婚約者達は悪役ですか!?

夏目

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男の心中

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 人には領分というものがある。
 越えてはいけない領域。身分。階級。軽んじてはいけない人。
 それらを内包した一線が、必ずどこかに引かれている。
 それに気がつくものもいれば、気付かないものもいる。
 本能的なところで敏感に感じ取るものもいる一方で、不感症なのかその一線が感じ取れないものも一定数いた。
 サーシャや子爵はこの認識できない部類に属するとアベルは識別していた。
 鈍間で、侵してはならない不文律に触れる下愚。
 誰かの領域を侵食すると反発を食らう。人は元来業突く張りだ。一度手に入れた地位も名誉も手放そうとはしない。そのため身内が穢されれば、倍返しで陵辱する。
 それが分からない人間は同じ人間として扱う必要はない。
 だから、内々に手を回し、不幸に陥れた。
 サーシャも子爵も今でこそ、幸せ一色ですと言わんばかりの顔をしているが、それぞれ当時は自殺寸前だった。
 望まない結婚をしたサーシャ。
 家が没落した子爵。
 どちらも裏で糸を引いて、最も屈辱的なやり方で地獄の底へ突き落とした。アベル達が優しい仮面をかぶって援助すると言って手を貸さなければ首を吊って死んでいただろう。それぐらい崖っぷちに追い詰めた。
 人間の順応能力には眼を見張るものがある。不幸のどん底でも幸福を見出そうとするのだ。
 サーシャは幸福を夫に見出し、子爵は仕事と妻に見出した。

 ――駒は多い方がいいけれど、使えない駒は潰してしまうに限る。

 その点、サーシャは夫人として一定の役に立っているし、子爵も酒場の店主という利点がある。酔った客はぽろぽろと本音をこぼしやすくなる。下愚にしてはよく使える駒だ。
 このまま情報源となって役立ってくれるならばそれでよし、使えなくなれば今度こそ再起不能になるまで叩きのめせばいい。
 彼らのことでジュディに痛い腹を探られるのは不快だったが、表面上、カインとアベルが二人を陥れた証拠はどこにもない。むしろ、彼らの口からは善人のように語られるのだから滑稽だ。
 ジュディもまさか被害者が裏で糸を引いている人間に感謝しているとは夢にも思っていないようで、混乱してしまっている。
 このままならばマリアナの勘違いだったと全ての責任をなすりつけることが出来そうだ。
 怪我の功名じゃないが、ここまでうまくいくと単純に嬉しい。
 一番の功績はマリアナを中心とした一件で、どさくさに紛れてジュディの純潔を奪うことが出来たことだ。
 カドックを自分のせいで殺しかけた罪悪感は思った以上にジュディには堪えたようだ。ろくに抵抗らしい抵抗もみせなかった。
 甘くて、柔らかいジュディの体を思い出すとそれだけで気が昂ぶる。興奮しすぎて理性が飛んだが、それでもジュディは受け止めてくれた。甘い嬌声を上げる姿がたまらなかった。
 もっともっとジュディが欲しい。カインではなく、アベルを選んでくれるならば全財産も、命も捧げても惜しくはなかった。
 目下、カインを出しぬきジュディの好感度を上げるために作戦を練っている。取り敢えずはマリアナの排除が先決だが、その先のことも考えなければならない。
 双子とはいえジュディに関して、カインは敵だ。必ずジュディの隣にはアベルが座る。

「わっるい笑みですね。これぞ、貴族って感じっすね」
「うるさいなあ」

 目の前でティーカップに紅茶を注ぐカドックを睨みつける。
 ここはカドックの部屋だ。質素で、暇を潰せるものがほとんどない。寝起きするためにあると言わんばかりの無機質さ。この頃、よく通っているせいで部屋の家具の配置を完璧に覚えてしまった。テーブルの上にはチョコでコーテングされたパイの菓子が置いてある。王都一のパティシエが考案した新作で、口にいれるとさくっとした食感とともにチョコレートの甘みが味わえる。アベルが買ってきたものだ。
 菓子を持ち寄るのは好意ではなく癖だ。ジュディは甘い物が好物なので、機嫌取りに買ううちにはまってしまった。今では、菓子がなければ紅茶が飲めないほどの甘党になってしまっていた。

「アベル様って、ろくなこと考えてませんよね。どうせ、どうマリアナを料理してやろうと考えてるんでしょう?」
「当たり前。あのくそ女には制裁を下すに決まってるでしょう。俺達とジュディの関係にひびを入れかけた忌々しい奴なんだからね」
「はあ、お嬢もすげえ人に好かれたもんですよねえ」

 カドックの視線がアベルからカインに移る。カインはナイフの手入れをしていた。
 性格を分けるという選択をした時から、カインは武に秀でた人間に、アベルは知略に優れた人間になるように訓練を重ねてきた。愚鈍な他の人間達は極端であればあるほど人の見分けがつくらしい。性格や特徴を分けたのは、カインとアベルの違いに気付かない両親や他の貴族達のためだった。
 カインはナイフがお気に入りだ。素手よりナイフを好むのはそちらの方が、小回りのきくものだからだ。銃も持たせてはいるが、いざという時の瞬発性が違うともっぱらナイフを愛用しているようだった。

「さてと、それでジュディはロイドの元に向かったんだよね?」
「ええ、そりゃあ怪しい招待状でしたよ。封蝋がなかった。あんなのに引っかかるのはお人好しのお嬢だけです」

 そこがジュディの良さだ。偽善者のようにわざとらしいものではない、守ってやりたくなる純真さを持っている。

「だいたいさ、マリアナの件はカドック君が全面的に悪いよね。さっさと追い払えばよかったのに。ジュディのお友達にしちゃうんだから」
「言いがかりはよして下さいよ。マリアナの件はお二人が遠因でしょ」
「あれはあの女の逆恨みです。俺達は俺達の仕事をしたに過ぎない」
「海賊とクロイド領主が繋がっているって国王陛下に進言したせいなんですよね」
「あれはあっちが悪いってば」

 もともとクロイド領は港町として栄えていた。そこに付け込んだのがジャーファル商会だ。港の利権を金で買い取り、クロイド男爵が気付いた頃にはすでに港に停泊する船はジャーファル商会にマージンを払うことになっていた。
 港場は商船の出入りがあり儲かる。ジャーファル商会はやり手だ。商人は金の匂いに鼻がきく。
 面白くないのがもともとクロイド領を統治していたクロイド男爵だ。ジャーファル商会が勝手に関税をかけているようなものなのだから、たまらない。
 だが利権はジャーファル商会が持っている。このジャーファル商会は、商人は商人でもルクセンブルク公爵のお抱え商人で、容易に手を出せば、公爵に睨まれかねない。苦肉の策で考えたのが、海賊を使った積み荷の強奪だった。

「商人だけ相手にしていればいいものを、欲をかいて人身売買まで手を出したんだ。それ相応の報いを受けてしかるべきでしょ」

 積み荷の強奪だけならば国王も目を瞑った。海岸沿いの貴族達が海賊と手を組むのはよくある話で、別段珍しいことではない。戦時中ならば、海賊船に私掠免許を与え、敵国の船から掠奪させていた歴史まであるのだ。
 そもそも、海賊という言葉も正しくない。彼らは純粋な水夫で、金に困り略奪行為を犯すことがほとんどだ。身入りの少ない海軍がやむにやまれず海賊に身を落すこともある。
 彼らと手を組んだとしても、売り上げの何割かを王族に入れるならば目を瞑ってきた。
 だが、クロイド男爵は人身売買に手を出してしまった。人攫いに関して、法律を新しく施行したばかりだ。国民の力が強くなっている昨今、王族も国民の顔色を伺う。人身売買への対処が遅れたとがなり立てられたくない。
 そうでなくとも専制君主制は衰えを見せ始めている。ここ何代かは暗君ばかりで、現国王も賢王とは言い難い。権力に固執し、自分に阿る貴族ばかりを優遇している。

 ――いや、貴族ばかりではないか。カドックの一族のように金を持つ人間達が頭を垂れるのが好きで好きでたまらないんだよねえ、あの人。

「人権派のように言いますね。実際は損得勘定が絡んでしょう? じゃなきゃ、こんなに対応が遅いわけがない」
「クロイド男爵が手を結んだ海賊は他の海岸沿いの貴族とも契約を結んでいましたからね。手を切らせるまでに、時間がかかったんですよ。それなりの資金源だったようですので」
「うへえ。どこもかしこも金、金。嫌になってきますよ」
「俺だって嫌だよ。貴族の説得に時間がかかったせいで、マリアナとジュディの接触を許してしまったわけだしね」

 マリアナがジュディに近付いてきたのは、内偵が済んでしばらくしてからだった。間の抜けているクロイド男爵とは違い、娘のマリアナは自分達が危機的状況であることを察知していた。だが、実際どれぐらい追い詰められているのか詳しい情報は手に入れていなかったようだ。だから、ジュディを通して情報を得ようと近づいてきたのだろう。
 けれど、カインとアベルはジュディに王の密偵をやっている話は一切していなかった。情報が洩れるのを恐れたわけではなく、ジュディには聞かせたくなかったのだ。
 結果、マリアナはなかなか喋ろうとしないジュディに焦れて、ジュディはそんな思惑があると知らずに友達だとのほほんと接していた。

「俺にも事情が分かっていれば、お嬢がルクセンブルク公爵との関係があると打ち明けるのを阻止できたんですが……」
「ルクセンブルク・ローズマリア領のことを知らない人間がいたなんて思わなかったんだよ。案外、地方領主のことを知らないものなんだね」
「知っていたら、そもそもお嬢に接触してこないでしょ。ジャーファル商会のパトロンであるルクセンブルク公爵はどう考えても国王側じゃないっすか」
「中途半端に賢いと厄介ですよね」

 情報を出し渋っている思ったジュディにマリアナは様々な揺さぶりをかけた。その一つが、双子が悪党であるという噂を吹き込むことだった。
 正直、暗躍はしていたので、的を射ているだけになかなか見どころがあると感心してしまった。娘の方は助けて、駒にしてやるかと思ったのだが、ジュディが過剰反応してしまい、双子と交流を絶ってしまった。これにはマリアナも困っただろう。情報を得たかったのに、これではろくな情報が入ってこなくなってしまうからだ。だが、悪党だと言った手前、今更言葉をひっこめるわけにもいかなかった。
 だから、オペラ観劇に誘った。そうすれば、交流関係の狭いジュディだ。パートナーがいなくていやいやでも双子のどちらかを頼ると考えたのだろう。だが、ジュディは意固地になってカドックを連れてきてしまった。しかもその場で、ルクセンブルク公爵との関係を話してしまった。
 その結果が、あの馬車突撃だ。

「あの馬車事故、普通に死ぬかと思いましたよ」
「杜撰な計画だったから、事故処理上手くなかったけどね。すぐに、マリアナの手回しだってばれちゃったし」
「できればカドックだけ死んでいて欲しかったのですが……」
「おーい、カイン様。本音がこぼれちゃってますよ」
「これは失敬。つい」

 カドックは事故からすぐに意識を取り戻していた。だが、カインとアベルにマリアナの素性を聞き、意識が戻っていないフリをして寝こけることになった。マリアナはジュディに嵌められたと思い込んだのだろう。だから、馬車で無謀な事故を起こした。また外に出るようになれば狙われる可能性が高い。ジュディを屋敷のなかにとどまらせておくにはカドックの意識不明は丁度いい理由だった。
 その間、カドックは夜中に忍び込んでくるアベル達から捜査情報を聞きながら、時が過ぎるのを待った。

「……カドック君、演技下手だよね。マークが治療のふりをした時、すぐ起き上がってくるんだもん。疑わしいに決まってる」
「あんたらがお嬢を無理矢理抱くからじゃないですか。まじびびりましたよ。……まあ、お嬢は疑ってないし、いいじゃないっすか」

 つくづくジュディに甘い。アベルも人のことを言えないが、甘やかし過ぎではないだろうか。ジュディの友達がいない理由の一端はカドックにあるはずだ。屋敷に話が合い、自分を一番に考えてくれる人間がいたら、外でわざわざ友人を作ろうという気はなくなってしまう。
 そんなことをしなくても、カドックが側にいて、いつでも遊んでくれるのだ。
 そういう意味ではカインの言う通り、カドックには死んでいて欲しかった。そうすれば、ジュディの拠り所は双子だけになる。

「おかげでなにもしていないマークの株が上がってますよ。天才医師だって思い込んでいるんですから」
「悪評じゃないだけましでしょう?」

 カドックが意識を取り戻したことになってからも、定期的に三人は集まっていた。情報交換をするためだ。
 ロイドーー婚約者を毒殺しようとしている話はクロイド男爵に仕えている使用人の一人を買収して情報を得ていた。オペラハウスでジュディに話した時は証拠が揃っていなかったが、マークがロイドの屋敷を訪問し、毒を手に入れている。これでいざとなってもジュディを証拠で説得できる。

「そんなことより、お嬢を一人で行かせて良かったんですか。狙われる可能性が高いんじゃ……」
「ロイドの家にはマークがいるから下手なことは起きないでしょ。失敗したのに、また馬車で突っ込んでくるのはないだろうし」
「マークがロイドの紅茶に毒が仕込まれていると報告してきました。マリアナが譲った紅茶らしいですよ。おおかたジュディを呼びつけて毒殺をしたのはジュディだと疑わせたかったのでは?」
「……そんな雑な仕掛けを? なんか引っかかるんですけど」
「クロイド男爵は今日夜会を執り行っている。一応何か動きがあったら報告するように言ってるよ。ロイドの家には何人か護衛を紛れさせているし、ジュディが変な気を起こさない限り無事に帰ってくるって」
「それならいいですけど」

 納得できないと顔に書かれている。
 だが、ジュディの行動を制限するわけにはいかない。いつもならば双子のどちらかが無理やりにでも同行したのだが、招待されてから返信までが早すぎて同行する暇もなかった。ジュディに不信感を与えるわけにもいかない。しかもカドックは今夜双子と情報交換する約束になっていた。

 ――そんなに心配ならばジュディに同行すればよかったのに。

 それでも、カドックは約束を守ってジュディに同行しなかった。このカドックという男は、アベルにとって不可解な人間だった。カインはこの自堕落な男をただの邪魔ものとして見ているようだが、アベルにはもっと変異な農民に見えていた。
 そう、彼はいくら爵位を持っていても、アベル達にとっては使役する農民だ。根っこの部分で使役されることに満足感を抱いている。上に立ち、なにかを動かしたい欲求はないようだ。
 身分違いにジュディに恋情を抱いているような馬鹿でもない。だが、執着はしている。
 ジュディにどんな感情を抱いているのかは知らないが、どこか薄暗い感情が潜んでいるのは分かる。
 深く立ち入ることはしない。どうせ、ジュディは双子のどちらと結婚する。その時、彼をついてくることは許さない。

 ――その薄気味の悪いへらへらした顔を歪ませたい気持ちはあるけど。

 今は協定を結んでいる。叩きのめすにしてもあとになるだろう。その時はどんな責め苦を味合わせてやろうか。
 カインが意味ありげに目配せしてきた。カインとは心のどこかで繋がっているのではと思うほど、通じ合うことができる。カインも同じようにカドックをどう料理してやろうと思っていたに違いない。二人の間に思考の差異はあるものの、結論はほとんど同じだ。

「ん。外が騒がしいですね」

 手入れしていたナイフを片付けて、カインが扉の外を覗き込む。すると急いだ様子の侍女が入ってきた。

「ロイド様の使者と名乗る方がお越しです」
「旦那様も奥様も夜会に行ってなかったすか。……しかたないか、俺が会いますよ。お通しして」
「呼んでまいります」

 片眉を上げる。まるでこの屋敷の主のような振る舞いだ。とはいえ、しかたがない。ジュディの父親とともに執事も出かけているようで、使用人達のなかで一番地位が高い男性がカドックなのだ。
 しばらくして、ロイドの使者がカドックの部屋を訪れた。突然小雨が降ってきたのか、服の端がじっとりと濡れている。

「突然の訪問申し訳ない。ロイド様がお倒れになられたのは知っておられますか」
「ロイドが? どうして?」
「こ、これは、ノーグシャーク伯爵の……」

 急ぎ過ぎて目に入っていなかったのか、今更格式ばった礼をしようとした使者を止めて、続きを促す。早口で語られたことは寝耳に水だった。ロイドに媚薬。想定外のことだった。
 ぎちぎちと歯を噛みしめる。マリアナに勘付かれていたのか。

「なるほど、お嬢を呼んだのは襲わせるためですか。もうなりふり構わずってことですね」
「……マークの出入りを見られてたってことだね。してやられた」

 マークの出入りを見て毒では始末しきれないと察したのだ。だから無理やり婚約を破棄する方法を考えたのだろう。強引な手に焦っているのが伺えた。マリアナは追い詰められている。

 ――いや、待て。本当にそうか? 

 マリアナは勘がいい女だが、違和感が拭えない。
 マークの出入りだけで毒殺がうまくいかないと予想出来るだろうか。
 カインはマリアナを殺したがっているらしい。殺気が駄々洩れだ。マリアナのことは不快だ。今から拷問にかけて殺してやりたい。だが、それよりも考えなくてはならないことがある。肝心のジュディはどこにいる?

「ジュディはロイドの屋敷にいるの?」
「まさか。もうお帰りになっているものと思ったのですが」
「……嫌な予感しかしないんですが」
「申し訳ありません! 今、ビジャス公爵の使者という方が来られて、いますぐ話したいことがあると言っておれるのですが」

 その声に被せるように、その使者が走りこんできた。

「ここにノーグシャーク公爵のご子息はおられますか?! 至急、お越しください。婚約者であるジュディ様が誘拐されました!」
「どこで」
「クロイド男爵の屋敷で行方不明に。ご息女であるマリアナ様の姿もないようです」
「お嬢は馬鹿なのか!? 危機感ってものが備わってないのか! 小鳥の刷り込みか!?」

 怒号を上げ、かドックが地団駄を踏んだ。
 席を立ちあがり、カインとともに屋敷を出て、外に留めてある馬車に乗り込む。
 後ろからついてきたカドックの前で馬車の扉をしめる。がんがんと壊れそうな力で叩いて来た。

「この馬車二人乗りだからさ」
「こんな時に嘘つきます!? どんな神経してるんですか?!」

 無視して馭者に合図を送る。鞭が入れられ、馬が走り出す。怒鳴り声を上げたカドックがあとから来た馬車に乗り込んで追い掛けてくる。

「クロイドの屋敷じゃないですね」
「王都の貧民窟の宿屋を買い取ってたでしょ。たぶん、そこにいる」
「ジュディを攫ってなにをするつもりでしょうか」
「さあ。なにをするつもりでも食い止めて、地獄をみせてやるだけ」
「そうですね」

 どれだけスピードを出させても、焦燥感が収まらない。
 早く着けと、歯を食いしばりながら祈る。
 領分を侵されている。アベルにとって神聖なジュディが穢されている。頭がどうにかなってしまいそうだ。何度も何度も、マリアナの顔を滅多刺しにする妄想が思い浮かぶ。
 ジュディに傷一つでもつけていたら、殺してやる。
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