」
ナミは、同じく宙に身体をふわふわと浮かせ、クイーンに対して語りかけた。
彼女は、このとき、感情すらこめられていない棒読みな口調でクイーンに語っていた。
すると、
「クイーン様、これらの失敗は、われわれの至らぬことにより起きたことであります。罪を認めますので、どうかお許しいただけませんでしょうか?」
池のほとりに足をつけた二人のハイドが、土下座をしながらクイーンに言葉を掛けてきた。
ハイドたちは、顔が青くして身体をびくびくとさせ、いかにも処分を怖がっているように見えた。
それに対し、
「それ、うちの考えで判断でけへんことやさかい。改めて、ミタマやゲアシオらの目前で話し合い、処分を言い渡させてもらいますわ。」
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